野球のバッティングにおける「軸足股関節の内旋と骨盤の回転の関係」について~軸足股関節の内旋で骨盤は回転を始めるのか?~

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野球のバッティングにおける「軸足股関節の内旋と骨盤の回転の関係」について~軸足股関節の内旋で骨盤は回転を始めるのか?~

「軸足股関節の内旋で骨盤が回転を始める」は、因果関係を取り違えている

最近、

「軸足股関節の内旋=軸足の内転筋の短縮によって大腿骨が内旋し、その結果、骨盤が回転を始める」

という説が広がっていますが、果たしてこの説は正しいのでしょうか。

 

・私の考えは異なります。「軸足股関節の内旋=軸足の内転筋の短縮によって大腿骨が内旋し、その結果、骨盤が回転を始める」というのは、因果関係を取り違えていると考えています。私の考えは以下で述べる通りですが、その大筋を紹介すると「骨盤の回転が因であり、軸足股関節の内旋は果である」というものです。

 

【軸足の内転筋が果たす役割】

参考画像

私の説の立場から「バッティングのときの軸足の内転筋の役割」を表現すると、

A.骨盤と膝が位置的に離れすぎないように、骨盤と膝を繋ぎとめておく役割

B.軸足を前足のひざ裏に寄せることによって、体全体の回転半径を小さくする役割

この2つです。

 

A.骨盤と膝が位置的に離れすぎないように、骨盤と膝を繋ぎとめておく役割

 バッティングでは、前足からの地面反力によって骨盤が急速に回転します。

 「骨盤が急に回転する」ということは、つまり、「軸足の膝が骨盤の回転に置いて行かれそうになる」ということでもあります。

 これは実際に動きを試してみていただけるとわかりやすいかと思います。

 

 試しに「軸足の膝をその場に残したまま骨盤だけを投手方向に回転させようとする」と、軸足の内転筋がグッと引き伸ばされる感覚があるはずです。つまり、「軸足の内転筋が邪魔になって、骨盤を投手方向に回しきれない」はずです。

 

 しかし、このときに軸足の内転筋が短縮してくれさえすれば、軸足の膝は内側に寄り(=内転)、同時に軸足股関節も内旋されます。これによって「軸足の内転筋が邪魔になって骨盤を回しきれない」状態が解決され、骨盤を投手方向に回し切ることができます。

 もしもこの内転筋のはたらきがなければ、軸足はその場にベタ足で残り続けるでしょう。軸足の内転筋の作用があるからこそ、「骨盤の回転についていく」という形で、軸足が内旋するのです。

 

 大切なのは、後述する通り「(前足からの地面反力による)骨盤の回転」が主であって、「軸足の内旋」は従である、ということです。この主従関係を取り違えると、「軸足が内旋するから骨盤が回転するのだ」という間違いを犯すことになります。

 

B.軸足を前足のひざ裏に寄せることによって、体全体の回転半径を小さくする役割

 こちらは「結果的にそうなる」という程度のものです。

 A.で紹介したように、「軸足の内転筋が短縮してくれさえすれば、軸足の膝は内側に寄り、かつ軸足股関節も内旋され」るので、軸足の膝は自動的に前足の膝裏に寄ります。

 軸足の膝が前足のひざ裏に近寄ることによって、身体全体の回転がコンパクトになります。すると、その分だけ身体全体の回転速度が上がりやすくなります。

 ただし、こちらはあくまでも「オマケ」のようなものです。大切なのはあくまでも「前足からの地面反力によって骨盤を回転させること」であり、前足からの地面反力のほうがはるかに大切です。

 

 以上の説明からわかる通り、

・「軸足股関節の内旋からの運動連鎖で骨盤が回旋する」

・「股関節と骨盤はくっついているので、軸足が内旋すると骨盤が回転する」

・「軸足の内転筋の短縮にって軸足股関節が内旋して回転運動のためのエネルギーが生産され、骨盤が回転を始める」

 これらの表現は(少なくとも物理的に)間違っていると私は考えています。

 以下、さらに詳しい説明を加えます。

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【バッティングのときの下半身の動きの全体像】

 バッティングのときの下半身の動きの大筋は、以下のような流れになっています。

 

【1】投手側の足を上げた状態のときに、「軸足が外転・伸展の力を出す(=右打者なら、右足のアウトエッジを使って地面を押す)」ことによって、身体を横向きのまま投手方向へと移動させていく。並進運動を何のために行うのかというと、大きな目的は「回転運動のために必要な<勢い>を付ける」ため。つまり、「並進運動とは、回転運動のために(横向きに)勢いを付けることである」と表現できる。わかりやすく表現すれば、並進運動は「回転運動のための助走」である。

 なお、「勢い」がゼロの状態から回転運動に入るのは極めて難しい。並進運動によって骨盤に「横向きに移動する勢い」をつけてやることによって、引き続き起こる骨盤の回転運動にスムーズに移行することができる。上半身を徐々に前傾させながら、回転運動のための「勢い」を付けていく。

 

※ここでいう「勢い」とは、物理用語でいう「運動量(=質量×速度)」のこと。勢いがゼロということは運動量がゼロということ、と理解してもらえると良いです。バッティングにおいて大切なのは「身体全体の運動量をゼロにしないこと=動きを途中で止めないこと」です。一度運動量がゼロになる(静から動)と強いスイングはできません。バッティングにおいてはとにかく、「身体全体の運動量(勢い)をゼロにしない=動から動のスイングを心がけること」です。

※なお、変化球に対応するときには「骨盤のヨコ方向の運動量をゼロにしないこと=骨盤が投手方向へと横向きを保ったまま移動する勢いを保ち続けること」が重要です。変化球でタイミングを外されて自分のスイングをさせてもらえない…というのは、「骨盤のヨコ方向の運動量がいったんゼロになってしまった状態」を指します。

※もう一つ。現代野球で打者として大成するには「トップハンド側の肘の運動量(=勢い)」をゼロにしないことも重要です。トップハンド側の肘の勢いを付けておくと①スイングが楽になる(勢いが使えるので) ②逆方向に放り込みやすくなる ③速球に強くなる といったメリットが享受できます。トップハンド側の肘を畳み込むタイミングの目安としては「前足のかかとが接地する時点ではすでにトップハンド側の肘が肩よりも下のラインまで来ていること」が目安です。これが掴めるといわゆる「ハーフスイング気味の見逃し」ができるようになります。

 

【2】前足のかかとが接地する瞬間を迎える。「前足のかかとの接地」を境にして、並進運動から回転運動へと一気に切り替わる。いわゆる「Launch Position」のこと。

 ここで大切なのは、「前足のかかとが接地するときに、骨盤がきちっとした位置に入っている」こと。この「骨盤をきちっとした位置に入れる」ために、軸足が外旋・伸展の力(つまり、右打者なら右の股関節が、<右足の右斜め下に向かって右回りに押し込む力>を発揮→すると作用反作用の法則で地面から逆向きの力が返ってきて、骨盤の位置を修正することができる)を出す。

 きちっとした位置とは「骨盤が適度に前傾していること」「下半身の3つの関節が、力を出しやすい位置(パワーポジション)に入っていること」を指す。

 この「きちっとした位置」に骨盤が入っていないと、骨盤の回転面がズレてしまう。よくある例が「カチ上げを狙いすぎて骨盤を適切な位置にセットできず、結果として骨盤の回転面が上向きにズレ」ることとなり、その結果、スイングプレーンが上向きにズレて過度なアッパースイングになる(おまけに骨盤の回転面がズレるとその上に載っている目線もブレる)ケース。こうなると「当たればデカいけど当たらない」ことになる。特に最近フライボールレボリューションなどが流行しつつあるため、現場ではこういうケースが多いと思われる。

 

 この「骨盤を適切な場所にセットする動き」が、外から見るとあたかも「軸足股関節の内旋によって骨盤の回転のトリガーが引かれる」ように見える。

 しかし、実際は「軸足股関節の外旋・伸展の力発揮によって骨盤の位置が適切な個所にセットされる動き」が主であって、「その骨盤の動きに付いていくために、軸足大腿骨が内転筋のはたらきによって内旋される」のは従。この主従関係を間違えると「軸足の内旋によって回転運動のトリガーが引かれる」と考えてしまうことになる。

 実際には、このとき「軸足股関節は外旋+伸展の力を出して骨盤を適切な位置にセットしている」のであり、この動きと連動して、A.で紹介した「内転筋のはたらきによって、先行する骨盤の回転に対して軸足の膝を付いていかせる」というメカニズムもはたらいているということである。因果関係を取り違えることのないように注意。

 

【3】前足かかとの接地後、「前足からの地面反力」が一気に大きくなる。これと連動して、ほぼ同時に軸足のかかとが浮き始め、「軸足が地面を押す力」は一気に小さくなる。つまり、軸足から前足への体重移動が起きる。

 この「前足からの地面反力」が骨盤を回転させるメインエンジンとなる。つまり、【2】で適切な個所にセットされた骨盤が、【3】で本格的に回転運動を始める。前足かかと接地時に骨盤が適切な個所にセットされていないことによる弊害は前述の通り。なお、前足からの地面反力が大きければ大きいほど、骨盤の回転速度は高くなる。

 

※体重とはそもそも「地面を押す力の大きさ」のことを指し、地面反力とは「地面から返ってくる力の大きさ」を指す。作用反作用の法則により、この2つの力は向きこそ逆だが大きさは同じという関係にある。「大きさは同じ」なので、体重が大きければ地面反力も大きくなる。難しく考えるのが嫌いであれば「足の下に置いた体重計の数値を増やすにはどうしたらよいか?」を考えるとよい。体重計の数値が高いということは地面を押す力が大きいということである。

 

 …というわけで、以上の【A、B】【1~3】からわかる通り、バッティングにおいて「軸足の股関節の内旋によって骨盤が回転する」という論理が入り込む余地はどこにもありません。

 

 そればかりでなく、以上のような説明を使えば、

・「<軸足股関節の内旋=軸足の内転筋の短縮によって大腿骨が内旋し、その結果、骨盤が回転を始める>という説明は因果関係を取り違えている。実際は骨盤の回転が主であって、それに付き従う形で、軸足の内転筋のはたらきによって軸足の大腿骨が内旋されている」

・「<軸足の内旋によって骨盤が回転しはじめている>ように見えるのは、実際は<軸足股関節の外旋・伸展の力によって骨盤を適切な個所にセットする動き>のことである。このとき軸足の内転筋のはたらきによって、骨盤の回転についていく形で軸足の大腿骨が内旋される」

…という形で、論理的に誤りの指摘を行うことができます。

 

 つまり、あくまでも骨盤の回転が主であり、軸足の内旋は従です。あるいは、骨盤の回転が因であり、軸足の内旋は果です。

 

 「軸足股関節の内旋によって骨盤が回転する」という説明は、直感的には正しいと思えるかもしれませんが、以上の説明の通り、因果関係を取り違えてしまっていることが論理的に明らかです。

(確かに、上行性の運動連鎖によって骨盤が回転しようとするのではないか?という推理は理に適っているように思えるかもしれませんし、「立ったまま軸足をグリグリ内旋させると骨盤が回転しようとするのを感じ」ることは確かですが、それはあくまでも立位の話。実際のバッティングではその動きは出ません。その代わりに今回の記事で紹介したようなメカニズムがはたらいています。そもそも、軸足の股関節を内旋する力というのは数十キロある身体の質量の前では極めて無力であり、力学的有効性も極めて低いのですが、そこに考えは至らないのでしょうか)

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【補足1】

ここまではあくまでも「物理的・メカニズム的な話」です。

 

 実際の指導においては、あくまでも「選手自身の感覚や意識」を尊重する必要があります。ですから、以上の説明をわかったうえであえて、まだ理屈がわからない小学生相手に「こっちの膝をこっちのひざの裏にくっつけちゃおうね」という指導をするのは問題がないと私は考えます。「軸足で助走を付けて、前足で体重計をぶっ壊す」「前足で<バッティングスイッチ>を押して回す」といった定型文も頼りになるでしょう。

 

【補足2】

前足からの地面反力(前足の下に置いた体重計の数値)を増やす方法は4つ。

 

0.「トレーニングや増量によって体の質量そのものを増やす」

1.「<曲げた前足を伸ばす>動きを入れる」

2.「体重計に上から下に勢いを付けてドスンと飛び乗る」

3.「体重計の真上に全身を乗せていく」

 

現代のメジャーリーガーは0.と1.と2.を複合的に使います。要は「身体を鍛えて体重+筋力を増やし」「曲げた足を伸ばす力をトレーニングで鍛え、バッティングに活かし」「上から下への体重移動を使っている」という打ち方・鍛え方をしています。このようなアプローチは高い対応力・高い打球速度の両立を可能にします。

 

その一方で、3.は昔の打者が好んで使っていた方法です。

3.はホームラン競争や飛距離競争でなら絶大な威力を発揮しますが、

体全体が投手方向にスウェーするため速球系への対応力でかなり見劣りします。

 

現代の日本プロ野球でもこのような打ち方をしている人は多いですが、バリー・ボンズ選手が栗山英樹さんによるインタビューで答えていた通り「日本人は動きすぎだ」と言われる原因にもなっています。

 

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