「心技体」から『フィジカル・動作・マインド』へ――:「動作」のためにできること その1

   

「心技体」から『フィジカル・動作・マインド』へ――:「動作」のためにできること その1

「動作」はすぐに変わる、劇的に変わる

今回の記事では、私が勝手に設定した「フィジカル・動作・マインド」のうち「動作」について解説を加えます。

 

「動作」という言葉を定義するのはなかなか難しいのですが、

「野球というスポーツのなかで、ある特定の目的を達成しようとするときにその人が行う身体表現のこと」

(=ex.「打つ」という目的を達するために行う動作、ベースランニング・投球動作など)

という程度の理解で大丈夫です。

 

なお、「動作」という要素だけが持っている特性としては、以下のようなものがあります。

・動作はすぐに変わる

・動作が変われば、短期間で大幅なパフォーマンスアップが見込める

マインドとフィジカルは変わるのに多少の時間がかかりますが、動作はすぐに変わります。しかも劇的に結果が出ます。

フィジカルとマインドに手を付けない場合でも、動作のみを集中して徹底的に改善すれば、

早ければ3分で飛距離が10m伸びたり、30分で球速が5km/hアップしたりします。

 

しかも、日本にはいまだ不合理な打撃理論・打撃指導が蔓延している状態ですから、

かなりの数の選手が動作面によるロスのせいで本来持っている力を出せていません。

つまり、多くの選手にとって動作というのは「伸びしろしかない状態」なのです。

 

さて、この「動作」ですが、「フィジカル・マインド」との関係は以下のようになっています。

・よい「動作」は「フィジカル」をさらに発達させる

・優れた「フィジカル」はよい「動作」の礎となる

・よい「動作」は生理的な快感をもたらすなどして「マインド」をさらに伸ばす

・「マインド」が不完全・不安定だと「動作」の合理性が損なわれたり、質や再現性が低くなったりする(→ex.動作を誤解している人が、正しいと信じてめちゃくちゃな動きをする)

(「マインド」が優れている人のほうが「フィジカル」の強化も行いやすい)

(「フィジカル」の強化が進めば、「マインド」も安定する)

フィジカル・動作・マインドという三要素はあくまでも三位一体で、切り離して考えるべきものではありません。

↑のように、どれも独立して存在する概念ではなく、互いに関連しながら双方向的に発展or退化していくものです。

 

動作改善にどのように取り組むのか

実際に動作を改善しようと思ったとき、大別して二つの方法があります。

・動作について確かな理解ができている人に診てもらう

・自分自身の手で、動作やメカニクスを自己改造する

の2つです。

私としては両方をおすすめします。

 

ただし、一点だけ。

自分自身の知識は有限なので、どうしても盲点になるポイントができてしまう・・・のは確かなのですが、

自分自身で自分自身を診断できるようになれば進化の速度は段違いで早くなります。

 

たとえば、

「今のスイングは前脚の着地のときのロスが大きかった。振りぬいた感触が悪い。次のスイングは着地がフラットになる感覚で振ってみて・・・うーん、これも違うな。じゃあ、次はインエッジ着地を試してみよう。おっ、これはさっきより良いな。インエッジ着地から、その次はどうすれば良いんだろう。脛骨と踵骨が一直線になるように、つま先の向きはそのままで前膝を投手方向に向けつつ地面を押さえてみたらどうだろう・・・」

「今日の試合の打席の動画を見てると、どうも振り出しの時の回転半径が大きいせいでバットが出てこなかったみたいだ。回転半径を小さくすればもっと振り出しがスムーズになるんじゃないかな。回転半径を小さくするために、右手をもう少しうまく使えるようになりたいなあ。右手の動きだけを単独で変えるのは難しいから、体重移動のタイミングとやり方を見直してみよう。前脚の着地のときのロスも影響してるんじゃないかな・・・どうすればいいんだろう。浅村選手はどうやってスイングしてるんだろう・・・なるほど、こうやるのか。ちょっと試してみよう。よし、明日は『体重移動をうまくスイング開始に結び付けられるような前脚着地の方法』を探しながらタナーティーを60球、正面ティーを10×5セット打とう。動画に撮って、フィードバックしながらやってみよう」

このくらい考えながらやっている人と、

「全体練習早く終わらないかなあ」「ノルマの一箱ティー打撃を早く片づけて帰ろう」としか思っていない人とでは、日に日に大きな差が付いていきます。確実に差が付いていきます。もしかすると、「やたらセンスのあるアイツとの差」はここにあるかもしれません。

 

もちろん「理論や理屈に頼らずに完全に感覚派で上手くいく人」もいるでしょうが、

理論や理屈を知っておいたうえで感覚を磨いていく・・・という選択肢もあるはずです。

 

本題に入る前にちょっとだけ:全体像を把握しておきましょう

具体的な方法論の紹介に入る前に、私なりの

「野球選手はこういう風に動作面をパワーアップさせていけばいいんじゃないか?」

という全体像をちょっとだけお話ししておきます。

 

それは、

「①バッティングのメカニクスや体の仕組みなどを完全に理解するための勉強を続けつつ、

②自分の『個的身体特性』を把握したうえで、

③理想の動作イメージを作り、日々アップデートしていく」

というものです。今回のシリーズでは、この①~③に沿って私なりの考えを説明していきます。

 

2-A.「野球の動作解析に役立つありとあらゆる理論や知識を学ぶ」

あまりにも当たり前のことですが、

「自分で自分の動作を自己診断する」ためには、

「動作解析・動作改善のために必要な知識を身に付ける」ことが必須となります。

 

なぜなら、

自分のなかにある「良い動作」のイメージ自体がおかしければ、実際の動きもおかしくなる

からです(つまり、広い意味で、マインドが動作に影響します)。

というのも、体をどう動かすかという指令を送っているのは脳であり、その脳に保存されている「おれはこういう動作がしたいのだ」というイメージが不適切なものであれば、理にかなった動作というのは実現しようがないからです。最初のボタンを掛け違えていては良くなりようがありません。

逆に、「自分はこういう動作をしたいのだ」というゴール地点がはっきりしていれば、比較的容易に動作改善を行っていくことができます。

 

まずは「Twitteの動作・メカニクス・セイバー界隈のアカウントをフォローしてみる」

したがって、まず真っ先にすべきなのは「動作解析・動作改善のために必要な知識を身に付ける」ことです。

では、具体的にどうやって?

 

まず真っ先におすすめするのが、

★ツイッターやインスタグラムなどで、野球の動作・メカニクスを分析している人々の投稿を追ってみる

ことです。ちなみに、私がおすすめする人々のリストはこちらです(→野球の最新情報を得る)。

 

素朴な疑問として、

「Twitterの情報は信用できるのか?」

「元プロの教えるDVDや、野球関係の書籍を買った方が良いのではないか?」

と思われるかもしれません。

 

しかし、正直な話をすると、現時点で世の中に出回っている打撃本・投球メカニクス本や野球指導DVD(元プロのものも含む)の90%は「はずれ」です。私もよく書店の野球書籍コーナーに立ち寄りますが、理屈からしておかしかったり、理屈としては正しくてもそれを実践につなげる方法は教えてくれなかったり・・・と、むしろ読むことによる弊害のほうが大きい書籍も少なくありません。DVDも同様です。

 

では「現場の指導者による指導」がどうかというと、これもピンキリです。

たとえば、打撃について言えば、未だに「ミートポイントはヘソの前」「一日1000スイングしろ」「軸足で回転して打て」「バットは最短距離で」という指導をされている方もいれば、非常に理に適った教え方をされている人もいます。良い指導者に巡り合えれば良いのですが、なかなかそうはいきません。

 

現場の人間として、また野球書籍やDVDを数多く摂取してきた人間として言わせてもらえば、

いま日本の野球動作指導で一番アテになるのは「野球動作・メカニクス・セイバー関連のアカウント」です。

・Twitterのメカニクス界隈のアカウント → 勉強熱心・動画や画像を活用して情報をわかりやすく伝えてくれる・質の高い情報が多い・常に最新の情報を得ることができる・間違った情報はすぐに訂正できる

のに対して、

・現場の人間 → 勉強不足なことが多い(現場での指導に忙しく勉強する時間がとりづらい・そもそも勉強する意欲のない指導者もいる)。情報が古いことが多い

・書籍 → ごく一部の優れた本を除いて、断片的で質の低い情報が多い。一度書いてしまったものは訂正しにくい。情報が古いことが多い

・元プロなどが教えるDVD → 感覚の話&実際の動作モデルとしては参考になるかもしれないが、「感覚と実際の動作をごっちゃにしてしまう人」がとても多い。また情報の鮮度も低いことが多い

という印象があります(あくまでも私の主観ですが)。

 

また、私がおすすめしている「Twitter利用」だけでも相当の知識と効果を得られるだろうと思いますが、

もっと高いレベルで野球の動作というものを理解したい! という人向けには、以下のような選択肢が考えられます。

 

野球を極めたい人向け

上記のTwitterアカウントをフォローするだけでも、かなり動作についての理解は進みます。

 

これにプラスして、

「トレーニングで実際の動作がどう変わるのか、納得するまで調べたい」

「自分の体をより高いレベルでコントロールしたい」

「野球を極めたい」

と思っている人には、「徹底的に、野球の動作を解析するための知識を入れる」という選択肢もあります。

野球の動作を極めるために学んでおきたいもの

・物理学(ニュートン力学レベルで十分)

・解剖学(主に筋肉や関節の知識)

・バイオメカニクス・運動学

・スポーツ科学

・スポーツ生理学

・理論:現存しているトレーニング理論や動作理論。初動負荷理論・4スタンス理論・クオメソッド・宮川理論など・・・

「○○学」「○○理論」という言葉を聞くと「小難しそう」という感想をお持ちの方もいるでしょうが、実際はなんてことありません。

 

たとえば、

・「解剖学=人間の体がどういう構造になっているのかを明らかにする」ものですし、

・「物理学=現実世界にある物体が、どういう動きをどういう仕組みのもとにするのかを調べる」

ものです。初心者向けのやさしい本はいくらでも出ているので、それらの本を読み漁るということもできます。

 

そもそもなぜこれらの知識を入れておくべきかというと、それをすることによる多大なメリットがあるからです。

・トレーニングの効果を頭でも身体でも納得できるようになる

・動作の引き出しが増える

・これまで感覚だけで済ませていたものを解明できるようになる

・自分のコンディションを常に最善に保っておくことが容易になる

・自分の指導者としてのスキルが上がる(→チームメイトに対するアドバイスの質が高くなってチームが強くなる、将来に役立つなど)

 

「知識ばっかりでは頭でっかちになって実戦の役に立たないのではないか?」と危惧される方もおられるでしょうが、実際は逆です。

知識量が増えれば増えるほど、「いま自分がすべきことは何なのか」について一瞬で判断できるようになります。

 

たとえば、動作解析についての知識がある人は

・「軸足に体重を残したまま打つ」「最短距離でバットを出しに行く」といったハズレの選択肢をはじめから排除しておくことができる

・自分の調子が悪いとき、どこが悪いのか一瞬で診断しやすくなる(→例:体幹の筋肉がやや疲れて硬くなっているから、体幹を初動負荷ストレッチでほぐそう など)

・ほかの選手が語ってくれた感覚を、実際の動作とのズレを考慮しながら自分の動作に取り入れることができる

こういった判断をすぐに下せます。

 

野球界ではなぜか「知識・情報」を軽視する風潮があるように思えるのですが、実際はむしろ、知識や情報をたくさん持っているほうが正しい方向へと進みやすい&間違った方向へと進みにくいのです。野球界のインテリ化が望まれます。

※なお、おすすめの野球書籍を公開しています。参考にしてください。

 

まとめ

今回のシリーズは「フィジカル・動作・マインド」という言葉をメインに据えていますが、「心技体の起源・もともとの意味って何なんだろう」と思って調べてみたところ、こんな説があるようです。

諸説ありますが、語源を調べてみると、
一番有力なのは明治44年に出版された古木源之助著 『 柔術独習書 』 の中の一節です。

「第二章 柔術の目的」で「柔術は如何なるものや」についてこう述べておられます。

第一、身体の発育
第二、勝負術の鍛錬(即ち護身の用)
第三、精神の修養

つまり、

・身体の発育 ・・・ 「体」
・勝負術の鍛錬 ・・・ 「技」
・精神の修養 ・・・ 「心」

順番は違いますが、「心」、「技」、「体」が出てきます。
私の知る限りでは、これが語源となっていると思われます。

実は、先ほどお伝えさせていただいた箇所のすぐあとにこう述べられています。

『以上三項の修行法は相互関連して居れるを以て単に一つの方のみを研究すべきものにあらず』

現代語に訳してみると

「お互いに関連するものだから、一つだけを取り上げて研究するものではない」
とはっきりおっしゃっておられます。

「心技体」の本当の意味とは?(安井整骨院・整体院様のサイトより)

 

つまり、心技体(私の言葉ではフィジカル・動作・マインド)はどれか一つを単独で取り上げたり強化できるものではなく、3つが三位一体となって相互に関わり合いながら実際のパフォーマンスを決定している・・・というわけです。

私も基本的には同意見です。

ともすれば日本球界では極論に走る人が多い(→例:心だけを鍛えようとする、身体だけを鍛えようとする、技術だけを磨こうとするなど)ようですが、先ほども申し上げたように、

・よい「動作」は「フィジカル」をさらに発達させる

・優れた「フィジカル」はよい「動作」の礎となる

・よい「動作」は生理的な快感をもたらすなどして「マインド」をさらに伸ばす

・「マインド」が不完全・不安定だと「動作」の合理性が損なわれたり、質や再現性が低くなったりする(→ex.動作を誤解している人が、正しいと信じてめちゃくちゃな動きをする)

(「マインド」が優れている人のほうが「フィジカル」の強化も行いやすい)

(「フィジカル」の強化が進めば、「マインド」も安定する)

という関係があるはずです。

 

なお、3つのうち「3つとも大事なのはわかったが、フィジカル・動作・マインドではどれが一番重要なのか?」と訊かれた場合、

私の答えは

「マインド」

です。

 

「心技体のうち一番大切なのはどれか」と聞かれてもお答えできませんが、

私が定義した「フィジカル・動作・マインド」であれば、その中で一番大切なのはマインドだといえます。

 

マインドについてはまだ説明していませんが、私の考えでは

マインド=従来の「心技体の『心』」も含む。情報や知識面も含む。メンタルも含む。人間としての認識能力・思考や感覚すべてを包括するもの

としてとらえています。

 

なぜマインドなのかというと(もちろんフィジカルも動作も大切ですが)、

・極端な話、マインドがグチャグチャな人はそもそも野球ができない

・どのような動作をしたいか? を決めているのはマインドである

・フィジカルを強化する主体はマインドである

という理由からです。

フィジカルも動作もマインドには影響しますが、あくまでも主従関係で言えば「マインド=主、動作・フィジカル=従」です。

 

このあたりについては「マインド」のところで詳しく持論を展開させてもらうつもりですが、

とりあえずは「この人は、マインドが一番大切だと考えているんだな」という認識を持ってもらいたいと思っています。

では、また次回の記事でお会いしましょう。

 - 動作, 野球