「フィジカル10カ条」なるものを考えてみた 後編

   

「フィジカル10カ条」なるものを考えてみた 後編

「フィジカル・動作・マインド」のなかで一番雑にやっている人が多い!

前回の復習

★フィジカル10カ条★

1.フィジカルとは「野球選手の身体面に関するすべてのこと」である

2.人間の身体は、一瞬一瞬絶えず変化を繰り返している。二度と過去と同じではありえない

3.フィジカルは正しい方法で鍛えれば誰でも伸びるが、間違った方法を採用するとケガやパフォーマンスダウンにつながる

4.どれだけ質の良い情報をもとにフィジカル強化を行うかによって、フィジカル向上のスピードは変わる

5.フィジカル強化には「閾値を超えた適切な食事:的確なトレーニング:十分な休養」が重要

6.どんなにセンスのある選手であっても、「自分のフィジカルの限界以上のプレー」は絶対にできない

7.動作やマインドのレベルがまったく一緒なら、フィジカルで勝負が決まる

8.フィジカルが強いことは、それだけで武器になる

9.フィジカルは、カテゴリーが高くなるほど「速く、大きく、強く、巧く」という方向へと向かっていく

10.まずは「どうなりたいか」という選手像をはっきりと設定しないと、フィジカル強化はしようがない

 

6.どんなにセンスのある選手であっても、「自分のフィジカルの限界以上のプレー」は絶対にできない

どんなにセンスのある選手でも、その選手の肉体上のプレーはできません。

逆に言うと、

「その選手の最終的な限界を決めるのは、その選手の肉体である」

ということです。

 

これはイチロー選手であってもバリー・ボンズ選手であっても柳田選手であっても一緒。

どんなにセンスがあろうと、どんなに有名な選手であろうと、その選手はその選手の肉体以上のプレーはできないのです。

「自分のセンスはこの程度だ」と思っている人、本当は肉体に原因があるのかもしれません。

 

元西武・ロッテのGG佐藤選手のエピソード。

法政大学時代、同じショートでのちにプロ入りした阿部真宏選手にレギュラーを奪われて腐っていたところ、

「待てよ、阿部には技術とかセンスじゃかないっこない。筋トレでパワーアップして超大型内野手になって打ちまくれば勝てるんじゃないか!?」

とひらめいたそうです。

 

そこでさっそく、同じ部屋の筋トレに詳しい先輩(知る人ぞ知る強打者・根鈴雄次さん)に「筋トレしてみたいんですけど、どうですか?」と相談。

「おまえ、イケるよ」

との根鈴さんの一言により、肉体改造を開始。

 

冷蔵庫にボディビルダーの写真を貼ったり、朝早く起き出してプロテインを飲んでからまた寝たり…など、短期集中の徹底した肉体改造の結果体重と筋肉が大幅に増え、3年春から秋にかけて80kg→104kgへと24kg増量。一夏でフィジカルモンスターへと変貌しました。肉体改造の結果、それまでいくら頑張っても飛ばなかった打球が法政大学グラウンドの「田淵ネット」を軽々と超えるようになり、のちのプロ入りへとつながりました。

ちなみにGG佐藤選手はMLBのマイナーテストにも合格しており、その際には110kgまで増量していたとか……。どこのテストを受けに行っても「デカい!」という強烈なインパクトを与えることができたそうです。西部の伊東監督(当時)にも「デカい」ことを気に入られて採用されたとか。当時西部の主砲だったカブレラ選手とイメージが被ったようです。とにかく「デカくてパワーがある選手」というのは人目を引きますよね。

 

もちろん、誰でもむやみに増やせばいいというものでもないのですが(SAQ能力などとの兼ね合いもある)、

少なくともバッティングの飛距離に限ってみた場合、ガッツリ筋トレしてガッツリご飯を食べるという形で増量すればまず間違いなく打球の飛距離はグンと伸びます。

 

繰り返しますが、

「その選手の最終的な限界を決めるのは、その選手の肉体である」

「肉体以上のプレーは絶対にできない」

のです。

 

7.動作やマインドのレベルがまったく一緒なら、フィジカルで勝負が決まる

同じくらいセンスがある人同士の対決なら、まず間違いなくフィジカルが強いほうが勝つでしょう。

 

では、他の場合はどうでしょうか。

 

「センスがとてもあるA君」と「A君に比べるとセンスはないB君」なら、これはA君の勝ちです。

しかし、「センスがとてもあるA君」と「A君に比べるとセンスは乏しいけど、有り余るフィジカルの強さを持っているB君」なら、勝負はわかりません。たとえA君に勝てなくても、B君は素材を見込まれてコンバートされ、ほかのポジションで打撃キャラとして活躍できるかもしれません。

 

「動作やマインドのレベルがまったく一緒なら、フィジカルで勝負が決まる」

ということも念頭に置いておく必要があります。

 

8.フィジカルが強いことは、それだけで武器になる

GG佐藤選手の例でも紹介しましたが、

「フィジカルが圧倒的に強い=目立つ」

「フィジカルが圧倒的に強い=指導者からの期待値が高い」

「フィジカルが圧倒的に強い=可能性が広がる」

「フィジカルが圧倒的に強い=化ければプロを狙える」

という感じで、とにかくフィジカルが圧倒的に強いことにはメリットしかありません。

 

どのみち、「弱いよりも強いほうがよい」のです。

フィジカルが強いだけで成功するわけではありませんが、強いにこしたことはありません。

 

特に、日本の野球界はまだ「ベンチ130kg→すげー」「スクワット180kg→すげー」「デッド200kg→すげー」と言われる程度のレベルにあります。

私からすると「いやいや、そのくらいボディビルの人やウェイトリフティングの人にとってはアップみたいなものだよ」という印象です。もちろん1RMがすごければいいというわけでもない(力の立ち上がり率や挙上速度なども重要です)のですが、少なくとも「このくらい挙がる」という基準にはできます。

 

その日本の野球界のなかで、たとえば

「ベンチ150kg、スクワット200kg×10、デッド250kg、クリーン130kgを、わりと余裕でこなせる」

「伸肘倒立からの倒立歩き50メートルができる」

「人間こいのぼりができる」

「ボックスジャンプ130cm、片足で90cm」

「順手ストリクトの懸垂をテンポ崩さず30回」

このくらいまで鍛え上げれば、まず間違いなくフィジカルで目立てます。

 

ここまで鍛え上げればもう「勝ち」です。

「こいつはヤバい、化け物だ!」

とチームメイトにも指導者にも思われることでしょう。

たとえセンスに恵まれなくても、「こいつを眠らせておくのはもったいない」と思われるはずです。

それだけで与えられるチャンスが増えます。

(→ちなみに、「大学野球で飛び抜けたいなら、このくらいの身体能力は欲しいよねという基準を作ってみた(初版)という記事を過去に書いています。参考までに)

 

そしてさらに重要なことに、そういうレベルに達するのは実はそれほど難しくないのです。

「たくさん&バランスよく食べて、たくさん&きっちり鍛えて、たくさん寝る」という生活を繰り返していけば、間違いなくそういう方向へと近づいていけます。人間の身体は、ある程度正しい方法でさえあれば、鍛えれば鍛えるほどそれに応えるように伸びていくものですから。最初は細くても弱くても、徹底してやれば驚くほど強くなります。

 

乱暴な言い方ですが、たとえばベンチプレスなんかはやり込めば誰でも簡単に100kgは超えます。たいていの人はそもそもそこまでやっていないだけです。オーバーワークとかケガが怖いとかいうレベルですらなく、単純に「やってない」のです。

 

フィジカル強化は、情報さえしっかり集めるようにすればまず間違いなく成功させることが可能です。

フィジカルを徹底的に鍛え上げて、選手としての幅を広げましょう。

 

9.フィジカルは、カテゴリーが高くなるほど「速く、大きく、強く、巧く」という方向へと向かっていく

少年野球よりも中学野球の方が、中学野球よりも高校野球の方が、

高校野球よりも大学野球の方が、大学野球よりも社会人野球の方が、

社会人野球よりも日本プロ野球の方が、日本プロ野球よりもメジャーリーグの方が、

「速い」

「デカい」

「強い」

「巧い」

「飛ばす」

ものです。

実際、2016年時点ではNPBの平均球速は確か141km/h前後、MLBは150km/hを超えていました。

あるいは、ベンチ100kgは高校野球だとすごいですが、プロ野球だと平均くらいで、MLBではアップ程度でしょう。

そのくらいの差があります。

 

レベルが高くなればなるほどフィジカルのレベルも上がります。

というよりは、フィジカルその他の水準が軒並み高いからこそ「レベルが高い」と呼ぶのでしょう。

 

ということは、上のレベルに挑戦したいなら

「まずフィジカルだけでも上のカテゴリーに通用するように引き上げる」

必要がありますね。現状に甘んじている場合ではないのです。

 

10.まずは「どうなりたいか」という選手像をはっきりと設定しないと、フィジカル強化はしようがない

1-9.を読んで

「よし、じゃあフィジカルを強化しよう!」

と思った方へ。

 

まずはこれを考えてみてください。

「自分はどのレベルまで野球をやってみたいのか? どういうところに辿りつきたいのか?」

 

正直に。

あくまで、できそうかできそうじゃないか…ではなく、「やりたいかやりたくないか」で決めましょう。

 

たいていの人は「できない=やりたくない」になってしまっているので、

できなさそうなことを「やりたくないこと」と誤認しています。

本当は心の奥ではやりたいはずなのに、できなさそうだという予想のもとに「いや、やりたくないだけなんだ」とごまかしていると思います。本当は、たいていの選手が「プロ野球でホームラン王になって騒がれたい」といった欲を持っているはずです。

 

そういった「できるかできないか」という枠組みをいったん脇にどけて、

「どこまで行きたいのか」をまずは考えてみましょう。

そこからフィジカル強化のレベルを逆算するのです。

目指す基準を満たすだけのフィジカルさえ用意すれば、フィジカル強化に関しては「やることはやった」と胸を張れます。

 

どこまで行きたいのかがわかれば、フィジカル強化の意識も変わってくるはずです。

高校時代の大谷翔平選手は、すでに「世界一の野球選手になる」という目標を立てていました。

大谷選手の食事やトレーニングは「世界一」というレベルに達するべく組まれています。

 

現在破竹の勢いで活躍を続ける大谷選手ですが、少なくともフィジカルのレベルに関していえば十分にメジャー級です。メジャー級になるためのトレーニングや食事を逆算してきたからこそ、そのレベルに達することができているわけです。

もしも目標がなかったとしたら、とてもあのレベルには到達できなかったことでしょう。

 

おわりに

ちなみに個人的には、大谷選手には「宇宙一」とか「人類史上最高」とか「スポーツだけじゃなくて学問や俳優業や社会貢献やビジネスなどでも世界一」というレベルを目指してほしいなと思います。メジャーリーグで大活躍している現状からすると、「世界一の野球選手」というのは近すぎる目標のように思えます。

聡明な大谷選手のことですから、きっと彼なりの新しいゴールを見つけているのだろうとは思いますが。

 

最後に復習を。

★フィジカル10カ条★

1.フィジカルとは「野球選手の身体面に関するすべてのこと」である

2.人間の身体は、一瞬一瞬絶えず変化を繰り返している。二度と過去と同じではありえない

3.フィジカルは正しい方法で鍛えれば誰でも伸びるが、間違った方法を採用するとケガやパフォーマンスダウンにつながる

4.どれだけ質の良い情報をもとにフィジカル強化を行うかによって、フィジカル向上のスピードは変わる

5.フィジカル強化には「閾値を超えた適切な食事:的確なトレーニング:十分な休養」が重要

6.どんなにセンスのある選手であっても、「自分のフィジカルの限界以上のプレー」は絶対にできない

7.動作やマインドのレベルがまったく一緒なら、フィジカルで勝負が決まる

8.フィジカルが強いことは、それだけで武器になる

9.フィジカルは、カテゴリーが高くなるほど「速く、大きく、強く、巧く」という方向へと向かっていく

10.まずは「どうなりたいか」という選手像をはっきりと設定しないと、フィジカル強化はしようがない

今回紹介したフィジカル10カ条、今後もぽちぽち登場する予定です。

 

では、また明日!

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