バッティングにもピッチングにも。「三関節直列」と「トリプルエクステンション」について自分が考えたこと その6

   

バッティングにもピッチングにも。「三関節直列」と「トリプルエクステンション」について自分が考えたこと その6

ピッチングとバッティング、どこが同じでどこが違うか

前回の補足:バッティングの時の重心移動の軌跡を上から見ると?

前回の記事では「真横から見たときの身体重心の軌跡」と「投手方向から見た時の身体重心の軌跡」とはこうなっているだろうな、という予想図を描きました。

真横から見るとこうなっているはず↑

投手側から見るとこうなっているはず↑。図のベルト付近にある茶色い点が、想定される身体重心の位置となります。

 

なお、前回の記事(画像)では舌足らずだったのですが、「足を上げるときに一度ホームベース側に出てから」直線的な軌道を描きながら移動していくと考えられます。

何がなんだかわからないという方のために、今回の記事では「真上から見た時の重心移動の軌跡」を描いてみました。

 

★真上から見たときの身体重心移動の軌跡★

①:構えたときは、その打者の構えによってどこかしらに重心が定まる。通常は「両足のかかと・つまさき同士を結んでできる四角形(支持基底面)のなかのどこか」に収まります。もし、構えの時点でこの四角形の外に重心が出てしまうと、バランスを保つために余計な筋肉の緊張を招くことになります。

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②:足を上げることによって、重心は一度四角形のホームベース側に寄る&捕手側へと移動します。重心が一度四角形のホームベース側に寄ることによって、身体のバランスを保つために軸足のもも裏が強制伸張され(床引きデッドリフトの始動が、つま先体重のほうがスムーズなのと原理は同じ)、のちの軸足股関節伸展→軸足股関節内旋(伸張反射による)へとつながります。なお、真横から見た場合はこの②の時点が重心の最高到達点となります。

軸足に荷重する時間が比較的長い日本人打者は、「捕手側への重心の移動が大きい&捕手側に重心が留まっている時間が長い」(つまり、②の引き幅が大きく かつ ②のあたりにとどまる時間が長い)という特徴があります。

また、この打ち方だと軸足の内転筋群(股関節の内旋を担当。薄筋など)の伸張反射の度合いは、いろいろな理由があって必然的に弱くなります。日本人打者の軸足がつま先立ちになりにくいor浮きにくい一因です。

 

逆に、足を上げてすぐ下ろす打者(MLBの打者など)は、「足を上げた時点で、重心はあまり捕手側に移動しない&捕手側に重心が留まっている時間が短い」(つまり、②の捕手方向への引き幅が小さく かつ ②のあたりにとどまる時間も短い)といえます。当たり前ですが、打撃の安定性や確実性・再現性などを考えるとMLBの打者方式のほうが優れています。

また、MLB方式のほうが軸足内転筋を強力に伸張させることができるので、軸足股関節の鋭い内旋も起きやすくなります。軸足股関節が鋭く内旋することによって、打者の身体の回転半径が小さくなる(回転軸の周りに身体のパーツが密集しているほうが回転しやすいということ)ため、より高速で身体を回転させることができるようになる…というメリットがあります。

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③:②のところから重心は、「軸足から伝わる地面反力、身体の姿勢制御」によってコントロールされながら下に降りていきます(位置エネルギーを運動エネルギーへと変換しつつ)。この③の重心軌道は直線に近いことが望ましいだろう…というのは前回述べたとおりです。左右に蛇行する自動車のスピードが上がらないのと同様です。

※②から③にかけての重心の下り方は、「横から見た場合サイクロイド曲線&投手方向から見ると直線」になる可能性も残っています。これについては「バッティング時の重心移動の軌跡」について正確な実測データを自分が持っていないため断言できません。

なお、サイクロイド曲線は数学的には「半径 a の円が一直線 ( x 軸) 上を滑らないで転がるときの,円周上の1点 P の軌跡」で、変数Θと定数aを用いて「xa(θ- sin θ) ,ya(1- cos θ)」で媒介変数表示される曲線です。高校の数学Ⅲで扱う内容です。サイクロイド曲線には物理的な意味もあり、「サイクロイド曲線の軌道をたどって滑り台を降りると、直線や円軌道の場合よりも短い時間で降下できる」ことから、最速降下曲線とも呼ばれます。

 

④:「並進運動をしてきた身体重心に対して地面反力が作用することによって回転運動が起きる」というのは前回の記事でも紹介した通りです。なお、バッティングのインパクト時には「前足かかと外側(アウトエッジ)ー身体重心ー頭部を結んだ線が、真横から見て一直線になっていること」が理想です。

 

…というわけで、バッティングの身体重心がたどる軌跡について、「真横から」「真上から」「投手側から」つまりxy平面・yz平面・zx平面とアングルを変えつつ、かつ時間軸も交えて見てきました。これで一応、バッティングのときの身体重心の軌跡を四次元的に把握できるはずです。

 

「重心はこういうふうに移動するのだな」ということが知識としてわかっていて、

かつ「自分の身体重心の位置を把握するための訓練を欠かさず続けている人」であれば、

今回の記事は「良い感覚を最短時間で手にするための道具」として使えるはずです。

少なくとも、変な道に迷い込んで時間を大幅にロスすることはなくなるはずです。

 

野球のプレーというのは、最終的にはすべて「選手個人の感覚頼み」にはなりますが、知識と理論をうまく使えばその「目指す感覚」を最短経路で手に入れることもできるのです。

ぜひご活用ください。

 

※余談ですが、アメリカの野球スクールはこの「重心移動の軌跡」や「重心感覚の把握」といった観点がやや不足気味なのかな、とも思います。筋力や筋量といった面は素晴らしいので、そこさえわかってしまえば…という感じでしょう。きっと手が付けられなくなるはずです。

 

ピッチングのとき、身体重心はどういう軌道を描く?

では、ピッチングのときはどうなのでしょうか?

「身体重心とは運動の代表点」であり、かつ「身体重心とは身体の姿勢によってどこか一点にかならず定まるもの」なのですから、ピッチングにおける重心移動の軌跡を解き明かすことには意味があるはずです。バッティングと同様、「いい感覚を最短で身に付ける」ための方便にもなるでしょう。

 

例によって三方向から見た場合、おそらく重心の軌跡はこのような軌跡になると思われます。

(https://www.youtube.com/watch?v=aNmhc0WrKJMより)

(https://www.youtube.com/watch?v=ORQbyN5NbTcより)

(https://www.youtube.com/watch?v=ORQbyN5NbTcより)

 

もちろん、私の手元に「野球選手プレー画像をスキャンするだけで、その選手の重心位置をたちどころに測ってくれる便利な装置」があるわけではないので、重心の軌道については単に推測しているにすぎません(というわけなので、身体重心の辿る軌跡についてのデータ、募集中です・・・ご存知の方いらっしゃれば連絡ください)。

 

具体的には、このような↓条件を組み合わせて重心の軌道を推測しました。

・身体重心は、身体の姿勢によって一点に定まる。

・身体重心が支持基底面(軸足と踏み込み足のかかと・つまさき同士を結んでできる四角形のこと)のなかにおさまったまま、ピッチングとバッティングが行われるだろう。なぜなら、支持基底面を外れると身体のバランスが崩れるから

・まず位置エネルギーを得てそれを運動エネルギーに変換するのだから、重心は一度高所に上がるだろう

・軸足もも裏の伸張反射を使うために、身体重心は一度つま先側へと寄り道するだろう

・位置エネルギーを運動エネルギーに変換していく間、身体重心の軌跡が左右にぶれるのはよくないだろう(蛇行する車はスピードが出ない)

・踏み込み時の身体重心は、三関節直列状態の踏み込み足から上ってくる地面反力とかなり近い位置にあるだろう

 

というわけで、ピッチングの重心について図示した三枚の画像をよく見てみるとわかるように、結局

「バッティング・ピッチングという2つの動作において、重心が描き出す軌跡はだいたい同じである(地面反力との位置関係だけが異なる)」

と私は考えています。

 

 

余談:身体重心について3点補足

※余談ですが、身体重心というのは

①姿勢によって変わる ②体の外に出ることもある ③全身の運動を表す代表点である

という性質を持ったものです。

 

ここでは特に①、②について説明します。

 

たとえば、気をつけ!をした状態では、身長の54-56%程度のところ(だいたい仙骨のやや前方あたり)に重心があります。

そこから両腕を上げると身長の4-5%程度(だいたい8cm程度)重心が上がり、

片足を曲げて上げると身長の6-7%程度(約10cm)上がります。

「両腕上げる+片足を曲げて上げる」と、身長の11-13%程度(約18cm)重心位置が上昇します。

要するに、「姿勢によって身体重心の位置は変わる」ということです。

(参考:「バイオメカニクス20講」

 

そして、身体重心は身体の外に出ることもあります。

↓の図の右側にあるような姿勢をとる場合を考えてみるとわかりやすいと思います。

(http://mokuyokai.blog18.fc2.com/blog-entry-195.htmlより)

 

重心という言葉は抽象的なものなのでイメージしづらいかもしれません。

重心は「重心ってなんだ、目に見える形で出してみろ」と言われても実物は出せませんが、概念として想定することはできます。つまり「実在はしないが、存在はする」ものが重心なのです。とりあえずは、小難しく考えなくても「バットを、グリップからヘッドまで順番に二本の指でつまむように持ったとき、バットがひとりでに回転を始めない点のこと」とでも理解しておけば大丈夫です。

 

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バッティングとピッチングには共通していることがたくさんあるよね…というのは野球をやっている・知っている人の実感としてあると思うのですが、

↑のように分解して分析してみると「やっぱり!」という感じでしょうか。

 

とりあえず、今回の記事までで

「ピッチング・バッティングにおける身体重心移動の軌跡はどうなっているか?」

という話題についてのおおまかな解説は終了です。

 

そしてこれからは、いよいよ本題である「重心移動と、三関節直列+トリプルエクステンションとの関係」というテーマで、自分の考えを書いていきます。あと数記事で終了する予定ですので、ぜひお付き合いをお願いします。

では、また明日。

 

 

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