「バッティングの物理」情報置き場

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目次

「バッティングの物理」情報置き場

「投球軌道・スイング軌道」関連

ピッチャーのボールの軌道:三次元+時間軸で考えよう!

①ボールは「上から下」に来る

②直球よりも変化球の方がより「上から下」にくる

③投手によってリリースポイントの高さ・左右の位置は異なる

④投手によってボールの軌道は異なる

実線+白丸が95mph、破線+三角が90mphの直球。コンピュータシミュレーション。図はBahill(1990)より

 

ピッチトンネルの場所はホームプレート下端から7メートルちょい

(https://www.draysbay.com/2017/2/6/14432406/pitch-tunneling-bp-stats-rays-sp より)

いわゆるピッチトンネル。ホームプレートの下端から23.8フィート=7.25メートルに位置する、バッターが「スイングするかしないか」を決定するポイントのこと。

 

(http://www.youthpitching.com/strategy.htmlより)

リリース後0.4秒でボールがホームプレート前面に達するとした場合。

図でいう「リリース後225ms」の時点がピッチトンネルに当たる。

ちなみに、前足かかと接地=Launch Positionのタイミングはボールがピッチトンネルを通過する直前あたり、とされている。

 

バッティングと反応時間についての動画。

バッティングの時間間隔とフィジカル強化

こう考えると、

打者の下半身は「0.2-3秒の間に骨盤をヨコ向きから投手に正対するまで回転させる」ように出力する必要があり、

打者の上半身は「0.2秒弱で、質量1kgのバットを、ほぼ静止状態からインパクトの加速されきった状態まで急加速させる」ように出力する必要がある

のだから、

下半身はプライオ重視、体幹はネガティブ刺激に対してこらえ切ってから切り返す系(ハンギングレッグレイズツイストやメディシンボールサイドスローなど)、上半身はRFDを重視したほうが良いんじゃないかとも思う。もちろん、最低限の筋力筋量は付けた上で。

 

「重たいウェイトの1RMを競う」というようなウェイトの仕方にこだわる必要性は特にないと思われる。(ただし、ステータスとして「自分は〇〇kg挙げれますよ」という売り込みをしたり、フィジカル面に関する自己効力感を引き上げるという使い道もある。とりあえず「アイツはデッド250挙げるよ」と思われて損はない)

 

基本的に、バッティングは「下肢で生み出された<運動エネルギー>をボールに伝える」ものである。

運動エネルギーの算出式は「E=1/2*m*v^2」なので、バッティングでは「質量が大きい所は速度小さめ、質量が小さい所は速度大きめ」になるのが自然だ。

 

つまり、質量が大きい下半身と体幹は比較的ゆっくりめに動き、質量が小さい上半身とバットは高速で動く。

下半身・体幹の速度が高ければ、運動エネルギー(≒質量×(速度の二乗))の総和も大きくなるから、それだけボールが飛ぶ…という算段である。

 

ただし、先ほどから言っているように、バッティングには時間の制約がある。

「下半身が力を出せる時間は0.2-3秒、上半身が力を出せる時間は0.2秒弱」

なのだから、その短い時間の中でどれだけ高い出力をさせることができるか? が大事になってくる。

0.2-3秒しか持ち時間がないのに、ウェイトのワンマックス測定のときのように悠長に力を出している場合ではないだろう。

 

バッティングで大事なのは、いかに「短時間で」「爆発的に」力を出せるか…つまり、「パワー」なのである。

打者はとにかく「ハイパワーを出し切る感覚」を脳・神経系統に覚えさせ、クセを付けておくべきだ。人間の脳には「はじめは意識的にしかできなかったことも、繰り返しているうちに無意識的にできるようになる」という技能習得機能が備わっているので、長期間継続的にパワー系・瞬発系・RFD系のトレーニングを行い続けていれば、はじめのころはパワーを発揮しきれなくても、そのうち「ハイパワーこそ自然」「意識せずとも高出力になる」という状態に到達するはずだ。

もちろんやりすぎは×だし、パワーとは「速度×力」「(力×距離)÷時間」なのだから、最低限の筋力筋量があることは前提である。個人的には「最大挙上重量だけ確保しておいて、あとはパワー・瞬発・RFD系に回す」くらいの気持ちで良いと思う。

 

実際、メジャーリーガーのインスタグラムなどを見ていても、彼らがBIG3を高重量低レップでやっている動画はあまり投稿されない(高重量を扱うときの顔がインスタ映えしないという理由からからもしれないが…)。それよりも目立つのはボックスジャンプやメディシン系種目、スレッド押し(重りを乗せたソリのようなものを押していく)やタイヤフリップなどの「パワー・瞬発系」の種目である。

 

スイング軌道について:理想的なスイング軌道は、いくつかの条件によって半ば自動的に決定される

スイング軌道…「最短距離≠最短時間」ではないことの例。

最短距離という「感覚」はあっても良いが、それを真に受けて本当に大根切り(アメリカでもChoppoing Downという言葉がある)をするのはおかしい。

 

「打球速度」関連

(https://www.baseballgeeks.jp/?p=1768より引用)

(http://baseball.physics.illinois.edu/statcast.htmlより引用)

(アデア(1996)より)

 

バットとボールの衝突

・バットとボールの衝突時間:1/1000秒

・インパクト時のバットの変形:直径比で2%変形

・インパクト時のボールの変形:直径比で50%変形

 

<以下、Cross(2011)より>

・木製バットの方が金属バットよりも剛性が高い。

・木製バットはボールよりも5倍stiffであり、金属バットはボールよりも3倍stiffである。

※剛性…曲げやねじりの力に対する、寸法変化(変形)のしづらさの度合いのこと。 力に対して変形が小さい時は剛性が高い(大きい)、変形が大きい時は剛性が低い(小さい)という(Weblio辞書より)

 

・金属バットは木製バットよりElasticである。

→弾性(だんせい、英: elasticity)とは、応力を加えるとひずみが生じるが、除荷すれば元の寸法に戻る性質をいう(Wikipedia『弾性』より)。

・金属バットは中身が空洞である。

・金属バットの場合、トランポリン効果がはたらく。つまり、ボールとの衝突によってひずんだのが、元の形状に戻ろうとする。このとき、ひずみによって弾性エネルギーが溜まり、元の形状に戻ろうとするときに弾性エネルギーが放出される。これをトランポリン効果という。

・なお、木製バットはElasticityに欠けるため、弾性エネルギーはほとんど溜まらない。そのため木製バットではトランポリン効果は観測されない。

 

・バットの軌道を10°→20°へと変更すると、15フィート=4.5メートル飛距離アップ

・60マイル=96km/hのボールを、ヘッドスピード65マイル=104km/hで打つと、400フィート=121m飛ぶ(動画より。飛びすぎな気もしないでもないが…)

・そこから球速が5マイル=8km/h上がっても、飛距離は5フィート=1.5メートルしか伸びない

・しかし、ヘッドスピードが5マイル=8km/h上がれば、飛距離は25フィート=7.62メートルも伸びる!

 

・バットとボールの質量比は1000:145≈6:1

・運動量は「運動の止めづらさ」を表す。「運動量=速度×質量」(p=mv)で求めることができる。

・運動量が小さいものと運動量が大きいものが衝突したら、運動量が小さい方が弾き飛ばされる

・バットが持つ運動量はボールの運動量の6倍 → インパクトを支配しているのはバットの運動量である。逆に、ボールのスピード(投球速度)はそれほど飛距離に影響しない

・運動量=質量×速度を大きくするには? → 質量を変えたところでたかが知れている。それよりも速度=ヘッドスピードを上げる方が良い!

・ボールの飛距離を伸ばすには、ヘッドスピード=バット(の重心)の投手方向への並進速度を上げるべきである

 

・ちなみに、両腕の質量はバットの質量の約6倍

・ボール:バット:両腕の質量比はだいたい1:6:12。

・ちなみに、テニスボールとテニスラケットの質量比も1:6である

 

<バットとボールの衝突の際の運動量保存>

★Cross(2011)より

・衝突前のバットの運動量:質量1.0kgのバットの重心が20m/s→バットの運動量は20kg・m/s(p=mv)

・衝突前のボールの運動量:質量0.14kgのボールの重心が-14m/s→ボールの運動量は-2kg・m/s

→運動量の合計は、20kg・m/s + -2kg・m/s = 18kg・m/s

・衝突後のバットの運動量:質量1.0kgのバットの重心が13.7m/s→バットの運動量は13.7kg・m/s

・衝突後のボールの運動量:質量0.14kgのボールの重心が30.7m/s→ボールの運動量は4.3kg・m/s

→運動量の合計は、13.7kg・m/s + 4.3kg・m/s =18kg・m/s

…衝突前後で運動量が保存される

実際には摩擦や変形などでエネルギーが逃げてしまうので、ここまで理想的に運動量保存則が成り立つわけではない

 

基本的な物理法則

ニュートン力学の基本3法則

第1法則(慣性の法則)
物体は外部から作用を受けなければその速度は一定である。動いているものは動き続け、止まっているものはいつまでも止まっている。

第2法則(力の定義)
物体の加速度は物体に作用する力に比例し、物体の質量に反比例する。数式で表すと次の通りである。

第3法則(作用反作用の法則)

「EMANの物理学」より引用

 

第二法則は、次のようにも表される。直感的にわかりやすいのはこちらだろう。

国際単位系

 

回転運動と並進運動の対応

日本語版wikipedia「慣性モーメント」より

ざっくりとした説明

・質量…動かしづらさのこと。質量が大きいほど、動かすのに大きな力が要る。ちなみに、「止まりづらさ」でもある。

・慣性モーメント…「回りづらさ」のこと。慣性モーメントが大きいと回しにくい=回転させるのに大きな力を必要とする。逆に慣性モーメントが小さいと回しやすい。ちなみに、「止まりづらさ」でもある。並進運動における質量=回転運動における慣性モーメント、と考えるとわかりやすい

・運動量…質量かける速度。運動の勢い、運動の止まりづらさを表す

(位置x1→x2への変位を時間tで微分する(=dx/dt)と、速度vが出てくる。速度v1→v2への変化を時間tで微分する(=dv/dt)と、加速度aが出てくる)

 

参考文献など

ロバート・アデア(1996)『ベースボールの物理学』紀伊國屋書店.

Adair, R.(2002).The Physics of Baseball.Harper Perennial.3rd edition.

Cross, R.(2011).Physics of Baseball & Softball.Springer.

Bahill.T et al.(1990).A model for the rising fastball and breaking curve ball.

 

 

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