フィジカル強化の「10本の柱」

   

フィジカル強化の「10本の柱」

とりあえず10項目、これらを組み合わせてトレーニングしていく

この間書いた

「フィジカル10カ条なるものを考えてみた 前編」

「フィジカル10カ条なるものを考えてみた 後編」

では、

「なぜフィジカルを鍛えるのか?」

「フィジカルを鍛える意味とは何か?」

という、かなり根本的な「なぜ」=Whyについて書きました。

 

今回は

「どのようにフィジカルを鍛えるのか?

「どのように鍛えるとどうなるのか?」

という、「どのように」=Howについて書きます。

 

フィジカル強化の10本の柱

1:「ゴール設定・コンフォートゾーン描写・アファメーション継続」

2:「筋肉量と最大筋力の獲得」

3「スプリント・パワー養成・プライオメトリクス・RFD・SAQ」

4:「身体重心感知能力と身体操作能力」

5:「可動域と柔軟性の最適化」

6:「食事・サプリメンテーション・コンディショニング」

7:「基本動作習得とキャリーオーバー」

8:「休養・ピリオダイゼーション・テーパリング・トレーニングのプログラミング」

9:「ケガリスクの軽減とウォーミングアップ」

10:「情報のアップデートと方向修正」

 

この10種類、最近考えたものですが、けっこう気に入っています。

それぞれについて、ごく簡単に説明を加えていきます。

 

1:「ゴール設定・コンフォートゾーン描写・アファメーション継続」

ゴール設定…自分がプレイヤーとしてどういうレベルに達したいのか? どういう選手になりたいのか? という方向性を設定する。フィジカル強化に限らず、野球に限らず、人間として達成したいものを正直に書き出す

コンフォートゾーン描写…ゴールを達成している自分が当然備えているべき要素・ゴールを達成している地点から見える風景 をビジュアライズする。文章化する。

アファメーション継続…「ゴールを達成した自分」のコンフォートゾーンを、「今ここに生きている自分」のコンフォートゾーンと取り替えていく作業。具体的には、コンフォートゾーン描写で行ったものを毎日機を見て自分徹底的に刷り込んでいく。

 

2:「筋肉量と最大筋力の獲得」

パワーやスピード云々の前に、

「ある程度の筋肉量と筋力」

は絶対に必要。

 

どの程度必要かは1.「ゴール設定・コンフォートゾーン描写・アファメーション継続」により決定される。

 

3「スプリント・パワー養成・プライオメトリクス・RFD・SAQ」

このあたりをさぼっている野球選手が多いと感じる。

筋トレで筋肥大だけさせてパワー養成やプライオメトリクスを軽んじたり。

スクワットなどはやるのにスプリントメニューはやらなかったり。

もったいない。

 

RFDとは「力の立ち上がり率」のことで、

同じ100の力を出せる人でも「0.3秒で100まで持っていける人」と

「0.3秒では70しか出せず、0.5秒で100まで持っていける人」とが存在する。

前者を「力の立ち上がり率が高い」、後者を「力の立ち上がり率が低い」と表現する。

 

さて、野球で考えてみると、投球や打撃動作というのは、予備動作を除くと、本格的な筋力の発揮はわずか0.数秒の間に完了する。

ということは、普段から

「ゆっくり時間をかけて(たとえばスクワットなら1レップ3秒程度の人が多い)重いものを上げ下げする」

といったトレーニングしかしていない人は、そこで損をする可能性がある。「一気に力を立ち上げて100パーセントまで持っていく」という訓練を積んでいないため、せっかくの筋力(たとえば股関節伸展の力や膝関節伸展の力など)が100%出せないという状況になるかもしれないのである。

 

プライオメトリクスというのは「SSC(伸張反射。筋肉が伸ばされると反射的に縮むこと)や直列弾性要素(筋肉自体が持っているバネのような構造)による運動エネルギーの有効活用を最大限活用すること」に主眼を置いている。これももちろん大切である。

 

武井壮さんのトレーニング動画を見ていると、そのあたりを非常に気にされているなあ、と感じる。「速く長い距離を動かす」「全身に負荷を分散させる」「スプリントメニュー多め」など。

 

4:「身体重心感知能力と身体操作能力」

身体重心感知能力が高い選手は上手くなるのが早い。

というのも、野球のピッチングやバッティングというのは結局「並進運動→回転運動」であり、その運動の中心はほかでもない「重心」だからである。物体は重心を中心にして運動する。

たとえば、スムーズな並進運動のためには「重心に対してうまく地面反力などを作用させながら、重心を直線的に運んでいく」ことが必要である。また、効率の良い回転運動のためには「重心を中心にきれいに回転すること」が必要である。

ということは、重心を感じる能力に乏しい人は大分損をしているはずである。逆に、重心をうまく感知できる人はかなり得をしているはずだ。

 

倒立や四股などで重心感知能力を鍛えつつ、同時に身体操作能力も磨いてやること。

自分の身体を満足に扱えないようではケガのリスクやプレーのクオリティにも影響する。

 

5:「可動域と柔軟性の最適化」

「最適化」というのがミソである。

柔らかければ良いというものでもないし、静的ストレッチだけで事足りるというものでもない。

必要な柔軟性や可動域というのは、その選手の身体的特徴やプレースタイルによって逐一決定されるべきだと思う。スポーツ整形外科医やトレーナーや柔道整復師や理学療法士の方に診てもらうのもいいが、できるだけ自分で考えておきたい。

 

6:「食事・サプリメンテーション・コンディショニング」

思うようにフィジカル強化が進まないという選手には

「食事が足りていない」

「食事のバランスが悪い」

「睡眠時間や休養が足りない」

というポイントに該当していないかどうかのセルフチェックをお願いしたい。

 

「調子が上がらないときは、睡眠と食事を見直してみるとよい」と落合博満氏も著書で述べているが、トレーニングでも同様である。「自分では食べていると思っていても実は食べていない人」は案外多いし、知らず知らずのうちにトレーニングし過ぎている人も多い(トレーニングしなさすぎの人も多い)。

 

7:「基本動作習得とキャリーオーバー」

投球・打撃というのは基本的に「地面から反ってくる力を上手に使うこと」が必要である。

その「地面反力を使う感覚を覚える」「地面反力をうまく使える動作に習熟する」というのは投球にも打撃にも共通だから、ここは一括でトレーニング(習得)してしまいたい。これが「基本動作習得」である。

 

キャリーオーバーというのは「学習の転移」とも呼べる。

地面反力を思いっきり使うトレーニング(たとえばメディシン投げ上げ)の直後にバッティング練習を行うと、いつもより打球飛距離が上がったりする。これがキャリーオーバー(移行)である。

 

8:「休養・ピリオダイゼーション・テーパリング・トレーニングのプログラミング」

要するに

「年間を通してどうトレーニングするか」

「試合に向けてどうピークを持っていくか」

「どのようなトレーニング計画で選手生命が終わるまでを過ごすか」

といったことを、よく調べたうえできっちり計画しておくこと。

 

これができないと目先の成果に食いつくあまり時間を浪費したりする。結果的には大きな遠回りをする恐れがある。

 

9:「ケガリスクの軽減とウォーミングアップ」

「ケガを避けること」は野球選手の最重要課題の一つだと思う。

一度重いケガをすると数か月から数年間、場合によっては競技人生が終わることもありえる。

フィジカル強化という点から見ても技術の向上という点から見ても、ケガ・故障はあまりにも痛い。

できるだけそのリスクを減らす必要がある。

 

もちろん完全にケガをしないということは難しい(イチロー選手ですらケガをすることはある)ので、

結局は「リスクマネジメント」の話になる。本当の本当にケガをしたくないならそもそもスポーツなんてやらないで核シェルターで読書でもしていればいい。

 

「1.ゴール設定」で定めたゴールを達成するためには、

ケガのリスクマネジメント=ケガのリスク最適化

が不可欠だと思う。イチロー選手が頭から飛び込まない、投手がヘッドスライディングをしないというのはその好例である。

 

また、ウォーミングアップというのはケガ防止以外にも「何かを身に付ける」ために使える。

アップはほぼ毎日するものだが、毎日やるということは、だいたい年間300日くらいやることになる。

アップの時間にちょっとした「毎日やっておきたいこと」を組み込んでおくと、簡単に身に付けることができるはずである。

 

10:「情報のアップデートと方向修正」

1-9を、常に

「回していく」

こと。

 

つまり、情報のアップデートと方向修正を怠らないこと。

自分がいるスポーツ界の状況や世の中の状況や最先端の研究というのはめまぐるしいスピードで変わっていくし、自分自身の身体も絶えず変化を続けている。いつまでも過去にとらわれたままでは、時代に置いて行かれる。

 

最低限「アップデートし続けること」「自分の進む方向を絶えずチェックし続けること」さえ続ければ、置いて行かれることはないだろう。「セカンドキャリア形成」「社会に通用する人間の育成」という観点から見ても、選手が自分でできる範囲のことは、自分で最新情報をチェックしつつできるだけのことをやってしまうのが良いと思う。

どうしても手が回らないところや、クオリティの高いものが欲しい場合だけは、外注=自分以外の人にやってもらえばよい。現に大谷翔平選手やダルビッシュ選手などはそうしている。

 

とにかく、常に自分でもフィジカル強化について勉強・研究し続けること。

「置いて行かれる」ということは非常に痛い。

逆に、「他の人を置いて行く」は非常に強い。

 

みんなが旧態依然とした方法をやっているところに、三十年くらい先の方法論でやっていれば、圧倒的な差を付けることができる。それができる資格があるのは、勉強し続けた人だけである。

 

おわりに

フィジカル強化の10本の柱

1:「ゴール設定・コンフォートゾーン描写・アファメーション継続」

2:「筋肉量と最大筋力の獲得」

3「スプリント・パワー養成・プライオメトリクス・RFD・SAQ」

4:「身体重心感知能力と身体操作能力」

5:「可動域と柔軟性の最適化」

6:「食事・サプリメンテーション・コンディショニング」

7:「基本動作習得とキャリーオーバー」

8:「休養・ピリオダイゼーション・テーパリング・トレーニングのプログラミング」

9:「ケガリスクの軽減とウォーミングアップ」

10:「情報のアップデートと方向修正」

 

この10本の柱を軸にして日々のフィジカル強化に勤しんでもらえれば、相当なアドバンテージを得ることができると思う。

なぜなら、たいていの選手にとってフィジカル強化とはせいぜい「ベンチプレス1RMで何kg上がるか」「体重が何kg増えたか」といった程度のことでしかないからである。そういった、「頭を使わない選手」というのはいずれ淘汰されていくだろう。

 

これまではたいていの選手が頭を使っていなかったので、「素質の良さ」で差が付いていた。

しかし、近年はフィジカル強化や動作改善などの良質な情報が世にあふれるようになったので、これからは頭を使う選手ほど成功できるようになっていくだろう。どんどん「素質が良い」だけでは通用しなくなっていくはずである。現にMLBはそうなりつつある。日本も遅かれ早かれそうなるだろうと思う。

 

淘汰圧がどんどん高くなれば、「野球部=体育会系、バカ」というあまり嬉しくない図式は滅び去るはずである。むしろ野球界こそが世界一優れた人材の輩出拠点になってほしいと思っている。

 

 

では、また明日お会いしましょう。

 

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