【野球】散々叩かれている「走り込み」を科学的に全力で肯定してみた

   

こんにちは、栗栖鳥太郎(@Kuritoritarou)です。

今回は、息抜きを兼ねて野球の記事を書いてみます。

「走り込みは野球に必要か不要か」というのは、ダルビッシュ有投手の例のツイートを発端にして、ずっと論争が続いています。

論争自体はいいと思うのですが、気になるのは

「あれ、野球界の人って、こんなにいい加減ななものの考え方しかしてなかったの?」ということ。

走り込み賛成派の人だけでなく、走り込み反対派の人も意外と視野が狭いというか……何というか、ものすごくキツい言い方をすると「頭が悪い」考え方をされているようです。

そこで今回は私が、劣勢になっている「走り込み賛成派」の肩を持ってみます。

【野球】散々叩かれている「走り込み」を科学的に全力で肯定してみた

「走り込み」には、きちんとした意味がある

まずは結論から

野球関係者の人はけっこうせっかちな人が多い印象なので、先に結論を出してしまいます。

私が今回言いたいのは・・・

「走り込み」は、理屈で考えると、野球選手にとっては間違いなく「有用」である。

ただし、

・連続して行う場合は「20-30分程度」までに留めるべき。昭和みたいに二時間とか三時間とかやるとむしろ有害

・コンクリ・アスファルトの上ではなく、芝生や土の上で走るべき

・ランメニューは「長距離」と「超短距離」に限定すべき

という条件が付く

ということです。

 

ランニングの隠れた効果:BDNFが分泌され、頭と運動神経が良くなる

ものすごく単純化した言い方をすると、

ランニングを一日20~30分程度継続することによって、「頭が良くなる」+「運動神経が良くなる」という効果があります。

それは、有酸素運動をすると「脳由来神経栄養因子(BDNF)」が放出されるからです。

BDNFが脳内で何をするかといえば、「新しい神経細胞=ニューロンを作るためにはたらく」のです。

神経細胞の発火の仕方いかんで、私たちの動作や思考は変わります。

 

要するに、

20-30分程度のランニングをする → BDNFが出て、脳の神経細胞が新生されやすくなる → 頭が良くなる&運動神経が良くなるための準備が整う

という論理ですね。

 

頭が良くなるのはなぜかというと、「学習とは神経細胞=ニューロン同士の結合を強化すること」だから。(野球以外のところでは、ランニング後に勉強すると内容が頭に入りやすくなります)

 

また、ランニング後に「投げる・打つといった動作の改善」をすると、新しい動作を神経回路が覚え込みやすくなります。

なぜなら、野球の動作を記憶しているのは脳だからです。ある動作をしようとするとき、脳の中の神経細胞が一定のルートで発火します。一定のルートで発火するからこそ、安定した動作が可能になります。このルートが邪魔されるとイップスやスランプになります。

ですから順番としては、「ランニング→軽いアップ→すぐに素振りやシャドーピッチ・キャッチボールなど」がおすすめです。

 

運動とBDNFについての詳しい情報は↓の書籍をご覧ください。研究情報などが載っています。

「バランス能力」「身体をコントロールする力」「重心移動の技能」が、ランニングでかなり磨かれる

最近よく、「バランス能力を鍛えるために、不安定なバランスディスクやバランスボールの上に乗っている選手」を目にしますが、正直それをやる時間を使ってランニングをした方が賢明です。

ランニングの方がよほどバランス能力を鍛える役に立ちます。

 

具体的には、

ランニングをすることによって、

①「足の裏などを使った重心のコントロール技術」

②「身体を上手にコントロールしてぶらさない技術」

③「重心移動をうまく行う技術」

が着実に磨かれていきます。どれも野球には不可欠な能力です。

 

たとえば、足の裏の感覚が鈍い人・バランス感覚の鈍い人・重心移動がうまくできない人が投手をやろうとしても、球速は出ないしコントロールも悪いという結果になるはずです。

①、②、③を十分にできる選手でないと、「マウンドという傾斜のある場所で上手に身体をコントロールして、重心移動で生まれたパワーを使って投げる」という複雑な動作はおぼつかないのです。

昔から「投手はとりあえず走れ!」と言われてきたのはこれが理由でしょう。

 

ついでにいえば、コンクリートやアスファルトの地面は足腰に負担がかかりやすい(特にロスの大きいフォームの人ほど)ので、「芝の上」あるいは「土の上」を走るほうが良いでしょう。

理想を言えば、ゴルフ場やクロスカントリーのコース、あるいは山中の自然道を20~30分走るのが最高です。バランス能力や重心移動能力を、足腰に負担をかけずに磨くことが可能ですから。

 

余談ですが、現在私が所属している(現在は執筆に専念するため休部中ですが…)北海道大学硬式野球部では、ランメニューがほぼ皆無です。冬季に至っては、「全力でダッシュする機会そのものがほとんどない」のです。

休日の全体練習でも「足を揃えてポール間1往復のランニング」と「塁間程度のダッシュ4本」くらいで終わります。平日練習のときなどは全体でアップしないので、ダッシュする人の方が少ないという状況です。

つまり、「走り込みしない野球部」なのです。

 

その結果どうなっているかというと……

「投手の球速が伸びないorむしろ遅くなる、そしてケガ人だらけ」

「野手は足が遅くなり、ケガ人が多い」

という状況です。これは部員に尋ねてみればわかることです。否定する人はいないでしょう。

 

もちろん、これをもって「ランニングしない→ケガをする」と言ってしまうのは乱暴ですが、

・高校まではケガ知らずだった野手でも、北大に入ってから急にケガをするようになる

・入学当時より球が遅くなるピッチャーが大半である

という傾向が明らかにある以上、「ランニングをしないからケガしてるんじゃないの?」「ランニングまったくしないから動きが悪くなってるんじゃないの?」と言いたくなります。おそらく私は来年の3月ごろに部に戻る(はずだ)と思いますので、その際にはぜひランメニューを練習に組み入れるように説得してみようと思っています。

ランニングは「長距離」「超短距離」を目的別に使い分けるべき

当然ですが、「二時間とか三時間とかずっと走り込む」のはまったく無意味です。

私は走り込みには賛成派ですが、昭和のような走り込みには賛成しません。

コスパからしても、実際の効果からしても。

 

昭和の選手は、本当によく走っていたようです。

金田正一氏然り、落合博満氏然り。プロ野球の伝説の打撃コーチと呼ばれた高畠導宏氏も「基本はランニングと遠投」と言っていたようですから。

 

昭和を代表するスラッガーの一人である門田博光氏などは、著書の中でこう述べています。

22歳までやり続けたときにどうなっているかわからないが、とにかくやってやってやりぬいてみようという考え方だった。

それには、走ることを続けることと、ひたすらバットスイングをすることしかなかった。

(門田博光の本塁打一閃 より)

おそらく、走ることによって「新しい動きを習得しやすい状態」になり(前述のBDNFの効果)、

そこですかさずバットスイングを続けたことによって、バッティングのセンスそのものが磨かれたのでしょう。もともと門田氏は「プロ注目の怪物!」というタイプではありませんでした。天理高校入学時は遠投で「一塁からホームベースまでボールが届かない」ほどだったそうですから、決して野球センス抜群ではなかったのです。

その状態からプロ歴代三位のHR数を打てたというのは、「ランニングしてからの真剣な素振り」が日課になっていたからだと思います。

 

ただ、門田氏は野球人生を通じて「ケガ」に悩まされ続けました。

アキレス腱をはじめ、ブーマーとのハイタッチ事件、足首の怪我など。

晩年は、「ヒザの皿がズレる」ことが慢性化していたそうです。

長時間ランニングし続けたことがその原因ではないかと思います。

ランニングが長時間になると、

(特にロスの多いフォームの人ほど)ヒザ・足首・腰・股関節への負担が増えますし、

「野球に必要な筋肉が落ちていく」という現象も招きます。

 

実際、あの金本選手が通っていたジム・トレーニングクラブアスリートの代表である平岡さんはこんなコメントをしています。

 昨年秋季リーグで7連覇目を狙っていたが、その可能性が消滅した段階で、長い歴史のある大学野球の象徴的存在の亜細亜大学にとっては、革新的いや言わば実験的とも言える初の取組をスタートさせた。

と言うのも依頼を受けた私の要望は「本格的なウエイトトレーニングを始めるのであれば、トレーニングとしてのランニングを止めてもらえないか」 と言うものであったからだ。それに対しての監督の返事は「分かりました」。柔軟性のある思考の持ち主であることが名将たる所以だと感心したものであった。

未経験者には理解出来ないが、追い込んだトレーニングは筋破壊作業となる為、いわゆる走り込みトレーニングとの効果的な両立は不可能だ。(平岡代表の日記より)

「ランニングをしすぎることによってエネルギーが不足して筋肉量が減る」とか

「ランニングをしすぎると遅筋が優位になる」とか色々理由はありますが、

ランニングの効果を十分享受しつつ、ウェイトトレーニング・技術練習との相乗効果を期待するには

「毎日20~30分程度のランニング」にとどめておくのが賢い選択でしょう。

②競技特性を考慮して、「長距離」「超短距離」を使い分けるべき

もちろん、野球はマラソンではありません。

よく走り込み反対派の人が「走り込みで足腰が強くなるというなら、マラソンランナーが最強じゃないか!」と言いますが、それもまた極端な思考です。

あくまでも、「野球の競技特性に合ったランニングのメニューを組むこと」が大切なのですから。

 

20~30分程度のランニングも、野球に不可欠な「動作の巧緻性を上げるトレーニング」「身体を思い通りに動かす訓練」になるという意味で、野球の競技特性に適しています。

 

さらに、20~30分程度のランニングに加えて、

野球では「超短距離(30m以下)のスピード」も重要になります。

塁間の距離、内野の守備範囲、外野の守備範囲など、野球に必要なのは「30m以下という超短距離走のスピード」です。

 

20~30分程度のランニングにプラスして、

ラダー、塁間ダッシュ、SAQ、ストライド走といった種目をバランスよく取り入れて

「一瞬でトップスピードに乗る練習」「トップスピードそのものを上げる訓練」も積み重ねるべきです。

クレアチン等を適宜補給しつつ、MAXのスピードを高めていきましょう。

まとめ

……というわけで、私の「走り込み」に関する結論は以下の通りです。

「走り込み」は、理屈で考えると、野球選手にとっては間違いなく「有用」である。

ただし、

・連続して行う場合は「20-30分程度」までに留めるべき。昭和みたいに二時間とか三時間とかやるとむしろ有害

・ランニングはコンクリ・アスファルトの上ではなく、芝生や土の上で走るべき

・ランメニューは「長距離」と「超短距離」に限定すべき

 

……そもそも、なぜ「走り込み必要派」vs「走り込みいらない派」の論争が続くのか?

それは、野球界には「論理的に考える力のある人」「バランスのよい考え方をする人」が少ないからでしょう。

端的に言えば、「頭が悪いから」以外の理由はありません。

きちんと考えてやれば、「走り込みをしまくる」のも「走り込みをまったくしない」のも同じようにばかばかしいということがわかるはずです。

 

知識もなく、経験だけが頼りの人が多すぎるというのが現状です。

柔軟な思考・バランスの良い思考ができる人が少ないから、すぐ極論に振れるし、議論にならないのです。日本の野球界がメジャーに遅れをとりまくっているのはそれが原因でしょう。

頭が悪いままでは、勝てるわけがない。

 

たとえば、ロクに栄養についての勉強もしないところほど、「ウチのチームは一日に白米9合食べます!」みたいな意味のわからない自慢をします。炭水化物をそこまで摂る意味はまったくないのに。

いまでこそ

「昭和の野球ってヤバすぎだろ、走り込み・水飲むな・うさぎ跳び・千本ノックとか何の意味があったんだ」

と批判できますが、そのうち今度はこう言われると思います。

「平成の野球ってヤバすぎだろ、あんなに白米食って筋肉つけまくって何の意味があったんだ」と。

 

私は「日本人の頭を良くする」という目的のもとにこのブログを書いているのですが、

野球界の人々ももっと頭を使ってほしいと思います。

体育会系の人々が賢くなれば、日本はもっと元気になるはずです。

 

体育会系の人、頑張りましょう。

 

以上、栗栖鳥太郎(@Kuritoritarou)がお送りしました。

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