【日本屈指のエンターテインメント】「高校野球は、すごい!」と断言できる7つの理由

   

こんにちは、栗栖鳥太郎です。

最近ずっと、「高校野球って、プロ野球とも大学野球とも違った独特の面白さがあるよなあ。なんでだろう?」と考え続けていました。

よく、小学校時代の夏休みを思い出します。

ひまになったらとりあえずテレビをつける。

だいたい甲子園をやっているので、スイカをかじりながら見る。

「とりあえず甲子園でも見るか」という思考回路そのものが不思議です。

なんでこれほどまでに高校野球というのは「定番」になっているのか?

いろいろ思考した結果、「高校野球がすごいのは、だいたいこの7つの理由によるよなあ」というのが見えてきたので、記事として書いてみます。

【日本屈指のエンターテインメント】「高校野球は、すごい!」と断言できる7つの理由

なぜ高校野球にはあれほどの魔力があるのか?

①高校野球には「感情を揺さぶるテンプレート」が山ほど登場する

私が高校野球関連のコンテンツを見ていて「すごいなぁ」と思うのは、

「高校野球には、人間の感情を動かすテンプレートがたくさん用意されている」ことです。

 

たとえば「盛り上がるテンプレ」というのは、具体的にはこんな感じのもの。

・弱小校が強豪校を倒す

・強豪校同士が死闘を演じる

・引き分け再試合

・終盤に逆転する

・点差をひっくり返す

・劇的なサヨナラ勝ち

・ボークやエラーでゲームセット

こういう展開になれば、球場は否応なしに盛り上がります。

 

「ドカベン」だろうが「MAJOR」だろうが「砂の栄冠」だろうが「ダイヤのA」だろうが、

高校野球を題材にした作品ではほとんど↑の展開の使いまわしです。

それだけ使い勝手がいいし、観ている人の心を揺さぶるということですね。

 

また、球児たちの置かれたシチュエーションもドラマ性に富んでいます。

・「最後の夏、悔いのない戦いをしよう」という決意

・ケガをした同級生のために

・育ててくれたお母さんのために

・憧れの先輩と、一緒の舞台へ

・地域のみんなの夢を託されて

・幼馴染との約束を果たすために

・ライバルに勝つために

・今年で引退する監督のために

・今は亡きあの人のために

上の例は全部「熱闘甲子園でやってそうなもの」を私が適当に考えたものですが、たぶん全部実際に放送されているはずです。

 

実は、人間の基本的な感情を揺さぶるパターンというのは実はそんなに多くないと言われています。

世の中に数多くあるエンターテインメントのなかでも、高校野球はそのパターンをかなり網羅している方なのでしょう。だからこそ、ワンパターンに見えないし、観ていて飽きが来ない。バリエーションが豊富なので、いくらでも楽しめる。

 

「感情を揺さぶるテンプレートが山ほど用意されている」という点で、高校野球のエンターテインメントとしての質は最高レベルです。

 

②「地域性」と「全国映像中継」の絶妙なマッチング

多くの人は、自分の地元のチームを応援します。

だいたい北海道の人なら北海道のチームを応援しますし、和歌山の人なら和歌山のチームを、

沖縄の人なら沖縄のチームを応援します。

とりあえず、たいていの人は「地元のチームがどこまで勝ち進めるか」がかなり気になります。

これが、「高校野球の地域性」とも呼べるものです。

 

そして、甲子園は全試合がもれなくテレビ中継されます。

ということは、地元のチームの試合がテレビ中継されるということは、全国の視聴者数千万人に自分の地元チームが紹介されることなるわけです。

「地元のチームが全国中継で紹介される」

「ふだん見かけるあの子が全国ネットに登場する」

「いつも近所を走っていたお兄さんがテレビの画面に映る」

「自分の友達が甲子園に出ている」

という経験は、人間を興奮させます。

 

無名のチーム・無名の選手であっても、マスコミに取り上げられれば一躍時の人になれる。

まさに日本版アメリカンドリーム、「Dream come true」です。

「地元のチームが甲子園で健闘した」というのは、

戦国時代でいえば、自分のところの領主(大名)が関ケ原で大活躍した、というのと同じくらい誇れることなのです。

 

甲子園では、全国各地のチームが地元の代表として戦う様子が全国にテレビ中継される。

「身近にいたあの人(たち)が、全国の舞台で戦っている」という、地域性と全国的テレビ放送網の融合。「おらが町の子たちががんばっている!」という思いを47都道府県の人々が共有するのは、テレビというメディアがなければ不可能だったでしょう。

 

③スポーツ系の人間特有のスター性

スポーツがうまい人って、「身体の動きのしなやかさ」「動作の美しさ・素早さ・力強さ」があるんです。甲子園に出るような高校球児たちは野球が上手ですから、動作の巧みさ・力強さで観客や視聴者を魅了します。

 

そもそも、なぜ人間は素晴らしい動作に魅了されるのか?

おそらく、人間(特に女性)は進化の過程で、「身体を動かすのが上手=スポーツがうまい人」を好むという性質を得たのでしょう。特に原始時代はスポーツ(狩り)がうまい人は生存に有利だったと思われるからです。

ついでにいえば、スポーツの得意な人はだいたい「栄養状態が良好」なものです。同年代の栄養状態が貧相なヒョロヒョロな男に比べると、高校球児はかなり体格も良い(スリム系でも筋肉はある)ので、下世話な言い方をすると「栄養状態の悪い男より、栄養状態の良い男がいい」。

 

突出して野球の上手い高校球児にやけにファンが多いのは、そういう理由もあるのでしょう。

「スポーツが得意な人がモテる」のは、小学校時代からの掟なのです。

 

④甲子園という舞台の華やかさ・伝統の重み・イメージ

1924年に完成して以来、90年という歴史を誇る甲子園。

阪神タイガースの本拠地として、そして全国高校野球選手権大会の会場として有名なこの球場。

 

巨人OBの松井秀喜氏が、「甲子園」という球場について、こんなことを言っています。

美しい土や芝、巨大なスタンドは別格。ほかの球場と空気が違う。

米国の歴史ある球場と比較できるのは、日本では甲子園しかない。

「アルプススタンド」「銀傘」「カチ割り氷」など、甲子園独特の文化もあります。

グラウンド整備時に流れる「栄冠は君に輝く」などは格別の味わいがあるそうです。

 

芝の美しさや圧倒的なスケール感、スコアボードのデザイン、思わず持って帰りたくなる土など、「甲子園」という球場は日本に数ある球場のなかでもずば抜けて洗練された球場なのです。

もしも高校野球の全国大会の舞台が「東京ドーム」とか「札幌ドーム」だったら、これほどの人気は出なかったんじゃないかなと思います。

 

「高校野球の人気を支えている要因の一つは、甲子園という球場のすばらしさとイメージの良さである」と言っていいでしょう。

 

⑤一発勝負のトーナメント制により生まれるドラマ

甲子園という舞台には、これだけすばらしいイメージがあります。

高校野球の監督さんに「甲子園は一度出たらやめられない。もう一度行きたくなる」と言う人が多いのも当然です。

 

……ということは、そのすばらしさの分だけ、

「甲子園を途中で去ることになった(=敗退)ときのダメージ」

「甲子園に出れなかったときのダメージ」

も大きくなります。

そして、高校野球はトーナメント方式ですから、一度負けたら終わり。

敗者復活戦もありません。

 

どれだけ強いチームであっても、負ければそこで終わり。

どれだけ優勝候補と目されていても、下馬評が高くても、相手が格下であっても、一度負けたらそこでさようなら。

どれほど甲子園を目指して必死に練習してきても、たった一回負ければそこで甲子園行きの権利は失われる。

 

全国にある4000校近くの野球部のうち、甲子園に出れるのはわずか50校程度。

優勝候補はたくさんあっても、優勝するのは一校だけ。

それが、「トーナメント」です。

 

「一度負けたら終わり」という残酷で過酷で絶対的なルールのもとに行われる真剣勝負。

一試合に懸ける思いの強さが、数々の名勝負や逆転劇・悲劇といったドラマを生み出す。

「高校野球がすごい」のは、ドラマが生まれやすいトーナメントという方式を採用しているからでもあるのです。

 

⑥日本人の気質にマッチしたシステム

日本人には「無常観」があるとよく言われます。

 

高校野球はまさに、その「散るはかなさ」「諸行無常」を体現したものです。

毎年何千何万という高校球児たちが悔し涙を呑み、同じ学校であっても毎年選手の顔は入れ替わっていく。去年全国優勝した高校が、予選で姿を消す。

甲子園の連覇の最高回数は、1931-1933の中京商による「三連覇」です。

たったの、といえば失礼ですが、甲子園の夏連覇はたったの三回連続が最高回数なのです。

 

プロ野球では巨人がV9を達成していますし、大学野球でも東都の亜細亜六連覇など、リーグ戦での連覇はけっこうあります。高校野球の地方レベルでも、聖光学院の福島大会10連覇、駒大苫小牧の南北海道大会五連覇など、地方大会の連覇くらいならわりと頻繁に達成されています。

でも、甲子園の連覇は本当に難しい。

 

前年度に甲子園準優勝を果たした駒大苫小牧が、翌年の広陵戦に敗れて初戦敗退となった2007年夏の例もあります。

それだけ、甲子園というのは「諸行無常」なのです。PLでさえ廃部になるし、かつての池田高校でさえ今は当時ほどの力はありません。高校野球の入れ替わりの激しさというのは特筆すべきものがあります。

 

また、甲子園は日本の夏という季節によくマッチしています。

甲子園大会が開催されるのは、ちょうど夏休み。

みんなヒマなので、甲子園は絶好の時間つぶしになります。

・テレビをつけてNHKにチャンネルを合わせれば、たいてい高校野球の試合がやっています。家でかき氷やスイカを食べながら、ゆったりと野球観戦。

・実際に球場に行けば、「夏の暑さのなか、冷たい飲み物片手に野球観戦」というぜいたくを楽しめる。

野球は時間のかかるスポーツですが、それは「長い時間をつぶすにはもってこい」ということでもあります。

 

高校野球そのものが日本人の無常観とマッチしていること。

日本の夏という季節が、甲子園と相性抜群なこと。

これらもまた、高校野球人気を縁の下で支えているのです。

 

⑦人間の脳と身体を直接揺さぶるブラスバンドの演奏

高校野球の応援って、「現地で」聴いたことはありますか?

ブラスバンドが上手い高校・生徒の声が良く出ている高校の応援は現地で聞くと鳥肌が立つほどの迫力があります。ドン!ドン!と身体ごと持っていかれそうなあの音圧は「ナマ」でないと味わえません。

 

私の地元の北海道で言えば駒大苫小牧(駒苫は間違いなく選曲・演奏技術・音量・音質・テンポの良さで全国屈指の応援のクオリティ。漫画「砂の栄冠」でもかなり大々的に紹介されていました)や、北海、札幌日大、遠軽などが迫力のある演奏をしています。

全国区で有名なのは智弁×2、天理、大阪桐蔭、習志野、横浜、東邦、龍谷大平安あたりですかね。他にもたくさん良い演奏をする高校はありますが、このあたりが図抜けています。

 

最近はYoutubeがあるので、秀逸な応援を思う存分聴けるようになっています。

全国を飛び回って各地の応援をまとめた動画をアップロードする人も増えてきて、そういった動画の視聴回数もかなり伸びています。他にも、高校野球の定番応援歌を収録した「ブラバン!甲子園」が意外と人気を博したり、高校野球のブラスバンドを研究する人が出て来たり(梅津有希子さんなど)しています。

バレーやサッカーの応援などと違って全校応援に駆り出された経験のある人も多いでしょうから(おそらく全国で数千万人いると思われる)、潜在的には相当のニーズがあります。

 

実際、すでに「応援目当てで野球場に来るお客さん」というのがけっこういるみたいなんですよ。

私がよく動画を拝見している投稿者の方曰く、

とのこと。

(注:シェルティーズは駒大苫小牧吹奏楽局の愛称)

 

おそらく、高校野球はこれからYoutubeやSNSを媒体とした「秀逸な応援歌の拡散と感想の共有」が進むことによって、より華やかで迫力のある、観て楽しい・聴いて楽しい応援がどんどん増えていくことでしょう。

高校野球の応援がすばらしいものになればなるほど、高校野球は「球場に行ってみる価値のあるもの」になっていくはずです。

 

これはすでに起こっていることではありますが、今後は「各校の応援のオリジナル化」が進み、甲子園に出場したはいいが吹奏楽部がない高校は他校の友情応援(北海道だと2011白樺学園や2015東海大四が他校の吹部に協力してもらっていた記憶があります)を借りることになるはずです。

吹奏楽がないと、甲子園のムード・球場のムードを引き寄せることは難しいのです。東北地方のチームが実力のわりに意外と勝てない(優勝旗がなかなか白河の関を越えなかった)印象があるのはもしかすると、球場の雰囲気をこちら側に持ってきにくい「口ラッパ」がひとつの要因になっているのかもしれません(もちろんスタンドの選手たちは本気で応援しています)。

 

攻撃時に迫力のある吹奏楽の演奏がないのは、実はけっこうなハンディになっているのかも? と思います。

 

実際、智弁和歌山高校の有名な魔曲・ジョックロックや駒大苫小牧の「チャンス」などが流れると、

甲子園のムードが一気に変わり、ビッグイニングを生みやすくなります。

不思議と相手がエラーしたり、打線がつながったり、ホームランやタイムリーの出る確率が上がったり。

「強豪校ほどブラスバンドが強い」傾向があるというのは確かです。

 

もともと吹奏楽(とくにマーチング)は「軍隊の士気高揚」のために使われていただけあって、人間の本能である闘争心をかきたて、敵を圧倒し、人間の気分をハイにする効果があります。古くはトルコ軍楽隊の「ジェッディン・デデン」(Youtube)などに源流があるようです。オスマン帝国のテーマソング?であるこれが聞こえてくると、ヨーロッパの兵士たちはびびりまくって戦わずして逃げていったとか。

 

高校野球の応援でも当然、応援がすごい方が断然有利です。

吹奏楽のボリュームがあれば、実際問題として守備側の声による意思疎通が難しくなりますし、

相手投手や野手を震え上がらせるような曲を演奏すればエラー率も多少変わるはずです。

球場の雰囲気を操作することもできますし(例:2016春の光星学院-東邦)、

黄色い声援が増えれば増えるほど打席に立っている選手の集中力も上がると思われます。

 

ともかく、高校野球のすごさを支えるひとつの大きな要因、それが「ブラスバンド」「吹奏楽」にあることは間違いありません。まずは地元の「応援がすごい」と言われるチームの試合を観に行ってみてはどうでしょうか。きっと圧倒されるはずです。

 

まとめ:高校野球はすごい

私は、高校野球をエンターテインメントとしてとらえています。

というか、スポーツはすべて本質的には「娯楽」です。

スポーツがなくても人間は生きていけますから、娯楽なのです。

競技者にとってはこの上なく真剣でも、観ている人にとってはエンターテインメントです。

 

「高校野球をエンターテインメントとしてとらえる」ことには賛否両論あるでしょう。

現場で真剣に練習している球児や監督としては「甲子園に行くんだ」という思いだけしかないはずですし、

高野連の偉い人あたりからすれば「学生として正々堂々~」とか「神聖な高校野球は~」とか「スポーツマンシップに則り~」とか「高校野球は興行ではなく~」といったところなのでしょうが、実際によく観察してみると高校野球はどう見てもエンターテインメントです。それも最高レベルの。

 

こう言っちゃ無粋かもしれませんが、「たかだか高校の野球部の全国大会で、二週間で観客動員数が50万人を超える」というのはお化けイベントなんです。一日五万人来るんですよ。プロ野球でもないのに。

競技人口が野球よりも多い(野球730万・サッカー750万)はずのサッカーの全国大会ですら30万人です。野球の地方大会の動員数まで入れたら、おそらく500万人くらいは動員されてるんじゃないでしょうか。

 

大学野球の時の神宮球場の空き具合と比べたら悲しくなります。高校野球はものすごいエンターテインメントなんです。高校生のイベントとしてはおそらく世界最大最高。

高野連も本当のところはそれをわかっているはず。わかっていなければ甲子園でビールなんて嗜好品は売りません。

 

話を戻すと、「高校野球をエンターテインメントとして最高のものにする」ことができれば、甲子園を目指す球児のモチベーションも上がりますし、野球人気ももっと上がるでしょう。最高の娯楽を提供できれば、もしかすると日本の幸福度(特に、スポーツ観戦が好きな層)も底上げできるかもしれません。

 

今後の高校野球に関して私が個人的に期待していることは、

・各校の応援のクオリティをさらに上げていくこと

・各地の球場名物の充実化

・他校との連合チームをもっと増やすこと

・球児たちの人生プランをきちんとサポートできる体制の強化

・エンターテインメントの視点・経済学的な視点・社会学的な視点を導入すること

などです。

 

これからの時代は、間違いなく「おもしろいものに価値が認められる」ようになっていきます。

おもしろくないものは淘汰される。つまり、エンタメ性のないものはどんどん淘汰されていく。

高校野球の人気をさらに上げて、日本のスポーツ文化を発展させるためにも、

高校野球を「日本最高のエンターテインメント」にしていこうとする努力が必要でしょう。

 

以上、栗栖鳥太郎がお送りしました。

 - 栗栖鳥太郎が学んだ・考えたこと, 野球