【日本球界の打撃が根底から変わりつつある】日本野球界におけるバッティングの新パラダイム⇄旧パラダイムを徹底比較する

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目次

【日本球界の打撃が根底から変わりつつある】日本野球界におけるバッティングの旧パラダイム→新パラダイムを徹底比較する

静かな、しかし速やかな変化

2019年現在の、日本球界のバッティング事情。

 

テレビの特番の影響もあってか、球界全域を「フライボール革命」という概念が席巻し、

プロ野球でも名だたる強打者たちが次々に「メジャー的な打ち方」へのモデルチェンジを進めている。

今年のセンバツ高校野球を見ていても、「良い意味で日本の高校球児っぽくない打ち方の選手・チームがいきなり増えた」という印象を受けた。

 

今回の記事では、こういった流れに象徴される

「バッティングのパラダイムシフト」

…つまり、現在日本球界の各カテゴリーで進みつつある

<日本的な打ち方>から、<メジャー的な打ち方>へのシフトチェンジ」

について解説する。

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旧打法から新打法へ。何が変わったのか?

旧打法と新打法、どこがどのように変化したのか? リストで確認する

変化というからには、ある状態からある状態へのシフトである必要がある。

具体的にどのような変化が起こりつつあるのか?を、リストで確認しよう。

旧打法  新打法
スイングのメインエンジン 体重移動を使う 脚筋力を使う
ステップの様式 大きくステップする 小さなストライドで打つ
センターカメラから見たときの上体の回転角度 上体が水平に近い角度で回転する 上体がホームベース側に前傾する
タイミングの合わせ方 「1、2〜の、3」という長い間合いで打つ 「1っ、2、3」という短い間合いで打つ
スイングのイメージ 腕の力を抜き、「引き手を使ってバットを引っ張り出す」ようなイメージで振る 「押し手側を使って身体の回転をそのままバットに伝え」て振る
頭の位置 頭が両足の中間よりも捕手寄りに位置する 頭が両足の中央に位置する

 

以下、各項目について簡単に説明を加える。

 

旧打法:体重移動を使ってスイングする → 新打法:脚筋力を使ってスイングする

旧打法(日本打法)では、「後ろ足から前足へと体重を移し替える=体重移動する」ことでスイングする。

勢いを付けた水入りのコップを急停止させると中身がこぼれるのと似ている。

後ろ足から前足へと体重を移し替えることによって、身体の回転を起こすのである。

 

それに対して、新打法(メジャー打法)では、「脚の筋力」を有効活用する。

竹とんぼに対して互い違いに力をかけると回転し始めるのと似ている。

身体に対して互い違いに力をかける(←脚の筋力)ことで、身体の回転を起こすわけだ。

 

旧打法:大きくステップする → 新打法:小さなストライドで打つ

旧打法においては、体重移動によって身体の回転を起こす…と書きましたが、

それに付随して、ステップ幅も大きくなります。

 

助走を大きく付けてから、その助走の勢いを使って打つ。

後ろ足荷重から前足荷重へ。

そんなイメージですね。

 

それに対して、新打法の下半身の使い方は「ステップ」というよりも「ストライド」という語のほうが適切かもしれません。

最初から比較的スタンスを広くとっておいて、足をその場で上げて下ろして打つ。

助走を小さくするぶん、脚でしっかりと地面を押して(加重して)打つ。

そんなイメージです。

 

ただし、最近はMLBでも、投手の球速が向上して「ホームランか、三振か」という結果になりつつあることもあって、

多少の確実性の低下は覚悟のうえで、あえて助走を大きく取って「当たった時に確実に強い当たりになるように」スイングする打者も増えています。

 

旧打法:上体が水平に近い角度で回転する → 新打法:上体がホームベース側に前傾する

旧打法では、センターカメラから見たときの上半身の回転面が水平に近くなります。

 

それに対して、新打法では上半身の回転面がホームベース側に傾きます。

上半身の前傾、という表現がよくされます。

https://twitter.com/gaora_fighters/status/1111614837262422016?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1111614837262422016&ref_url=http%3A%2F%2Fmetoo.seesaa.net%2Farticle%2F464891798.html

 

旧打法:「1、2〜の、3」という長い間合いで打つ → 新打法:「1っ、2、3」という短い間合いで打つ

旧打法のスイングは、「1、2~のっ、3」というリズムです。

「タメを作って打つ」とか「前足でタイミングをとる」とよく表現されます。

 

それに対して、新打法では「1っ、2、3」というシンプルなリズムで打ちます。

 

旧打法:腕の力を抜き、「引き手を使ってバットを引っ張り出す」ようなイメージで振る → 新打法:「押し手側を使って身体の回転をそのままバットに伝え」て振る

同じ「一本足打法でフルスイングする左打者」でも、門田さんと柳田選手とでは「押し手側の半身の使い方」が異なります。

 

旧打法の例としては、ご存知不惑の大砲・門田さん。

腕の力を抜いた状態で身体を回転させると、腕とバットは勝手に「振られ」ます。

でんでん太鼓のイメージです。

 

新打法の例としては、柳田選手。

「押し手を使って、身体の回転をバットに伝える」ことによってスイングします。

 

旧打法:頭が捕手寄りに位置する → 新打法:頭が両足の中央に位置する

旧打法と新打法とでは、「前足のかかとが接地した瞬間(=Launch Position)の、頭の位置」が違います。

比べてみるとこんな感じ。

旧打法と新打法、技術的に優れているのは?

基本的には新打法のほうが有利である。

 

打球速度と飛距離:新打法の勝ち

門田さんや中西太さんの逸話で「空振りの音が聞こえて投手が震え上がった」というものがあるが、

旧打法では、「引き手を使ってバットのヘッドを走らせる」ので、ヘッドスピードは大きくなる。

素振りで「ブン!」と良い音を出そうとすると、自然とそういうスイングになる。

それに対して、メジャーリーガーはそもそも日本人打者のように素振りをやらないし、良い音が鳴るスイングでもない。

 

旧打法と新打法とで比べてみると、実は、旧打法の方が「ヘッドスピード」は出る。

その理由は以下の図の通りである。

引き手を使うと、バットのヘッド部分の動きが大きくなる。

新打法では押し手を使うが、押し手を使ってスイングすると、バットそのものが平行移動するような感じになる。

 

だから、「ヘッド」スピードは、旧打法のほうが出やすい。

しかし、それにも関わらず、打球の飛距離・打球速度は「新打法」のほうが大きくなる。

 

なぜなら、ボールを飛ばすために必要なのは

「ヘッドの先が動く速度」

よりも、

「バットの重心が投手方向へと出ていく速度」

だからである。

 

バリー・ボンズ選手のスイングを見てみるとよくわかる。

バリー・ボンズ選手の「バットのヘッド部分が動くスピード」は、実はそれほど速くない。

それどころか、メジャーリーガーの中ではかなり遅い部類に入る。

 

一説によると、ボンズ選手の「ヘッド」スピードは118km/h…とのことだ。

日本ならシニアの強打者でもそのくらいの「ヘッド」スピードは出る。

 

 

実は、ボールを遠くに飛ばすには「ヘッドの先っちょが動くスピード」ではなく、「<バットの重心>が投手方向へと出ていく速度」のほうが大切なのだ。

そもそも、バットというのは構造的に、「ヘッドが走れば走るほど ⇔ ヘッドよりも手元にある部分は走らなくなる」ものなのである。

「ヘッドよりも手元にある部分」には、もちろん「芯」も含まれる。

 

そして、ボールの立場になってみればわかるが、ボールからすると肝心なのは

「バットの<芯>部分が、自分に対してどれだけの速度でぶつかってくるか」

である。

 

ボールからすると、ヘッドが走っていようがいなかろうが関係ない。

自分がぶつかる「芯」が、自分に対してどれだけの速度(と質量)でぶつかってくるか、だけが問題なのである

 

ボールに対してバットの「芯」の部分の速度が高くなれば、打球の初速度も上がる。

ボールに対してバットの「芯」の部分の速度が低くなれば、打球の初速度も下がる。

そして、バットの構造的に、「ヘッド」を走らせようとすればするほど、「芯」の速度は遅くなる。

 

これが、素振りで良い音を鳴らせないメジャーリーガーたちが、素振りではるかに良い音を鳴らす日本人打者よりも遠くに、強い打球を打てるカラクリだ。

 

そして、「<バットの重心>が投手方向へと出ていく速度」が最大化されるのは、

「引き手を使って<ヘッド>を走らせる」旧打法ではなく、

「押し手を使って<バットの重心が投手方向へと進んでいく速度>を高める」新打法のほう

なのである。

 

ミートポイントの位置と幅:新打法のほうが捕手寄りで、前後に広い

旧打法は基本的に「前捌き」かつ「インパクトゾーンの前後幅が狭い」ものである。

それに対して、新打法は「前でも後ろでも打てる」かつ「インパクトゾーンの前後幅が広い」ものだ。

 

映像で比べてみるとわかりやすい。

 

特に、旧打法で逆方向へと放り込むのは至難の技だ。

「瞬間的にスイングの方向を逆方向へと向け」ないと、逆方向に強く打ち返すことはできない。

落合さんや清原さんのような、よほど引き手側をうまく使える打者でないとまず不可能な技である。

 

習得の難易度:新打法のほうが習得が容易

旧打法をモノにする主な方法は「ひたすら素振りに励む」ことだ。

 

腕の力を抜き、身体の回転によってバットが振られる感覚を掴む。

素振りで良い音が出せるかどうか、が旧打法の習熟度を測るひとつの有用なバロメーターになる。

 

実際、日本では伝統的に「輪になって集団素振り」が行われてきた。

NPBの一流選手たちも、打撃の基本練習として「素振り」を挙げている。

 

張本さんはナイトゲームが終わってから、キャバクラに繰り出す同僚たちを尻目に、暗闇の部屋のなかでの毎日300本の素振りを欠かさなかった。

野村克也さんや門田さんや王さん、榎本喜八さんや松井選手といった超一流打者たちも、「素振りの虫」として有名だった。

 

ひたすら振って振って振りまくって、ようやく神髄を掴めるもの。

それが「旧打法」の性質である。

 

 

それに比べると、新打法は拍子抜けするほど習得が容易だ。

新打法が浸透している(そもそもあちらでは「新」ですらなく、ただ単に当たり前の打ち方なのだが…)アメリカや中南米では、

学童期・ジュニアカテゴリーの選手ですらしっかりとバットを振り抜くことができる。

 

新打法は、「身体の動きを覚えるための基本的な各種ドリル」に加え、

「正面ティー」「置きティー」「ハーフ打撃」を繰り返していけば、自然と習得できる。

 

習得の難易度でいえば、新打法のほうに数分の利がある。

 

筋力トレーニングがどれだけ活きるか?:新打法のほうが筋トレの成果を活かせる

旧打法では「後ろ足から前足への体重の移し替え」でスイングする。

 

つまり、旧打法は「体重さえ重ければそれで良い」という方法論だ。極端な話、脂肪を増やすだけで飛距離は伸びる。

トレーニングしなくても、ただ飯を詰め込んで太るだけで打球は飛ぶようになる。

これが旧打法の強みといえば強みなのかもしれない。

ただし、旧打法を採用する限り「トレーニングによる打球速度向上」は起きにくくなる。

 

それに対して、新打法では「トレーニングすればするだけ飛距離・打球速度が伸びる」という性質がある。

理由は簡単で、新打法では「両足の筋力」を使って身体の回転を起こすからだ。

両足の筋力を適切な方法で高めておけば、それだけ身体の回転速度が上がり、打球も飛ぶようになる。

 

新打法においては、フィジカルはウソを付かない。

それと同時に、フィジカルが無ければそれなりの打球しか行かないということでもある。

 

総合的には新打法のほうが圧倒的に有利

新打法と旧打法を様々な観点から比較してきたが、これは言ってみれば、

70年代の高度経済成長期の車と、現代の最新式ハイブリッドカーとを比較するようなものである。

加速性能・馬力・燃費・デザインの洗練度合い…どれを取っても現代の車の方が優れているに決まっているだろう。

一種のナンセンスに他ならない。

 

後出しジャンケンである新打法のほうが優れているのは当然で、そもそも、両者を比較の俎上に上げること自体が間違っている。

一応ひとつの記事にするためにわざわざ比較したわけだが、背景となっている時代・状況がまるで違うからだ。

だいたい、プロ野球のストレート平均球速が130km/h台だった時代と、NPBのファストボール平均球速が144km/h&MLBの平均球速が150km/hを超え、ツーシーム・スラッター・高速チェンジ・スプリットといった高速変化球が幅を利かせている現代野球とを十把一絡げにして論じること自体がおかしい。

 

旧打法は旧打法で、間違いなく「ひとつの時代を形作った方法論」という意味合いを持っているのであり、その意味で、旧打法は旧打法として尊重すべきなのである。

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おわりに

旧打法から新打法への移行は、間違いなく日本野球技術史に残るパラダイムシフトである。

 

特に顕著にその影響が出るのは、間違いなく高校野球だ。

 

というのも、高校野球においては既に、インターネットを介して質の良い栄養情報・トレーニング情報が浸透した結果として高校球児の体格の巨大化が進んでいることに加えて、「金属バット」という道具のアドバンテージを存分に享受できる…という特有の事情があるからだ。

現在の高校野球では、地方大会ですら平気でバックスクリーン弾が飛び出し、甲子園でも下位打線の打者が軽々とフェンスの向こうに打球を放り込んでみせる…という状況になっている。

 

ついでにいえば、筆者の実経験からすると、

旧打法から新打法へと打ち方を改造することによって、

「これまでホームランを打てなかった打者がホームランを打てるようになる」のは極めて簡単

である。これは個人単位でも、チーム単位でも同じだ。実際に私は、その実例を何度も見ているし知っている。

少なくとも、投手の最高球速を10km/h上げることに比べ、打者の飛距離を30メートル伸ばすことははるかにたやすい。旧打法から新打法に乗り換えるだけで飛距離はそれくらい簡単に伸びるのだ。本当に、「今までの打ち方は何だったのか」というくらい、簡単に伸びる。それをチーム単位で取り組めば、長打本数が倍増するとか、本塁打数が数倍になるといった劇的に思える変化は簡単に起こせる。

 

それと引き換えに、いつまでも「旧打法」や「旧戦術(=バントをひたすら多用)」を採用しているチームは、よほど良い投手(バットに当てさせないくらいの投手)を揃えていない限り、地方大会すら勝ち上がってこれなくなるだろう。

そういうチームは単純に、打力で劣り、得点効率で負け、点取り合戦に敗れる。

野球のゲームとしての本質は「相手よりも一点でも多く得点した方が勝つゲーム」であり、バントを決めた回数や挨拶の作法やカバンの揃え方で勝敗が決するものではない。新打法へと乗り換える重要性は、「長打力がどれほど得点の増加に直結するか」を考えてみればわかる話だし、もともと高校野球には「球がそんなに速くなくて、コントロールもまずまず=ストライクゾーンの甘いところに球が集まる投手」が多いのである。したがって、旧打法を採用しているチーム・打者は圧倒的なディスアドバンテージを背負って戦うことになる。

 

高校野球関係者の方がいらっしゃれば、ぜひこの機会に「新打法」への乗り換えを検討していただきたいと思う。御校の競技成績向上に資するのみならず、巡り巡っては日本の野球競技力向上にもつながることである。

 

最後に手前味噌ながら、私の仕事として「新打法を習得するためのマニュアル」と、「旧打法と新打法を比較し、両者よりも高い次元にある打法を提案した書籍」とを刊行済みである。いま見返すと多少内容が古くなっていると感じるところもあるが、大筋は変わっていない。こちらも参考になれば幸いである。

 

 

 

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