野球選手には「マシンでのラットプルよりも懸垂が良い」のだろうか?

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野球選手には「マシンでのラットプルよりも懸垂が良い」のだろうか?

負荷のかかり方から考える

野球では、バッティングでもピッチングでも

「野球では、バッティングでもピッチングでも、<先行部分の活動によって後発部分が{予備伸張}され、伸張反射に繋がる>を上手に生かしながら、

中心から末端へかけて末端加速を実現していく。これによって、打者ならバット・投手なら指先に、高い速度を与える」

 

野球では、バッティングでもピッチングでも、「中心部よりも末端部のほうが速度が高い」という特徴があります。

骨盤よりも肩が、肩よりも指先の方が高い運動速度を獲得する。

つまり、「先行部位の活動がまずあって、それから後発部位の活動へと連鎖」していきます。エネルギーの伝達という意味で優れた方式です。

 

このとき、我々の身体にある諸々の筋肉の動きとしては

「先行部位の活動によって引き伸ばされた状態から、短縮性筋活動へと切り替える=切り返すような動き」

が重要になります。

 

「切り返し」といえば、筋力トレーニングのバリエーションの一つに「プライオメトリクス」と呼ばれる方式があります。

筋肉のSSC=伸びてから縮む、伸張ー短縮サイクル(StretchShortningCycle)を最大限に生かすトレーニングです。

 

少し長々しいですが、プライオメトリクスについて、NSCAのテキストの第4版から該当箇所を引用すると、

・プライオメトリックスの力学的モデル…伸張性筋活動(予備伸張)で筋腱複合体が引き伸ばされると、直列弾性要素(=英語でSEC,筋そのものも含まれるが、主に腱のこと)はバネのように引き伸ばされる。直列弾性要素が引き伸ばされるにつれて、弾性エネルギーは蓄積される。この伸張性筋活動の直後に短縮性筋活動が起こると、蓄積されたエネルギーが放出され、筋と腱が本当の(引き伸ばされていない)形状へと戻ろうとする力が自然に発生し、直列弾性要素が全体的な力発揮に貢献することができる。

・プライオメトリックスの神経生理学的モデル…(筋肉の過度の伸張を防ぐためのセンサーである)筋紡錘が(筋の)素早い伸張によって刺激を受け、反射的な筋活動が生じる。この反射的反応によって主働筋の活動が高まり、その結果、筋が発揮する力が増加する。

★力学的モデルにおいても、神経生理学的モデルにおいても、「筋の伸張の直後に短縮性筋活動が起こらなければ」、伸張反射との相乗効果は無効になる。たとえば、伸張から短縮性筋活動までの時間が長すぎたり、動作の範囲が大きすぎたりする場合など(NSCA ストレングス&コンディショニング第4版,p515-516)

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「トレーニングによって力発揮の方式を洗練する」の逆がある?

プライオメトリクスの目的は

「力学的モデルと神経生理学的モデルの両方の要素を、マックス近くまで使えるようにする(←専門的にトレーニングしてやらないと開発されにくい)」

「予備伸張を活用して、より大きな力とより大きな速度を発揮することを、神経系に覚えさせる」

ことだと私は考えています。

 

つまり、

「トレーニングによって、筋・神経系の力発揮の方式を洗練する」

ことが根本的な意図です。これを実現するには「プライオメトリクス的なトレーニングを積むこと」以外の手段は少ないと考えられます。

 

 

さて、ここで、逆に

「トレーニングによって、筋・神経系の力発揮の方式が望ましくないものへと変化する」

可能性も考えられないでしょうか。

 

人間の脳に可塑性(後から変更を加えることができるという特性)が備わっている以上、

「普段やっているトレーニングや練習によって、悪い癖が付く」

ということは、可能性としては十分考えられます。

例えば、一日2000球ノルマの連続ティーによって手首をこねるクセが身に付くように。

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「切り返しの動きが大事」なら

つまり、

「切り返しの動きが大事だ」

というのなら、

「筋肉が切り返すように力を発揮する=伸張性筋活動から短縮性筋活動へと瞬間的に切り替わるような力の発揮の仕方をする(SSC的な要素の強い)トレーニング」

が望ましく、その逆は望ましくない=神経系に効率の悪い動きを覚えさせることになります。

 

つまり、

「筋肉が切り返すように力を発揮しない=伸張性筋活動から短縮性筋活動へと瞬間的に切り替わらないような力の発揮の仕方をする(SSC的な要素が弱い)トレーニング」

は望ましくない…と言えないでしょうか?

 

この観点から、私は

「野球選手は、ウェイトスタック式マシンでのラットプルダウンよりも、

自重or加重での懸垂を重視したほうが良いのではないか」

と考えています。

 

(なお、両者とも「オーバーグリップ、手幅は肩幅~肩幅+α程度」とします)

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マシンでのラットプルダウンにおける負荷のかかり方

というのも、マシンでのラットプルダウンには

「負荷のかかり方の関係上、SSCが弱い」

という特性があるからです。

ラットプルダウンのマシンでは、ワイヤーを介してウェイトと持ち手が連結されています。ワイヤーはピンと張った状態です。

 

ということは、ラットプルダウンでは

・上から下に引き下ろすとき(ポジティブ、短縮性筋活動)…重りは重力に逆らって「下から上」に動く。摩擦力は重りの動きと逆向き=重りを下に押しとどめるようにはたらくので、負荷は重くなる

・下から上にバーを戻すとき(ネガティブ、伸張性筋活動)…重りは重力に従って「上から下」に動く。摩擦力は重りの動きと逆向き=重りを上に引き留めるようにはたらくので、負荷は軽くなる

・ネガティブからポジティブに切り替わるとき…軽かった負荷が一気に重くなりすぎて、SSCが起きるほどの切り返し(↑で軽く触れました)にはなりにくい

という特徴があります。

 

実際にマシンでラットプルダウンをやったことがある人はわかると思いますが、体感として「切り返すような感じ」ではないですよね。

「筋肉を頑張らせたまま、何とか切り返す」という感じです。

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懸垂における負荷のかかり方

では、懸垂はどうでしょうか?

・ポジティブ…負荷が一番かかる。特に最下点の少し後あたりが一番きつい

・ネガティブ…ポジティブに比べると負荷は弱め(筋肉は伸張性筋活動、ネガティブ時の方が強い筋力が発揮できるため)

・最下点での切り返し時…リズムよくやれば簡単にSSC要素を強めることができる。ラットプルと比べて(摩擦の邪魔がないぶん)負荷が一定であるため

 

という感じで、ラットプルダウンと比べるとSSC要素が強いのが懸垂です。

実際、マシンを自重くらいの負荷に設定して、↑の懸垂ギネスの動画くらいキレのある切り返しで、ラットプルマシンでのトレーニングができるか…?といえば、非常に難しいです。

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おわりに

というわけで、個人的にはSSCを起こしやすい(であろう)懸垂推しです。

特に打者の場合、懸垂(で鍛えられる広背筋)の筋力が弱いと「捻転差がほどける」ようにして、バット・腕が早々に出て行ってしまいます。

 

もちろんやり方によるところもありますし、

ラットプルダウンには「軽い負荷でも始めることができる」「追い込みやすい」という長所はありますし、

懸垂にも「ある程度の筋力が必要」が必要という短所はありますが、

野球に必要な力発揮の様式という点で考えると、懸垂に軍配が上がるでしょう。

 

 

それに加えて、「懸垂が十分な回数こなせる」という事実を獲得することができれば、

自身の運動能力に対する評価が上がり、結果として自己肯定感の高さにつながり、

ひいてはグラウンドでのパフォーマンスの向上にもつながるのではないか?

同じことが、倒立(→倒立が上手くできれば)やデッドリフト〇〇kgなどにも言えるのではないか?

と思っています。

 

今回の記事がお役に立てば幸いです。

では、またこんど!

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