バッティングに「意識」をどこまで介在させるか? という問題について

   

バッティングに「意識」をどこまで介在させるか? という問題について

「意識しすぎると良くない」、でも「意識しなさすぎるのもまた効率が良くない」というジレンマ

意識は万能薬じゃない

バッティングのメカニクス界隈のツイートばかり読んでいると、ついつい

「バッティングは意識だけで何とかなるものだ」

と思ってしまいがちになります。

 

しかし、それは大きな間違い。

バッティングは「意識オンリー」でなんとかなるほど甘くありません。

 

なぜバッティングは意識だけで処理できないのか?

基本的に、試合の打席でメカニクスについてあれこれ考えている余裕はない。相手投手は全力で速いボールと変化球を放ってくるのだから、反射と反応だけで仕留められるようにしておく必要がある

・バッティングのスイングというのはたかだか0.2秒くらいの間に「振り出して、打ち終わる」のだから、意識が果たせる役割など微々たるもの

身体の各部分をいっせいに協調させながら動かさなければならないわけだから、そもそも意識だけですべてを制御しきれるものじゃない。人間の意識というのは基本的に1-2個程度のものにしか同時処理できない

意識してしまうことによって動きがぎこちなくなることもある。たとえば、「利き腕に意識を集中させすぎること」はイップスの原因になる

 

打席で意識できるのは、せいぜい「ボールを強く叩くこと」「インコースにボールが来ると思っておく」「右方向に打つと決めておく」「変化球が来たらとにかくフルスイングする」とか、その程度のことでしょう。

「右手をここからこう出して…」とか「軸足の内旋を鋭く…」といった細かいことまで意識している余裕はまったくないはずです。

頭でっかちになりすぎては打てるボールも打ち損じてしまいます。

 

むしろ、

「いかに意識に頼らないでバッティングを遂行できるか?」

のほうが重要であると言えそうです。

 

では、そのためにはどんなアプローチができるでしょうか?

 

 

意識を使って「感覚・無意識・反射・反応」を御しよう。そのためには「練習時点での工夫」が不可欠!

基本的な図としては、

「意識 → 無意識・感覚・反射・反応」

こういう方向へのはたらきかけをメインにします。

 

さきほど「いかに意識に頼らないかが大事」「意識では処理しきれない」ということを言いましたが、あくまでもそれは試合の打席のなかの話。

練習ではむしろ「いかに意識をうまく使うか=いかに、意識を使って、意識ではない部分をうまく制御するか?」という面が重要でしょう。練習で意識を積極的に使って、試合では無意識だけで打てるようにすればいい。

 

自動車の運転や自転車なんかはまさにそうだと思いますが、最初はぜんぶ意識的にやります。

そのうち慣れてくると、無意識でこなせるようになります。

バッティングはもう少し複雑ですが、基本的には同じ。

 

練習ではガッツリ「意識」を使う。

意識を使って、「無意識・感覚・反射・反応」をコントロールしておく。

 

では、どのくらいまでコントロールすればいいか?

それは、「試合で、ほぼ完全に無意識で打てるくらいに」です。

そのレベルまで持っていけない練習は、練習とは呼べない…とすら私は思っています。王さんが「結果の出ない努力は努力とは呼べない」ということを仰っておられたそうですが、私も同じような考えです。「試合でほぼ無意識で打てる」くらいまで仕上げたら、誰だって打てるはずです。

 

その意味で、世の野球選手の99.9%の練習は、非常に厳しい言い方ですが、「やっているつもりになっているだけ」です。非常に熱心に練習されている方も多いことを承知で言っています。たいていの場合は「やっているつもりになっているだけ」です。プロアマ問わず。

 

では、どう工夫するか? → カギは「インプット=意図を持った反復」と「アウトプット=インプットで得た感覚を統合する」である

先ほど書いたことを、もう一度。

 

練習ではガッツリ「意識」を使う。

意識を使って、「無意識・感覚・反射・反応」をコントロールしておく。

では、どのくらいまでコントロールすればいいか?

それは、「試合で、ほぼ完全に無意識で打てるくらいに」

 

さて、「どのくらいまで」はある程度きっちりと示しましたが、

「どのように」は触れませんでした。

ここでは「どのようにして、試合でほぼ完全に無意識で打てるくらいに仕上げるか?」を考えます。

 

その具体的な方策としては、

「インプットと、アウトプットの区別」

が挙げられます。

 

インプット…低出力・高回数。基本的な動きを染み込ませる。低出力のためケガのリスク極めて小さい。ドリル系のメニュー。カチ上げティーや各種素振りなど。

アウトプット…高出力・低~中回数。インプットで得た感覚などを、スイングの形に統合する。高出力のためケガのリスクがややある。実戦に近い。正面ティーや置きロングティー・コース別置きティーなど。

 

具体的には、こんな感じです。

 

★インプット系メニューの例★

・各種素振り・ドリル系を行う。

→「抜いた落ち球を打つときのスイング」をドリルとして行う

→「インハイ対応」のための素振りドリルを行う

→「グリップと足の分離(画像参照)」や「力こぶ見せ」といったドリルを行う

→「カチ上げティー」などを行う

→その他、自分の打撃に必要だと思われるドリル系のメニューをこなしていく。インプット系のメニューは、メニューを絞り込んでとにかく数をこなして感覚をつかむ。

 

★アウトプット系メニューの例★

・「置きティーでインハイに置いて打つ」のセット数をこなし、インハイに反射的に反応できるようにする

・各コースに置きティーをセットして、反射的にバットが出るようにする

・正面ティーでひたすら「前から来た真ん中付近のボールを的確に打ち返し続ける訓練」を積む。甘いコースに来たボールは変化球だろうが直球だろうが一発で仕留められるようにする

・正面ティーで、たまに「抜いた落ち球」のようなものを投げてもらう。普通のボールとミックスするとなお良し

 

 

もちろん、前提として、それぞれのドリルの種類について知っていることと、ドリルの意図について知っていることと、最低限のスイングの仕組みについて知っていること…などが挙げられます。

選手にも最低限そのくらいの知識はあっていいと思います。そうでないと、指導者の人におんぶにだっこになるので。

 

「感覚と無意識と反射と反応」を高いレベルで制御できれば、打席では「まるで朝起きて冷蔵庫から飲み物を取り出すときのように」良い当たりを打てる

 

私がよく使うたとえ話で、

「WBCの決勝で自分がチャンスの打席に立ったとして、打って当然と思えるくらいにはなろうよ」

と。打ち損じたら「自分らしくない」。打ったら「よしよし、自分らしいな」です。

 

変な話ですが、もし自分が

「日本中に注目されながら、目の前にある普通のペットボトルのふたを空けられるかどうかチャレンジ」

という場面の当事者になったとき、緊張はするかもしれませんが、普通にペットボトルのふたくらい空けられますよね? いくら緊張していようとも。

 

それと同じです。

ペットボトルのふたを空けるというのは、無意識だけで100%遂行できてしまうことです。

バッティングも似たようなもので、無意識だけで遂行できるレベルまで持っていけばいいんです。

 

おわりに:やはり無の境地こそ至高

というわけで、最終的には

「何も考えずに打席に立って、特に何も考えずに当たり前に打つ」

ことが理想です。

 

練習は「試合で何も考えないで打つために」するもので、そのレベルにまで達しないのは練習とは言えない。逆に言うと、練習では「試合の打席で何も考えない境地」に達するまで仕上げさえすればそれで良い。

そして、練習では徹底的に意識を使って、無意識とか感覚とか反射とか反応をコントロールしていく。

 

そういうアプローチが良いだろうな、と私は思っています。

「ホームラン量産マニュアル」、Amazonにて販売中です!

ホームラン量産マニュアル

 - バッティング, 動作, 野球, 野球アイディア