何を音読しようか迷っている人、試しに「三島由紀夫」音読してみたら?

   

何を音読しようか迷っている人、試しに「三島由紀夫」音読してみたら?

2017/12/29、現在は「奔馬(豊饒の海)」を音読中です

なぜ私が、数多くの文豪の中から「ミシマ」を音読対象として選ぶのか?

このブログの過去記事で何度も何度も触れているように、私にとって「音読」は欠かせない日課です。

 

個人的な話ですが、私は将来的には文筆業に近いなにかで生計を立てたいという思いがあり、

そのために必要な文章力・文章生産速度を向上させるために「文豪の作品を音読」しています。

私にとって音読は、最初は能力開発の意味合いが強かったのですが、もはや趣味の域を通り越して、ていの良い娯楽のようなものです。

 

そして、そこで問題になってくるのが「誰が書いた文章を音読すればいいか」。

 

私の個人的ニーズからすると、

「小説も書きながら、批評的な文章も書き、ブログも書き(=つまり相当な文章生産速度が必要)、難解な事柄をわかりやすく噛み砕いて説明できるような力をつけたい」

「ある程度の語彙力と描写力、文章生産力、ユーモアの力、砕けた文章も書ける、文章そのものの技巧がすさまじい作家」

の文章を音読する必要があります。

 

さて、誰がいいでしょうか?

 

日本文学の系譜には、数多の「文豪たち」がその名を連ねます。

現在最も高く評価されている小説家であると思われる村上春樹氏や、2017年ノーベル文学賞を受賞されたカズオ・イシグロ氏、他にも阿部公房や川端康成、大江健三郎氏や村上龍氏、夏目漱石、谷崎純一郎、太宰治、芥川龍之介etcetc…

 

その中から、私は「三島由紀夫」を音読の対象として選びました。

たまたま三島の文章・作品群が私自身の需要にマッチしていた……のですが、

「三島由紀夫は、これから音読を始めてみようと思われる方にもおすすめできるぞ」ということが判明致しました。

 

そこで今回の記事では、

なぜ「三島由紀夫」が音読の対象としておすすめなのか?

を解説していきます。

 

理由①:「文章の技巧」でいえばおそらく日本歴代ナンバーワン

「西部湯瓜のshow論文」というサイトに、

日本で一番文章が巧い作家・三島由紀夫

という記事があり、私は思わず「我が意を得たり!」と膝を叩きました。

 

要点を抜粋すると、

「もっとも素晴らしい作家はだれか」という問いには答えが存在しないが、

「もっとも文章力に秀でた作家はだれか」という問いには答えが存在する。

それは間違いなく三島由紀夫である。

 

たとえば、三島の代表作「金閣寺」のなかの一場面。

私はまた、その屋根の頂きに、永い歳月を風雨にさらされてきた金銅の鳳凰を思った。この神秘的な金いろの鳥は、時もつくらず、羽ばたきもせず、自分が鳥であることを忘れてしまっているにちがいなかった。しかしそれが飛ばないようにみえるのはまちがいだ。ほかの鳥が空間を飛ぶのに、この金の鳳凰はかがやく翼をあげて、永遠に時間のなかを飛んでいるのだ。時間がその翼を打つ。翼を打って、後方に流れてゆく。飛んでいるためには、鳳凰はただ不動の姿で、眼を怒らせ、翼を高くかかげ、尾羽根をひるがえし、いかめしい金いろの双の脚を、しっかと踏んばっていればよかったのだ。

そうして考えると、私には金閣そのものも、時間の海をわたってきた美しい船のように思われた。美術書が語っているその「壁の少ない、吹きぬきの建築」は、船の構造を空想させ、この複雑な三層の尾形船が臨んでいる池は、海の象徴を思わせた。金閣はおびただしい夜を渡ってきた。いつ果てるともしれぬ航海。そして、昼の間というもの、このふしぎな船はそしらぬ顔で碇を下ろし、大ぜいの人が見物するのに委せ、夜が来ると周囲の闇に勢いを得て、その屋根を帆のようにふくらませて出帆したのである。

三島のこの文章技術を、青山繁晴氏はこのように表現する。

「最高の芸術品ですね。これが文章なのかと思うくらい。…伝統技術で作りこまれたような、美術品のような文章というのは滅多にあるもんじゃないですよ。…美術品としての文章というのは、僕は三島さん以外には多分発見できていないですね」


 

そういえば、1963年のノーベル文学賞は川端康成が受賞しましたが、実は三島由紀夫(と谷崎純一郎)も最終候補に残っていました。当時、「そろそろ日本人作家にノーベル文学賞を」という動きがあったようです。選考から50年経った現在では当時の選考委員会の様子も公表されており、

実力で言えば三島由紀夫がもっとも高く評価されていたのですが、文学界の年功序列により川端康成氏への授与が決まった……という裏事情が明らかになっています。

 

つまり、文章の技巧といった実力でいえば三島由紀夫がもっとも高く評価されていたが、

日本文学界の年功序列を気にして、まずは谷崎純一郎への文学賞授与が検討された。

しかし谷崎が急死したため、年功序列で次点の川端康成に文学賞を与えることになった……とのこと。

三島への文学賞授与については「彼はまだ若いし(当時三島は30代!)、生きていればいくらでも受賞のチャンスはある」として見送られたそう。もちろん数年後、三島事件が起こり三島由紀夫は割腹により自決したわけですが……。

 

実際に音読していても、三島の作品には「思わず恍惚としてしまうような美文」「数学・物理の美しい公式のような、はっとする表現」が詰め込まれています。

 

「三島の文章の技巧を味わいたい!」という方には、

・「金閣寺」:言わずと知れた金字塔

・「豊饒の海」全四巻:三島の最期の作品にふさわしい圧倒的な完成度

・「仮面の告白」:三島の初期作品のなかでもつとに評価が高い

の三冊をおすすめします。

 

 

理由②:面白いし読みやすい。ユーモアもある

近代の文豪として名が挙がる泉鏡花・幸田露伴・谷崎純一郎などの文章も流麗ですが、いかんせん時代が時代だけあって、現代人にとっては読み辛いものです。

 

さて、先ほど「三島=文章が巧い」と紹介しましたが、

実は「三島=面白い、比較的読みやすい、ユーモアがある」というのもまた真です。

文章が巧い=難解な単語を並べ立てて読者をドン引きさせる ではないのです。

三島の作品の特徴

・展開が面白い

・文章が現代のものと大きくかけ離れていない

・ユーモアセンスがある

文豪というと「おカタい」イメージがある人も多いと思いますが、

実は、三島由紀夫の作品には「エンターテインメント色が強いもの」も多いのです。

 

すべてを紹介することはできませんが、たとえば「不道徳教育講座」にはこんな目次が。

知らない男とでも酒場へ行くべし
教師を内心バカにすべし
大いにウソをつくべし
人に迷惑をかけて死ぬべし
泥棒の効用について
処女は道徳的か?
処女・非処女を問題にすべからず
童貞は一刻も早く捨てよ
女から金を搾取すべし
うんとお節介を焼くべし
醜聞を利用すべし
友人を裏切るべし
弱い者をいぢめるべし
できるだけ己惚れよ
流行に従うべし

ご覧のとおり、「文豪的なしかめっ面」ばかりではなく、「俗世間的なユーモア」も使い分けるのが三島なのです。

 

エンターテインメント色の強い作品としてはこのあたりがおすすめできます。

・不道徳教育講座

・命売ります

・夏子の冒険

・潮騒

・三島由紀夫レター教室

 

理由③:生き様・オーラ・品格のようなものが文字越しに伝わってくる(これは三島に限らず)

これは「音読」という行為だけが持つ特徴だと思うのですが、

音読すると、文章が「体感」できる。体・脳のなかに直接インプットされる

→文豪の視点になって物事を考えるクセがつく

→文豪の文章のリズムやクセが体に染みつく

感触があります。「体のなかに文章が入ってくる感覚」とでもいえばいいでしょうか。

これは、黙読や速読では得られない効用です。

 

昔から「文章上達には、文豪の作品を書き写すのが良い」と言われますが、これもやはり「身体の中に文章が入ってくる」ためです。

写経もいいですが、一冊の本をはなからしまいまで書き写すのは相当な重労働です。普通の文庫本でも100時間以上かかるでしょう。

その点、音読であれば手軽にかなりの量をこなせます。一冊の文庫本で5-10時間程度。

 

 

・若きサムライのために

・葉隠入門

・三島由紀夫写真集 三島由紀夫’25~’70(写真集)

 

理由④:教養がかなり身に付く

三島由紀夫は「東京の、いわゆる上流階級の生まれ」「学習院卒」「東大法学部」「大蔵省入り(すぐに辞めましたが)」というかなりのエリートコースを歩んできた人間です。さらに、「幼少期から日本の古典に親しみ」、「国語辞典をかなり読み込んでいた」そうですから、古典の素養と語彙力も相当なものです。

 

つまり、教養という点では申し分ありません。

三島レベルで「教養・語彙力・古典の素養」に恵まれた文豪は他に例がないのです。

三島の作品を暗記するくらい何度も読み込めば、相当な教養が付くでしょう。

三島由紀夫の特徴

・西洋の事柄(文学・戯曲・神話・芸術など)に詳しい

・日本の古典にも詳しい

・上流階級の暮らしに詳しい

・語彙力がすさまじい

・・・ので、作品を読むだけで相当な知識を得ることができる。

 

本当に三島が好き! という人は、三島由紀夫の全集を買ってみても良いと思います。

新潮社から出ている「決定版 三島由紀夫全集」は全42巻で、相当なボリュームがあり、装丁も美しいので、

ただ本棚に飾って眺めているだけでもうっとりします(日本国語大辞典のそれに通じるものがあります)。

 

・三島由紀夫全集

 

まとめ:ミシマはすごい!

というわけで、「なぜ私が音読の対象として三島由紀夫を選んだのか」の理由は、以下のようにまとめることができます。

なぜ三島由紀夫の音読をおすすめするのか?

1.文章の技巧…三島は間違いなく日本歴代ナンバーワンの文章力

2.面白い、読みやすい、ユーモアがある…エンタメも書ける

3.文豪の文章を音読すると、文章が体に直接入ってくる(三島に限らず)…ひたすら量をこなして文章力アップ!

4.教養が身に付く…三島は数多の作家の中でもトップクラスの教養の持ち主

 

ちなみに、三島由紀夫の文章を真似しすぎると「くどい文章」になりがちですので、

三島由紀夫とは真逆の特徴を持つ人の文章を音読してみるのもいいでしょう。

「歯切れが良く、明快である」という意味で、夏目漱石や芥川龍之介・現代では筒井康隆氏といった作家あたりが思い当たります。これらの作家たちの文章を音読してみるのも良いと思います。

 

今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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