バッティングにもピッチングにも。「三関節直列」と「トリプルエクステンション」について自分が考えたこと その7

広告




目次

バッティングにもピッチングにも。「三関節直列」と「トリプルエクステンション」について自分が考えたこと その7

「ピッチング・バッティングにおける重心と地面反力との関係」を踏まえた上で、「地面反力を使うためには、三関節直列とトリプルエクステンションが効率的」と理解しよう!

ピッチングもバッティングも、「並進運動→回転運動」である

簡単に、前回までのまとめをしておきます。

 

ピッチングとバッティングの共通項は

<並進運動を回転運動に転換する>

という点にあります。

そして、相違点は

<地面反力と身体重心との間の距離>

だ…と私は述べてきました。

 

(並進運動とは「物体が行う運動のうち、それを構成するすべての点が同一の速度で移動する運動」です。

回転運動とは「大きさを持たない点または大きさを持つ物体が、ある点を中心としてあるいは直線を軸として、あるいは別の物体の周りを回る運動」です。

そして、地面反力とは簡単に言うと「地面に100の力を加えたときに、作用反作用の法則に従って地面からはね返ってくる、100の力のこと」です。そして、「力」とは「重さ(質量)のある物体の速度を変化させる作用のこと(正確には加速度を変化させる)」です)

 

(http://www.tennis99.jp/99/archives/3363より)

 

この写真でいえば、上の段の右端までは「並進運動」です。

踏み込み足が接地した下段左端から下段右端までは、「回転運動」です。

バッティングも同様で、この写真だと右から5枚目までが並進運動で、

踏み込み足の踵が接地した左から4枚目以降が回転運動です。

 

並進運動は「助走」である、とも言うことができます。

身体重心に水平方向の速度を付けておくことによって運動エネルギー(=質量&速度を持った物体が持っているエネルギーのこと)を蓄えておき、そのエネルギーを回転運動のために使用・流用するわけです。助走がなければ回転運動は起こしづらくなりますよね?

 

ピッチングもバッティングも、基本は「並進運動→回転運動」なのです。

 

 

「並進運動→回転運動」のためには、「身体重心からある程度離れたところに地面反力をぶつけてやること」が必要だ

さて、並進運動してきた身体重心を回転運動へと転換させるにはどうしたらよいでしょうか?

 

答えは単純で、「踏み込み足から伝わってくる地面反力を、身体重心から適度に離れたところに作用させてやればよい」のです。

 

というのも、物理の法則で

「ある物体の重心から離れたところに力を作用させると、その物体は回転運動を始める」

ということが決まっているからです。

 

下の画像で、赤い丸がボールの重心です。

①のように力を加えるとボールは回転しません。

しかし、②のように力を加えると、ボールは回転を始めます。

これと同じです。

ピッチングでもバッティングでも、「身体重心から適度に離れたところに力を作用させるから、回転運動が起こる」のです。重心にそのまま力を当てると、回転運動ではなく並進運動が起こります。

 

ここで確認です。

ちょっと試してみるとわかりますが、「踏み込み足を接地させないで速球を投げる・ホームランを打つ」のは「無理」です。

なぜなら、「踏み込み足から伝わってくる地面反力を、身体重心から適度に離れたところに作用させ」ない限り、「並進運動から回転運動への転換」はできないからです(身体重心とは、身体全体の姿勢によってどこか一点に定まる仮想の質点のこと。身体が運動するときの中心である)。回転運動が起こせなければ、スイングもピッチングもまともにできません。

 

以下の図と動画を見てもらえばわかると思いますが、

「地面を100の力で押したときに地面から反ってくる力=緑色の矢印」が、

「並進運動してきた身体重心=赤い丸に対してある一定の距離をとって作用する」

ことによって、並進運動から回転運動への転換が起こるわけです。

 

なお、直接的には「地面からの反力を受けるのは、骨盤である」と表現することもできます。

誤解を招きそうなので一応断っておくと、地面からの反力は、「重心に対して作用する」のではなく、「骨盤という物体」を回転させる作用を持ちます。

 

 

 

補足:「身体重心」も「地面反力」も、本当は実在しない!?

なお、もしかすると

「ちょっと待って! 身体重心って実在しない点なのに、なんであるものとして扱っているの?」

と思われるかもしれませんが、それは言葉のあやです。

 

そもそも「重心」のみならず「力」や「加速度」「速度」「質量」といった概念は、みな<実在>はしません。

ここでいう実在しないとは、「想定はできるけど、手触りもないし目にも見えない」という意味です。これらは、われわれの五感で感知できる物理世界よりも一つ上のレベルにある、抽象化された概念なのです。

しかし、手触りがない・目に見えないからといって存在しないとは言えませんよね?

 

なぜなら、我々人間は、物理空間にない=五感を使って感じることのできないものの存在を想定することができるからです。「数学の公式」「国家」「心」「野球」「電波」「超音波」「概念」など。

「重心」や「力」もその仲間で、「物理的に実在しないからといって、存在しないとは言えない」ものです。

 

たとえば、野球のボールを両手で挟んで互い違いの方向に手を動かすと、ボールは回転しますね? これは「物体の重心から離れたところに力を加えると、物体は回転運動を始める」という物理の法則に従った結果です。きちんとその法則通りになっています。

また、その野球のボールを片手の手のひらでまっすぐ押し込むと、ボールは回転せず、並進運動を始めますよね? これは「物体の重心に対してまっすぐ力を加えると、物体は並進運動を始める」という物理の法則に従った結果です。

あるいは、「質量のある物体の加速度が変化した」とき、そこには何らかの「力」が働いたと言えます。秒速0mで静止していたものが秒速5mで動き出した・秒速10メートルだったものが秒速20メートルになった、とか。これもやはり、物理の法則通りです。

 

こういうわけで、「実在しないからといって、存在しないとは言えない」ものの中のうちには、「身体重心」という言葉も含まれているよ、と言えるわけです。ちなみに、なぜ「存在する」と言えるかというと、「ある現象を整合的に説明するのに役立つ」からです。つまり、「とりあえず正しいのだろう」といったん仮定することができます。

身体重心も、「いろいろな物理現象を説明するのに役立つ」ので、いちおう存在しているとみなすことができます。逆にいえば、「身体重心は実在もしないし、存在もしない!」と主張したい場合は、「身体重心という考え方が仮定として破綻している根拠」をきちんと付ける必要があります。たとえば、身体重心という考え方を採用すると致命的な矛盾が生じる…とか。

要するに、「身体重心」とは、ある物理現象(ピッチング・バッティング)を整合的に説明するための仮定(仮説)である、というわけです。とりあえず現時点の私は、「身体重心」という概念を用いることでバッティングやピッチングを整合性のある形で説明できると思っています。もしも身体重心という概念が間違っている場合は、また他のor新しい概念を利用するだけです。

 

とりあえず、この記事内においては

「身体重心という概念は正しい」

という前提を呑んでいただけると幸いです。

 

★なお、「作用」という言葉が出てきましたが、「力を作用させる」といった言い回しで使います。

「力を物体に当てる」とか「物体に対して力が効果を発揮する」といったニュアンスです。

「作用させる」という言葉そのものはぼんやりしているので、実際の文脈のなかで使っていって慣れるのがよいと思います。

 

身体重心に対して地面反力をうまくぶつけてやるためには、「三関節直列とトリプルエクステンションのコンボ」が必要だ

というわけで、長くなりましたが、論理としては以下のようになります。

・ピッチングもバッティングも「並進運動→回転運動」である

・並進運動を回転運動に転換するには、「踏み込み足からの地面反力を、身体重心から適正な距離のところに作用させてやること」が必要だ。というのも、「ある物体の重心以外の部分に力を作用させると、物体は回転運動を始める」からである

・ということは、使える「地面反力」は大きければ大きいほど良い。力が大きければ大きいほど物体は急加速するのだから、地面反力が大きければ大きいほど身体の回転スピードも上がる=スイングスピードや球速も上がる

というわけで、結局は

「地面反力をたくさんもらう」

ために、三関節直列+トリプルエクステンションが必須である、と言いたいわけです。

 

 

 

ピッチングと「三関節直列+トリプルエクステンション」の関係

ピッチングのどのフェーズで「三関節直列+トリプルエクステンション」が出るか?

ピッチングの流れ

1.まず足を上げて、身体重心の位置を引き上げる。これによって並進運動のための位置エネルギー(=高いところにあるものが持つエネルギー)を確保する

2.身体重心を高いところから低いところに徐々に下ろしながら、身体重心の捕手方向(水平方向)への速度を上げていく(位置エネルギーを運動エネルギーに変換する)

3.水平方向への高い速度を持つ身体重心を、「踏み込み足からの地面反力によるブロッキング」によって急停止させる

4.「身体重心が急停止」することによって、電車の中にいる人が急ブレーキで前方へと倒れるように、「上半身と腕が急加速」する(慣性の法則と末端加速の原理)

5.腕が振られる

 

「踏み込み足のブロッキングによる上半身と腕の加速」は、以下の動画を見てもらえればわかると思います。

 

さて、ピッチングでは「三関節直列・トリプルエクステンション」は一体どこで出てくるでしょうか?

答えは、この2つのフェーズです。

2.身体重心を高いところから低いところに徐々に下ろしながら、身体重心の捕手方向(水平方向)への速度を上げていく(位置エネルギーを運動エネルギーに変換する)

3.水平方向への高い速度を持つ身体重心を、「踏み込み足からの地面反力によるブロッキング」によって急停止させる

 

具体的に言うと、

2.では「軸足の三関節直列+トリプルエクステンション」が現れます。

3.では「踏み込み足の三関節直列+トリプルエクステンション」が現れます。

 

それぞれについて見ていきましょう。

 

ピッチングの「軸足」は、「三関節直列+トリプルエクステンション」をどのように行うか?

ピッチングにおいて、軸足はどのように動くか?

私は基本的に以下のように考えています。

ピッチングにおいて、軸足は「三関節直列+トリプルエクステンション」をこう行う

1.軸足は、足を挙げた時から三関節直列状態をキープしながら、身体重心を高所から低所へと引き下ろしつつ捕手方向へと運んでいく(並進運動)。なお、三関節直列状態をキープしながら重心をスムーズに下ろすには、軸足以外の身体のパーツをうまく制御することも必要(左手の使い方とか右手の位置とか)。軸足以外のパーツをうまく配置してやることによって初めて、「軸足の三関節直列+トリプルエクステンション」が可能になる。

2.並進運動の後期あたりに、「三関節直列+トリプルエクステンション」によって地面反力を獲得する。その地面反力を使って、身体重心に「捕手方向への加速度」を更につける。なお、このときに軸足は「股関節伸展+膝関節伸展+足関節伸展」の力を発揮する。つまりトリプルエクステンションのフルコンボを起こす。ただしそのタイミングには個人差があり、並進運動の中期くらいに起こして早々に軸足を内旋させる人・並進運動の後期になってようやく起こす人などに分かれる。

3.三関節直列状態でトリプルエクステンションを行った軸足は、最終的に内旋しながらプレートを離れる

 

↓の動画で確認すれば、軸足の使われ方の大枠がわかるはずです。

 

要するに、ピッチングの軸足が三関節直列+トリプルエクステンションを起こす理由は

「身体重心に、水平方向への加速度を付けるため」

です。その役割を終えた軸足は内旋していきます。

「トリプルエクステンションの結果、身体重心が水平方向へと加速される」ということ自体はどの投手にも当てはまっています。

 

ピッチングの「踏み込み足」は、「三関節直列+トリプルエクステンション」をどのように行うか?

前項では「軸足と、三関節直列+トリプルエクステンション」について見ました。

では、「踏み込み足と、三関節直列+トリプルエクステンション」はどうなるでしょうか?

 

踏み込み足と、「三関節直列+トリプルエクステンション」

(前提):軸足の三関節直列+トリプルエクステンションによって、身体重心にはすでに「水平方向への速度」がついている。そして、ピッチングの基本原理は「水平方向への速度がついている身体を、踏み込み足のブロッキングによって急停止させる→慣性の法則+末端加速の原理に従って、上半身と腕が急加速しつつ回転運動を起こす」である。

つまり、踏み込み足の役目は「地面反力を思いっきりもらって身体重心の運動を急停止させること」である。地面反力をもらうなら、「三関節直列+トリプルエクステンション」がおあつらえ向き

 

1:踏み込み足は、「三関節直列状態」になるように着地を迎える。なお、右投手は三関節直列の向きが「つま先がやや開き気味」になることが多く、逆に右投手は三関節直列の向きが「つま先がやや閉じ気味」になることが多い。

2:踏み込み足の「トリプルエクステンション」はやや変則的である。メインとなるのは「膝関節伸展」で、踏み込み足の「股関節」は、伸展の力も発揮はするが、骨盤の回転運動を制御するために内旋・内転の力も発揮する(踏み込み足の接地直後は外旋位だが、骨盤を立ち上げるとともに内旋位へと切り替わっていく)。足関節は普通に伸展力を発揮する。

 

…というわけで、ピッチングと「三関節直列+トリプルエクステンション」との関係は、以上のように説明できます。

要約すると、軸足の「三関節直列+トリプルエクステンション」で身体重心に水平方向への速度を付け、

それを踏み込み足でブロッキングすると、上半身(腰から上)+腕が「慣性の法則+末端加速の原理」によって急加速するわけです。もちろん、先の記事でも触れた通り、「身体重心がたどる軌跡」も重要になってきます。

 

こうやって分析してみると、意外と単純ですね。

 

バッティングと「三関節直列+トリプルエクステンション」の関係

バッティングのどのフェーズで「三関節直列+トリプルエクステンション」が出るか?

ピッチングのときと同様、バッティングの流れを整理しておきましょう。

 

バッティングの流れ

1.まず前足を上げて、身体重心の位置を引き上げる。自動的に軸足に荷重される。これによって並進運動のための位置エネルギー(=高いところにあるものが持つエネルギー)を確保する

2.身体重心を高いところから低いところに徐々に下ろしながら、身体重心の投手方向(水平方向)への移動速度を上げる(位置エネルギーを運動エネルギーに変換する、運動量を確保する)

3.前足が接地する。「前足からの地面反力が身体重心から適度に離れたところ(踏み込み足側の骨盤)に作用する」ことによって、並進運動が回転運動へと切り替わる。また、「軸足が内旋される」ことによっても骨盤は回転する。内旋された軸足は、回転運動の妨げにならないようにコンパクトに折りたたまれる。

4.基本的には、回転運動がうまい打者ほどヘッドスピードも速く、打球速度も速く、打球飛距離も速くなる

 

この中で、「三関節直列+トリプルエクステンション」が出てくるのは

2.身体重心を高いところから低いところに徐々に下ろしながら、身体重心の投手方向(水平方向)への移動速度を上げる(位置エネルギーを運動エネルギーに変換する、運動量を確保する)

3.前足が接地する。「前足からの地面反力が身体重心から適度に離れたところ(踏み込み足側の骨盤)に作用する」ことによって、並進運動が回転運動へと切り替わる。また、「軸足が内旋される」ことによっても骨盤は回転する。内旋された軸足は、回転運動の妨げにならないようにコンパクトに折りたたまれる。

この2.3.の2か所です。

それぞれについて触れると、2.は「軸足の三関節直列+トリプルエクステンション」、3.は「前足の三関節直列+トリプルエクステンション」となっています。

 

基本的にはピッチングと同様ですね。

では、2.と3.についてそれぞれ説明していきます。

 

バッティングの「軸足」は、「三関節直列+トリプルエクステンション」をどのように行うか?

ピッチングとバッティングの違い…並進運動の重要性

本題に入る前に、

「バッティングとピッチングとでは、並進運動の重要度が違う」

ということを押さえておいてもらいたいと思います。

 

バッティングでは、実は並進運動の重要度はピッチングほど高くありません。

バッティングにとっての並進運動は、もちろん重要ではありますが、重要度が低いのです。どちらかといえば並進運動よりも回転運動のほうが大事です。

打者は「バット」という道具を持っていますので、並進運動を投手ほどしなくても、バットをうまく使ってやればそれだけで打ててしまいます。

 

逆に、ピッチングでは「並進運動が命」くらいに表現しても良いと思います。

ピッチングでは、「並進運動を急激にブロッキングする」からこそ、「腰椎から上のパーツが慣性の法則+末端加速の原理によって急加速する」わけです。

ですからそもそも、あまりにも並進運動の速度が遅い投手(速ければそれで良いというものでもありませんが…)は速い球を投げることは不可能です。投手はバットという道具を持っておらず、そのうえで自分の身体(指先)をフルに加速させなければならないのですから、どうしても自分の腰より下で速度を稼いでおく必要があります。

 

この「並進運動の重要度の違い」を簡単に表現すると、

「バッティングではノーステップ打法でホームランが打てるが、ピッチングではノーステップ投法で140km/hを投げることはまず不可能である」

ということです。この場合のノーステップとは、「踏み込み足を地面に付けたまま」ということです。打者のようなノーステップで140km/h以上を投げられるとしたら相当なフィジカルの持ち主だと思いますが、それでも身体には激烈な負担がかかるはずです。

 

 

こういうわけで、バッティングではピッチングほど並進運動の速度は必要ではありません。

しかし、たいていのバッターはきちんと足を上げてからステップし、それから打ちます。ノーステップ打法を採用している打者はごく少数です。

 

それは、並進運動には

「回転運動のための助走」

という意味があるからです。足を上げてステップをする(並進運動の距離をある程度とる)ほうが、その場でノーステップで打つよりも回転運動がはるかにやりやすいのです。

 

簡単に言うと、

「ノーステップ打法=立ち幅跳び」

「普通にステップする打ち方=走り幅跳び」

と表現できます。立ち幅跳びと走り幅跳びとの最大の違いは「助走があるかないか」です。

立ち幅跳びの世界記録は記事執筆時点で3m73cm、走り幅跳びは8.95m。

助走があるかないかで5mもの差が付くわけです。

 

バッティングも基本的には同じです。

並進運動によって助走を付けたほうが、そのまま回転運動に持っていきやすいのです(ついでいうとピッチングも同じで、助走を付けて投げるとだいたい10-15km/hくらい球が速くなります)。

 

もちろん、助走をつけるということは「ボールに向かって自分から近づいていく」ということでもあります。

ボールに向かって自分から近づいていくわけですから、その分だけ目切りも速くなりますし、ポイントも投手寄りになりますし、顔が動かない場合に比べて目線のブレが大きくなり、どちらにしてもミスショット率や選球眼をマイナス方向へと引き下げます。原理的には必ずそうなります。「バリーボンズ選手やジョーイ・ボットー選手などのスイング」と、「イチロー選手や柳田選手などのスイング」を比べてもらうとわかりやすいでしょう。

 

なお、この「重心は前に出さないが、体重移動はきっちりする」「その場でクルリと回転するように打つ」「フィジカルを鍛えぬいて、少ない助走でも打てるようにする」というのは、近年のメジャーリーガーの打ち方を見ていると傾向としてかなり顕著に出ています。MLBの中継を見ているとわかりますが、最近は右打者・左打者はそれぞれかなり型にはまった?打ち方をするようになっています。個性がないわけではないのですが、基本的にはみんな同じ、シンプルな打ち方をしています。

 

話が逸れましたが、

「バッティングはそれほど並進運動が重要じゃないよ(重要だけど)」

ということです。

 

バッティングの「軸足」は、「三関節直列+トリプルエクステンション」をどのように行うか?

さて、本題に戻ります。

 

バッティングにおいて軸足が担う役割は主に以下の二つです。

1.「並進運動(助走)を行うこと」

…軸足を屈曲→伸展させることで可能になる

と、

2.「軸足の伸展が終わる辺りから、軸足股関節を鋭く内旋して、骨盤の回転運動を開始すること」

…前足接地直前から軸足股関節が内旋し始める(内転筋が主役)ことによって、骨盤が自動回転を始める。股関節を内旋した方向に骨盤は回転する。骨盤が回転することによって運動エネルギーが生じるので、軸足の股関節内旋が不十分な場合よりもスイング全体として多くの運動エネルギーが得られる=スイングが速くなる・打球が飛ぶ

です。

 

 

2.については、私がいつも参考にさせていただいているMITSUさん(@m42jp)のツイートを参考にすれば理解できると思います。軸足股関節をぎゅっと内旋させると、骨盤が回転します。この内旋は深く、鋭いことが望ましいと言えます。

実際、NPBで三冠王を二度獲得されている落合博満氏も「良いバッターは、スイングしているうちに内転筋がヘトヘトになる」とおっしゃっていました。また、身長167cmと小柄&高校通算本塁打0本という経歴からNPB歴代三位の本塁打を放った門田博光氏もスポーツ番組のなかで「軸足の内転筋をきっちり使うことが大切だ」と言っておられました。

 

そして、この「軸足の2つの役割」と「三関節直列+トリプルエクステンション」との関係はどんな感じなのか?

以下のように表現できます。

 

★軸足の「三関節直列+トリプルエクステンション」の意味★

「軸足の三関節直列+トリプルエクステンション」は1.の主役であり、2.の脇役でもあります。

1.について言うと、「軸足の三関節直列+トリプルエクステンション」は、そのまま「軸足の伸展」です。これはもう、言葉通りです。

 

2.について言うと、「軸足の三関節直列+トリプルエクステンション」がしっかりと行われることによって、軸足は「内旋しやすい状態」になります。

→というのも、「投手方向へと並進運動をしながら軸足の三関節直列+トリプルエクステンションを行うと、軸足の内転筋が引き伸ばされて、伸張反射(筋肉が外からの力によって引き伸ばされると、反射的に勢いよく縮もうとする性質)を起こしやすい状態になる」からです。せっかく軸足股関節を内旋させるのであれば、軸足内転筋の伸張反射の力も借りたいところですよね。

 

★わりと重大な補足:「軸足に体重を乗せて運ぶタイプ」は、「トリプルエクステンション」がほとんど無くても打てる場合がある

実はバッティングにおける「トリプルエクステンション」は、「場合によっては必須ではない」というものです。これから簡単に理由を説明します。

 

まず、MLBの打者に多い

「足を上げると同時に、軸足で地面をグッ!と押すタイプの打者」

には、トリプルエクステンションは必須です。地面をグッ!と押すわけですから、三関節直列状態が用意してあり、そこから爆発的に地面を押す(トリプルエクステンション)必要があります。

 

それに対して、日本の(昔の)打者に多い

「ゆったりと足を上げて軸足に体重を乗せて、ゆっくりと身体を運んでいくタイプの打者」

「地面をグッ!と瞬間的に押さず、ゆっくりと並進運動をしていくタイプの打者」

には、「トリプルエクステンション」が出ていない場合があります。たいていの場合は出ているのですが、まれにそういうタイプの打者がいます。

 

なぜ「トリプルエクステンションがほとんど出ない打者がいる」のかというと、先述した通りバッティングでは「並進運動の重要性」が比較的低いからです。

ピッチングの場合は、どんなタイプの投手であれ必ず、並進運動時に「軸足のトリプルエクステンション」が起きています。そうしないと身体重心を捕手方向へと押し出す(加速する)ことができないからです。

 

しかしバッティングの場合は、「さほど並進運動を熱心にやらなくても打ててしまう」という事情があります。

ピッチングのように、軸足のトリプルエクステンションによって身体重心をグッと押し出す必要性が薄い。

だから、軸足に体重を乗せて運んでいくだけでトリプルエクステンションは使わず、そこから軸足の内旋と踏み込み足の地面反力だけで回転して打ってしまうことも可能なのです。

昔の選手はけっこう「軸足に体重を乗せて運んでいくだけ」の打ち方をしていましたが、現在ではあまりこういう打ち方は見かけません。いるにはいますが、全体の中で見ると少数です。前さばきになったり、スイングにかける時間が長くなったりするといったデメリットがあるからです。将来的には、こういう打ち方(軸足のトリプルエクステンション)を使わない打者はどんどん減っていくことでしょう。

 

軸足の「三関節直列+トリプルエクステンション」はどのように行われるか? まとめ

・軸足の「三関節直列+トリプルエクステンション」によって並進運動(助走)を行う。股関節も膝関節も足関節も伸展力を発揮する。

・軸足股関節を内旋させることによってスイングのトリガーが引かれる。三関節直列+トリプルエクステンションをしっかりやっておくと、股関節内旋につなげやすい

・軸足のトリプルエクステンションをほぼ使わない打者もいるにはいるが、不利益が多いので将来的には消滅していくはず

 

バッティングの「踏み込み足」は、「三関節直列+トリプルエクステンション」をどのように行うか?

さて、次は「踏み込み足と、三関節直列+トリプルエクステンションとの関係」についてです。

 

バッティングにおいて、踏み込み足の役割というのは主に1つ。

それは、

「地面反力を骨盤に伝えて、骨盤を一気に回転させる

ことです。

「地面反力を骨盤に伝えることによって、骨盤を回転させる」ことが、踏み込み足の役割

踏み込み足はどのようにはたらくか?

→身体重心に投手方向&下向きへの速度が付いた状態で前足が接地すると、前足膝・前足股関節を屈曲させる方向に力がかかる。この力によって前足のハムストリングスが強制伸張され、その屈曲させる力に抗する形で、ハムストリングスが膝関節伸展力を発揮する(そのままだと前足がグシャリとつぶれてしまう)。

踏み込み足の踵から骨盤に、<地面から反ってくる力>が伝わり、その力によって骨盤が回転する。

→こうして、「膝関節伸展によって骨盤が回転する」という結果になる。膝関節がまだ伸展しきっていない=まだ骨盤の回転が不完全、膝関節が完全に伸展を終える=骨盤が回転しきるということ。

→要するに、踏み込み足が接地しなければ骨盤は本格的には回転しない。軸足股関節の内旋によって骨盤の回転のトリガーはすでに引かれているが、踏み込み足が地面につかない限りは本格的には回転しない

(※ハムストリングスは構造解剖学的には膝関節屈曲と股関節伸展の機能を持つが、機能解剖学的には膝関節伸展の作用も持つそうだ。なぜならハムストリングスは股関節と膝関節にまたがる複関節筋であり、足の裏を接地した状態で股関節伸展をすれば膝関節伸展も同時に起こるから)

 

…細かい話は苦手だという方は、↓のイラストを見ればわかるはずです。

 

さて、ここでもまた「地面反力」が出てきました。

地面反力を最大限使うためには、そもそも「股関節ー膝関節ー足関節の伸展力が同じ方向に向かっている」ことが必要で、そのためには三関節直列という状態を作ることがベストだ、という話でしたね。

 

ですから、バッティングの踏み込み足も、当然ながら「三関節直列+トリプルエクステンション」を行います。

★バッティングの踏み込み足と「三関節直列+トリプルエクステンション」★

地面反力を骨盤に伝えて、骨盤を一気に回転させる。そのために三関節直列とトリプルエクステンションが必要

踏み込み足のつま先は、ある程度どこを向いていてもOK。三関節直列の形さえ作れればよい。ただし、壁を作ると称して極端に閉じ込みすぎるのはNG。つま先を閉じ込んだ状態をキープすると骨盤が回転しなくなる

・踏み込み足はやや変則的に力を発揮する。股関節は主に、「外旋の力を発揮」する。伸展の力を発揮するのはむしろ膝関節。足関節も一応伸展力を発揮するが、足の裏がめくれ返る打者が多いことからもわかる通り、足関節の伸展力の貢献度は少ないと思われる

…基本的には踏み込み足の股関節は「外旋の力」を発揮しつつ、足の裏(の外側)でこらえる。

というわけで、バッティングの軸足・踏み込み足と

「三関節直列+トリプルエクステンション」

との関係は以上の通りです。

 

簡単に整理すると、

軸足の「三関節直列+トリプルエクステンション」はどのように行われるか? まとめ

・軸足の「三関節直列+トリプルエクステンション」によって並進運動(助走)を行う。股関節も膝関節も足関節も伸展力を発揮する。

・軸足股関節を内旋させることによってスイングのトリガーが引かれる。三関節直列+トリプルエクステンションをしっかりやっておくと、股関節内旋につなげやすい

・軸足のトリプルエクステンションをほぼ使わない打者もいるにはいるが、不利益が多いので将来的には消滅していくはず

 

踏み込み足の「三関節直列+トリプルエクステンション」はどのように行われるか?まとめ

・踏み込み足の役割は「地面反力を骨盤に伝えて、骨盤を一気に回転させる」こと

・「下肢三関節が同じ方向に力を発揮できる」のであれば、つま先はどこを向いていてもよい

・踏み込み足はやや変則的に力を発揮する。股関節は「外旋力を発揮」する。伸展の力を発揮するのはむしろ膝関節。足関節も一応伸展力を発揮するが、足の裏がめくれ返る打者が多いことからもわかる通り、足関節の伸展力の貢献度は少ないと思われる

となり、やはりピッチング同様

「軸足で押して、踏み込み足で回転運動にする」

ということになりますね。

 

運動エネルギーについて:「まだ動いているところ」は、エネルギーを伝え切っていない

なお、先ほど

「踏み込み足の太もも裏にあるハムストリングスが膝関節伸展力を発揮し、膝関節が伸展する

→踏み込み足の踵から骨盤へと地面から反ってくる力が伝わり、骨盤が回転する」

と書きました。

 

これをもっと詳しく言うと、

「股関節・膝関節を屈曲させる力が前足にかかる

→それに抗するような形で、ハムストリングスが膝関節伸展筋力を発揮する

→下腿の骨を通じて地面に対して力が加えられる(骨というのは、力を伝達するためのテコ<道具>の役割を持ちます。もし骨がなければ力は伝達できないはずです)

→作用反作用の法則に従って地面から力が反ってくる

→下肢の骨を通じて、地面反力が伝えられる

→骨盤に力が伝わり、その力によって骨盤が回転する」

という順序であると私は考えています。長々しいですが、順序を追って考えるとこのようになると思います。

 

さて、良いバッティングフォームかどうかを見極める一つの目安として、

「インパクト前までに、前足の膝がきちんと伸展を終えているかどうか?」

というチェックポイントがあります。

 

なぜこんなチェックポイントがあるのでしょうか?

それは、「ある部位がまだ動いている最中である=その部位は、まだ運動エネルギーを溜め込んでおり、運動エネルギーを伝えきっていない・使い切っていない」ということが言えるからです。運動エネルギーとは「動いている物体が持っているエネルギーのこと」で、当然、動いていなければエネルギーは0です。

これを前膝の伸展に当てはめると、「前足の膝が伸展を終了していない=前足の膝がまだ動いている最中である=前足はまだ運動エネルギーを保持しており、前足の膝が本来発揮しきるべきエネルギーをまだ出し切っていない」となります。

 

そして、バッティングの飛距離やヘッドスピードというのは結局「運動エネルギーをいかに使い切るか?」にかかっています。運動エネルギーが100出せるのなら、100出し切りたいわけです。90や80じゃマックスの飛距離は出ません。

ということは、インパクト時点で前足の膝の伸展が終わっていないということは「まだエネルギーの余力がある状態」です。逆に、膝の伸展が終わっていれば、「もうエネルギーは出し切ったよ」と堂々と言うことができます。膝関節が伸展することによって骨盤が回転するのですから、膝関節はインパクトまでに伸展させ切りたいものです。

 

先も触れたように、前足の膝の伸展力というのは骨盤の回転の度合いにダイレクトに影響しますし、真上に体幹という質量の大きい部位を載せている骨盤の回転が100パーセント済んでいるか済んでいないかというのは運動エネルギーという観点からすると非常に大きな問題ですので、前足の膝の伸展がインパクト時までに済んでいないというのはかなり「イタい」エネルギーロスなのです。

 

自分や仲間のスイングをチェックするなら、ここをチェックしましょう。

・前足の膝の伸展がインパクト時までに済んでいるか? インパクト時に骨盤は投手に正対しているか?

・軸足の内旋は十分か? 目安としては、前足の膝の裏にくっ付くくらい深く鋭く内旋できているか?

この2つが欠けていれば、「まだまだ飛ばせるじゃないか」ということになります。

 

好評発売中です!

ホームラン量産マニュアル日本の若者は常識洗脳されている音読でバカが天才になる

広告

スポンサーリンク
スポンサーリンク