【野球選手のための身体測定表】「自分」をどれだけ知っていますか? 

   

【野球選手のための身体測定表】「自分」をどれだけ知っていますか?

「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」by孫氏の兵法。敵を調べるのも大事だが、その前に自分をわかっておくべきだ

野球選手が測定すべき項目

ふと思い立って、こんなものを作ってみました。

野球選手のための身体測定表」(Googleドキュメント)

 

内容はタイトルの通りで、まさに

「野球選手なら、これくらい測っておいてくれよ」

という身体的な要素を詰め込んだものです。

身長・体重をはじめ、10/30/50m走や遠投・打球速度・胸囲・腹囲・臀囲、立ち姿やBIG3の1RM、倒立できるかできないかなど、野球と関係が深いであろうことをリストアップしてみました。

 

「自分をろくに知らない」ことでどれほど損をするか?

そもそもなぜ私が「野球選手のための身体測定表」なるものを作ろうと思い立ったかというと、

「自分のプレーや肉体を客観的に分析する能力の高い野球選手が、あまりにも少ないのではないか?」

という疑念がずっとあったからです。

 

野球界はいま、このような状況なのではないでしょうか。

・「フィジカルの重要性」を理解している指導者の方が極めて少ない

・選手の側も、フィジカルの重要性をあまり知らない

・選手の側が「やれと言われたメニューを受動的にこなす」という習慣に染まりすぎているので、自分で自分のフィジカルの強さを把握する動機がない。それこそチーム単位でフィジカル強化に取り組んでいるような集団に所属しない限りは、そういう数値を調べようとすら思わない

私の実感としても(見聞きする範囲での情報に照らし合わせても)、

「フィジカル強化の重要性をしっかりと理解し、実際に徹底的に合理的なアプローチでフィジカル強化を実行しているチームは驚くほど少ない」

と感じています。これはいわゆる野球強豪校などでも同様です。

 

逆にいえば、大半の選手がそんな勿体ない状況に置かれているのですから、

「自分の身体の特性をきちっと自分で調べる」

ことさえ実行してしまえば、相当なアドバンテージになるはずです。

 

実際、第一線で活躍しているorしていたアスリートの多くが(「センスだけでやっている」「脳筋」というイメージもあるかもしれませんが)、自分の身体について相当詳しく知っています。

理屈から言っても、自分の「最優先の資産」である身体をほったらかしにするようなアスリートが成功する確率は低くなって当然です。ポートフォリオもバランスシートも損益計算書も知らない人が果たして資産家になれるでしょうか?

 

たとえば、元十種競技の日本チャンピオン・現タレントの武井壮さんは「今日の身体各部の体温・気温・室温・湿度・天気・食べたもの」などを事細かにノートに記録していました。その結果、「常に調子が良い状態をキープできるようになり、ベストな状態を保てるようになった」と語っています。

あるいは、プロ野球歴代最多勝投手である金田正一さんは「寝るときは絶対に左腕を冷やさない」「自分では絶対に車を運転せず(運転手を雇っていた)、左腕に風が当たる車の左側の席には絶対に座らない」「自分の子供を抱くときでも左腕は使わない」といったケアを怠りませんでした。その他にも色々なエピソードがあります(→wikipedia「金田正一」)。

最近の例だと、ダルビッシュ有投手がトレーニング関連の知識(栄養の知識・解剖学・生理学・サプリメント関連の知識など)を積極的に学んでいたり、大谷翔平投手が(身体の目標を含めた)非常に細かい目標達成シートを作成していたりと、自分の身体について「ここまでやるか!」と言われてしまうくらい気を遣っている超一流アスリートは非常に多いのです。

 

とはいえ、「身体に気を遣うべきだとは思うけど、具体的に何からやり始めていいかわからない……」という人も多いはずです。

そんな人は、まずは虎の巻として「野球選手のための身体測定表」を実際に埋めてみてはどうでしょうか。この表を使えば「現状把握」と「未来の自分が達成していてしかるべき数値の設定」とが両方いっぺんにできます。測ってみて損はないはずです。

もし「野球選手のための身体測定表」で飽き足らなくなったら、どんどん自分が測ってみたい項目を追加していけばいいと思います。

 

プレーの限界を決めるのは、肉体

野球選手のみならずアスリートが肝に銘じておくべき教訓として、

「あなたのプレーの最終的な限界を決めるのは、どこまで行っても、あなたの肉体である」

という真理があります。なぜなら、野球は物理空間でやるものだからです。

 

いくらメンタルを強化しても、いくら技術を研鑽しても、結局スポーツというのは物理空間でやるものなので、「その人の身体以上のプレーはできっこない」のです。ダルビッシュ有選手でもイチロー選手でもバリー・ボンズ選手でも、ウサイン・ボルト選手でもマイケル・ジョーダン選手でも北島康介選手でも。

いくら「おれは100トンの巨岩を動かせる!!」と念じてみたところで、実際にそれができるだけの身体がなければ不可能です。逆に言えば、身体さえあれば可能です!

 

要するに、次の5つが言えます。

・野球は物理空間でやるスポーツ。物理空間は、色々な物理法則に縛られた、制約の多い空間である

・身体のポテンシャルが大きければ、プレーの限界はより高くなる

・身体のポテンシャルが小さければ、プレーの限界はそれだけ低くなる

・身体のポテンシャルを大きくする(より速く・強く・大きく・正確に・柔軟に…など)努力を続ければ、プレーの限界は次第に高くなっていく。身体は正直。身体は鍛えれば強くなり、怠ければ弱くなる

・身体のポテンシャルを引き上げるには、時間がかかる

この5つを考えると、「フィジカル強化を疎かにすることによる潜在的損失」がどれだけ大きなものか、が実感できるのではないでしょうか。

 

まとめ:数字がすべてではないが、数字を活用することは大きな武器になる

もちろん、数字がすべてではありません。

たとえば、イチロー選手はウェイトトレーニングをやりません(ただし、専用のマシンで初動負荷トレーニングは念入りに行っています)が、誰もが認める世界一の安打製造機として活躍されています。身長180cm弱、体重70kg後半と野球選手としては大柄なわけではありません。スクワットやベンチプレスもおそらくあまり挙がらないでしょう。柔軟性や身体操作能力を徹底的に鍛えぬいたタイプの選手です。

しかし逆に、バリー・ボンズ選手やジャンカルロ・スタントン選手のように圧倒的なフィジカルを武器にして強打者としての名をほしいままにしている選手も存在します。ダルビッシュ有投手・大谷翔平投手なども積極的にフィジカル強化・肉体の最適化を行っています(減量も含む)。

 

さて一体、どちらが正しいのでしょうか?

答えは簡単で、「どっちも完全に正しいとは言い切れないから、どっちでも好きな方を選べ」。

要するにフィジカル強化では、「自分はどのような存在でありたいのか?」という、人間として非常に本質的な意思決定能力が問われているのです。

 

その「自分はどうありたいか」という理想像さえしっかりしていれば、ウェイトをしないで徹底的に身体操作を極める道に進むのもアリです。逆に、自分の理想のために圧倒的なフィジカルが必要であれば、今度は徹底的に肉体改造を行うことが是となります。

 

もちろんこの考え方からすると、一番のタブーは「自分がどうありたいか、という願いを押し殺すこと」です。

ただしこれは「他人からの要求をすべて無視して自己の欲望のみに従え」という意味ではなく、実際には「他者から要求されることと、自分が欲することとの間で、ずっと最適解を探し求め続けよ」ということです。

よく「人という字は~」と言いますが、人間は自分以外の他者の存在があってこそ嬉しい・楽しい・頑張ろうと思える(これは私の信条です)のですから、他人の存在を完全無視することはどうしてもできません。プロ野球選手にしても「自分以外の他人に応援してもらえる」というのが存在理由の一つなのです。自分と他人との間とのバランスを絶えず取り続けていくことが欠かせません。

 

私は「自己実現」には二つの道があると考えます。

他人を完全に無視して自分の妄想の世界に閉じこもりそこで王様になるか、

あるいは現実世界に根を下ろして他者の要求と自分の欲望との釣り合いをうまくとり続けながら頑張るか。

 

私は後者をおすすめします。

前者はきっと、見かけは楽でも、まさに死ぬその瞬間にとてつもなく後悔する悪魔の道です。

人間らしいのは、きっと後者です。

今回紹介した「野球選手のための身体測定表」が、その第一歩となれば幸いです。

 

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