「心技体」から『フィジカル・動作・マインド』へ――「フィジカル」のためにできること その2
2017/11/24

目次
「心技体」から『フィジカル・動作・マインド』へ――:「フィジカル」のためにできること②
フィジモンゲットだぜ
徹底解説 「フィジカルを鍛える意味」とは?
1.そもそもフィジカルってなんなの?
元陸上十種競技の日本チャンプであるタレント・武井壮さんのフィジカル定義がわかりやすく、かつ本質を突いていると思ったので掲載しておきます。
体格として生まれ持ったものと、後天的に身に着けたものをかけあわせたものがフィジカル
↓もう少しかみ砕くと、
元々持った体格(物理) x 後天的に鍛えた筋力(パワーやスピード) x 後天的に鍛えた身体操作能力(精度)。それらをすべて掛け算したものがフィジカル。
(筋肉バカドットコムを参考にしました)
これだけでもスポーツのかなりの部分を説明することができると思いますが、
もう少しアレンジして私なりの言葉で説明すると、
フィジカルとは、
「①どのような体格か(物理)
x②後天的に鍛えた身体能力(パワー・筋力・スピード・柔軟性)
x③後天的に鍛えた身体操作能力(精度)」
となります。
この①~③の要素について考えてみると、
1. もともと持っている体格:ある程度までは変えることができる。
2.「後天的に鍛えた身体能力」は、①トレーニングの徹底 ②栄養・食事の充実 などでどんどん向上させていくことができる。
3.「後天的に鍛えた身体操作能力」は、日々のトレーニング・毎日行うアップ・体操 などでどんどん向上させていくことができる。また、2.とも相関する。
と私は考えています(というか普通に考えればこうなります)。
この1.~3.から導かれる結論というのは要するに、
「フィジカルを構成する要素のうち、後天的に変えられないものは身長・筋肉の長さ・速筋の割合・付き方などほんの一部だけ。
ほかの要素=身体能力・身体操作能力はトレーニングの継続で変わる。だからトレーニングしよう」
というものなんですが、
それだけだとあまりにも無味乾燥としているので、もう少し踏み込んで解説します。
2.理想的な動作を追求するには、まずは肉体の準備が必要
まず「②後天的に鍛えた身体能力(パワー・筋力・スピード・柔軟性)」について。
単に「後天的に身体能力を鍛える」というと、だいたい以下のようなものがイメージされます。
・ウェイトトレーニング、加圧トレーニング、初動負荷トレーニング、プライオメトリクス、TRX、SAQ、クロストレーニング、ストレッチ、ランメニュー・・・といったトレーニング。
・食事の充実、サプリメントの摂取、休養・・・といったトレーニング以外の要素。
もちろん↑こういうものを日々明確な目的のもとに行っていくというのは当然なのですが、
トレーニングの意味については、もっと根本的なところまで考える必要があります。
なぜなら、トレーニングや身体測定で示される身体能力そのものは高いのに実際の競技ではからっきし、という人が現に存在するからです。
ベンチプレスやスクワット・デッドリフトの数値は高いのに、あるいは垂直飛びや50m走のタイムは高レベルなのに、実際のプレーでそれが発揮できていない人は、かなりたくさんいるはず。「ポテンシャルは高いはずなのに・・・」と言われはするものの、なかなか結果が出ないタイプの選手のことです。
こういうタイプの選手が現に存在することからわかりますが、トレーニング「だけ」ではすべてをまかなうことはできません。
要するに、私が「②後天的に鍛えた身体能力(パワー・筋力・スピード・柔軟性)」について言いたいのは、
・「実際に理想的な動作を実現できる前提となる身体作り・トレーニング」をすることと、
・「理想的な動作そのものを極限まで追求する努力」をすることの両方が求められる、ということです。
もっと踏み込んで言うと、
・「理想的な動作をしようと思っても、肉体の硬さ・筋力のアンバランス・筋力不足などにより動作が邪魔されることが多い。だから、理想の動作を実現するためにはまず筋肉の硬さ解消・筋力のアンバランス解消・筋力不足解消を優先させるべきだ」
・「動作を極限まで理想的なものに近づけていく不断・不屈・不撓の努力を続けていくことが求められる」
ということになります。
もちろん、身体能力だけが高いだけタイプの人にも、この2つの方向性の努力が必要です。
この2つの努力は、要するに「動作の最適化」と関連するものですが、動作以外にもさらにもう一つ伸びしろがあります。次の項で紹介します。
3.「あともう少しで」のレベルを引き上げていく
「あの大飛球を捕れていれば」「あの本塁クロスプレーをアウトにすることができていれば」「あの内野安打をアウトにできていれば」「あの当たりが外野の頭を超えていれば」「あの当たりが内野の間を抜けていれば」「あのハーフスイングが止まっていれば」「あと5km/h球速が速ければ」・・・
フィジカルを鍛えることの一つの意味は、この「あともう少しで○○だったのに」を引き上げることにあります。
前項で紹介した「動作の合理化」の例のように、飛距離も球速も、合理的な動作を追求していけばかなりの程度までは伸びます。
しかし、その「かなりの程度」の先には壁があります。それこそが「自分の肉体によって決まる限界」です。
少し道は逸れますが、アマチュア野球とプロ野球との一番の差は何かといえば、その「あともう少しで」と悩むレベルがどれだけ高いか、ということにあります。「アマチュアで無双する選手であってもプロに入ると普通レベル」「アマチュア時代はお山の大将だった人が、プロに入って『とんでもないところに来てしまった』と感じる」という事例がいかに多いか、がそれを裏付けています。
つまり、アマチュア選手が「あともう少しで~」のレベルを引き上げていくと、最終的にはプロレベルになるわけです。技術面や動作面・マインド面をあえて考えずに「フィジカル面」にだけ注目すれば、そういうことになります。
意外と忘れられがちですが、最終的に自分のプレーの限界を決めるのは自分の肉体です。
1.動作や技術のレベルを追求することはもちろんですが、まずは「その動作・技術を実現するための肉体」が必要となります。
2.動作・技術が理想的なものに近づいてきたら、残る伸びしろは「肉体の限界そのものを引き上げる」になります(そのほかにはマインド面くらい)。
という二つの意味で。
「じゃあ、その自分の肉体のレベルを引き上げるためには何ができるの?」という話になりますが、
その答えこそが「フィジカル強化のためのあらゆる努力」となるわけです。
「あらゆる努力」というのは今回の記事と前回の記事で紹介した通りです。もちろん私が言っているものがすべてではありません。
この節を簡単にまとめると、
①理想的な動作ができるための身体作り と、
②理想的な動作そのものの追究 をまずは同時並行で日々行っていくべき。
これだけでもかなりのところまではイケるけど、これだけだと「圧倒的なフィジカルの差という壁」にぶつかる可能性が高いので、
③身体能力そのものをどんどん上げていく
ことも重要ですよ、ということになります。
つまるところ、アマチュア選手は「日々のトレーニングをしっかりやろうね」ということです。
優先順位としては、やはり筋肉の硬さを取り除くことが第一。なぜなら、筋肉の硬さは動作のスムーズさをダイレクトに阻害するからです。知っている限りでは初動負荷トレーニングが最適だと思います。
筋肉の硬さを取り除きながら理想の動作を日々追究し(もちろん、技術練習の絶対量も必要)、
フィジカルの差という壁にぶつかって玉砕する羽目になるのを避けるために、
ウェイトや徹底した食事管理などで身体能力そのものを上げていく。
「フィジカル」についてすべき努力はこのくらいで必要十分だろう、と思います。
次の記事では、具体的にどのようにフィジカルを強化していけばいいのかを再び紹介します。