「硬い筋肉」「しなやかな筋肉」という表現はよく聞くけど、具体的にどういうことなんだろう?

広告




目次

「硬い筋肉」「しなやかな筋肉」という表現はよく聞くけど、具体的にどういうことなんだろう?

硬い柔らかいってイメージだけで言ってないか? 言葉だけで満足してないか?

ふと疑問に思ったのですが、

野球界やトレーニング業界でよく言われる

「硬い筋肉」「しなやかな筋肉」

とは具体的にどういうことなんでしょうか?

 

一度は聞いたことがありますよね。

「野球で大切なのはしなやかな筋肉だ」

「ウェイトをやると筋肉は大きくなるが、その代わり筋肉が硬くなってしまいケガをする」

「ボディビルダーみたいな硬い筋肉は野球には要らない」

「力士は筋肉が柔らかい」

「徹底的なランニングとストレッチによって柔軟で強靭な下半身を作り上げたからプロで長くやれた」

…など。

 

どうも日本語というのはかなり文脈依存度が高い言語らしく、

なんとなくのイメージで「筋肉が硬い」「筋肉がしなやかだ」と言っておきさえすれば、

それで伝わった気になる・理解した気になる・表現できた気になる・説明した気になるようです。

 

そもそも、野球はどう考えても「末端加速系の競技」かつ「ハイパワー系の競技」です。

だからこそ筋肉が硬いとか柔らかいみたいな話が問題になってくるのであって、

そもそも筋肉が硬かろうが柔らかろうがさほど競技成績には響いてこないような競技、

例えば、ボディビルの選手やウェイトリフティングの選手にはあまり縁のない(重要ではない)概念です。

 

今回の記事では、この『野球はどう考えても「末端加速系の競技」かつ「ハイパワー系の競技」』だという事情を押さえたうえで、

自分なりに「硬い筋肉、しなやかな筋肉ってこういうことなんじゃないか」と思ったところを書きます。

野球における体力トレーニングの基礎理論

野球における体力トレーニングの基礎理論

中垣 征一郎
2,376円(09/19 19:17時点)
発売日: 2018/04/20
Amazonの情報を掲載しています

 

「硬い筋肉」「しなやかな筋肉」の条件

①引き伸ばすのに比較的大きな力を要する(大きな抵抗を感じる)筋肉のこと

まずは一つ目の条件。

硬いとかしなやかというのを誰もが納得する形で、漏れなく完全に定義しきることは不可能だと思うので、とりあえずこういう条件が優先されるよねという感じで考えました。

すると、こういう条件は間違いなく入ってきそうですよね。

 

硬い筋肉とは、引き伸ばすのに比較的大きな力を要する(大きな抵抗を感じる)筋肉のことである

しなやかな筋肉とは、引き伸ばすのに比較的小さな力で済む(抵抗が小さく感じる)筋肉のことである

 

引き伸ばそうとする力に応じて材料が発揮する力を、材料力学では「引張応力」と言い、これは「引っ張って伸ばすために、面積当たりでどれだけ大きな力を要するか」です。

引張応力を方程式に起こすと「ρ=F/A」で、これは「引張応力=力の大きさ 割る 断面積」という意味になります。

つまり、硬い筋肉とは引張応力が大きい筋肉のことを言い、しなやかな筋肉とは引張応力が小さい筋肉のことを言う…ということです。

 

これを人間の感覚という抽象度で表現すると「引き伸ばすのに大きな抵抗を感じるような筋肉は、硬いといえる」となります。

こっちのほうが直感的に理解できて明快ですね。

 

なお、力というのは古典物理の範疇では明確に定義されていて、

「1kgの質量を持つ物体に1m/s^2の加速度を生じさせる力の大きさを、1N(ニュートン)と定める」

とはっきりした形になっています。こういうあまり直感的ではない定義は、理解しづらいという欠点はあるものの、完全に数値化して機械で計算できたり測定できたりする(計算機と相性が良い)ので非常に便利です。

 

②筋繊維が走行する方向、あるいは筋腱複合体の直列弾性要素が整列する方向への物理的な可動域が小さくなっているような筋肉のこと

次は「物理的な可動域」の話です。

紡錘状筋の場合は「筋繊維が走行する方向への物理的な可動域が小さくなっているような筋肉のこと」を、硬い筋肉という

紡錘状筋じゃないもの(羽状筋など、筋繊維の走行に角度が付いているもの)の場合は「筋腱複合体全体向いている方向への物理的な可動域が小さくなっているような筋肉のこと」を、硬い筋肉という

紡錘状筋の場合は「筋繊維が走行する方向への物理的な可動域が大きい筋肉のこと」を、しなやかな筋肉という

紡錘状筋じゃないもの(羽状筋など、筋繊維の走行に角度が付いているもの)の場合は「筋腱複合体全体が向いている方向への物理的な可動域が大きい筋肉のこと」を、しなやかな筋肉という

勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇 (集英社文庫)

勝ち過ぎた監督 駒大苫小牧 幻の三連覇 (集英社文庫)

中村 計
907円(09/19 07:58時点)
発売日: 2018/07/20
Amazonの情報を掲載しています

 

③「弛緩ー伸張ー短縮サイクルによる速度の獲得効率」が悪くなっている状態のこと

筋肉を「ゆるめた状態から引っ張ってパッと離すと速度を高めつつ縮むバネのようなもの」とみなすと、こういう条件も入りそうです。

 

「弛緩ー伸張ー短縮サイクルによる速度の獲得効率」が低くなっている状態を、「筋肉が硬い」と表現する

「弛緩ー伸張ー短縮サイクルによる速度の獲得効率」が高くなっている状態を、「筋肉が硬い」と表現する

 

詳しく考えてみると、この定義には

A.「<筋腱複合体の直列弾性要素による弾性エネルギーの蓄積→放出>という筋肉が本来備えている仕組みを活かし切れていない…筋肉と腱をバネのように使えていない」

B.「短縮に転じる際のRFD(力の立ち上がり率)が低い…切り返しが弱い」

C.「負荷と速度がトレードオフになっていない…筋肉が短縮しようとしているのに負荷が抜けなければ、短縮速度の獲得はスムーズにはいかない」

このあたりの条件も入っています。

 

よく「力のかけ方を間違えると硬くなる」とか「重いものをゆっくり挙げるトレーニングは意味がない」とか言われるのはこのためです。ちなみに、開脚・股割り系の静的ストレッチは「筋肉・腱の長さを感知するセンサーである筋紡錘やゴルジ腱器官をだます」という要素が入っており、1.や2.の観点からは良いのですが、筋肉にとって最も合理的な活動方式である「弛緩ー伸張ー短縮サイクルを活かす」「筋腱複合体の直列弾性要素による弾性エネルギーの蓄積→放出」という観点からすると悪手です。開脚・股割りそのものの良し悪しの話ではなく、実際にはケースバイケースになってくると思います。

 

④血流が悪い・酸素供給量が低くなっており、筋肉が本来発揮できるはずの能力を発揮できないでいること

人間は四足歩行から直立二足歩行への移行によって支持基底面(身体を支える足底のスペースの広さ)が四足歩行時代よりもかなり狭くなってしまい、

そのため、地球の重力環境下では全身の筋肉が常に緊張にさらされることになりやすいものです。

 

ヒトの場合、例えば三角筋や僧帽筋といった「重たいものをぶら下げ続ける必要がある筋肉」は構造的にも緊張しやすくなります。

重力環境下で常に働き続ける必要があるような筋肉が緊張する→筋肉が本来持っているポンプ作用(筋肉の伸び縮みによって血流が促進される)のはたらきが弱くなる→血流が悪くなる・酸素供給量が低くなる→硬くなる、動かなくなる

というロジックです。

 

だからこそ人間は入念なウォーミングアップをするのですが、これに関しては「でも、トラやピューマは、アップも何もしないのに肉離れしないよね」という話です。

 

さらにいえば、常に人間の身体各部に作用し続ける重力だけでなく、

「慣性=質量のある物体がその運動の様子を変えたがらない性質のこと」も考慮しなければなりません。

 

この「重力・慣性が常に働き続ける」という物理的条件の中で運動しなければいけないのですから、

「ヒトの筋肉というものは本来、極めて緊張しやすい・硬くなりやすいものなのだ」と言えます。

打撃の神髄 榎本喜八伝 (講談社+α文庫)

打撃の神髄 榎本喜八伝 (講談社+α文庫)

松井 浩
886円(09/19 14:31時点)
発売日: 2016/02/19
Amazonの情報を掲載しています

⑤神経系による入力の様相がおかしい筋肉のこと

筋肉が活動するためには、脳あるいは脊髄といった中枢神経系統からの神経信号の入力が必要です(というよりは、「活動せよ!」という情報伝達が物理次元に電気信号として表れます)。

 

ということは、「常に緊張している状態の筋肉」は、もちろん、「硬い筋肉」になります。肩こりなんかはこれです。

本来であれば「リラックスした、弛緩した状態の筋肉」に指令を行かせたいのですが、「すでにかなり緊張している状態の筋肉」に信号を伝えても、反応は芳しくありません。

垂直跳びで、リラックスしておいてから跳ぶのと、最初から全身を緊張させておいて跳ぶのとでは、到達高さも変わってくるはずです。

 

前項と関連しますが、ただでさえ物理的条件からして人間の筋肉は緊張しやすいのに加えて、

その緊張がさらに血流悪化・酸素欠乏を招いてより一層硬さが増し、神経系からの入力もフィードバックの様相も悪化させる…という負のスパイラルがはたらいているわけです。

 

おわりに:じゃあどうやったら「硬い筋肉」になり、どうやったら「しなやかな筋肉」になるのか?

以上の負のループを根本的に解消するには、「物理的条件を活かして、逆に、筋肉の緊張を取り除いてあげるように動く&鍛える方法論」の発明が必要となります。

「えっ、そんなことができるの?」と思われるでしょうが、上手くやればできます。個人的には初動負荷理論の主眼はまさにそこにあると思っています。初動負荷マシンや、垂直軸の形成やビモロシューズ、上半身・下半身のかわし動作などはそのための概念・ツールです。

 

以上の話は、野球選手に必要なトレーニング方法とは何か、野球の合理的な投球動作・走動作・打動作とはどのようなものか、という話にもなってきます。これについては次回以降書きます。

 

では、また今度!

すべてを可能にする数学脳のつくり方

すべてを可能にする数学脳のつくり方

苫米地 英人
5,430円(09/20 04:41時点)
発売日: 2016/04/22
Amazonの情報を掲載しています
初動負荷理論による野球トレーニング革命

初動負荷理論による野球トレーニング革命

小山 裕史
発売日: 1999/12/01
Amazonの情報を掲載しています
「奇跡」のトレーニング

「奇跡」のトレーニング

小山 裕史
1,620円(09/20 04:41時点)
発売日: 2004/01/11
Amazonの情報を掲載しています
小山裕史のウォーキング革命~初動負荷理論で考える歩き方と靴

小山裕史のウォーキング革命~初動負荷理論で考える歩き方と靴

小山 裕史
1,620円(09/20 04:41時点)
発売日: 2008/02/21
Amazonの情報を掲載しています

広告

スポンサーリンク
スポンサーリンク