「軽め・短めのノックバットを、身体を大きく使って気持ちよく振る」ことの効用

   

「軽め・短めのノックバットを、身体を大きく使って気持ちよく振る」ことの効用

マスコット振るよりノックバット振ろう! おすすめは70-84cm、400-550gくらいの「短めで軽い」バット

先日のツイート

 

身体を大きく使うクセを付ける

私が推すのは

「70-84cm程度の、短くて軽いノックバットを、身体を大きく使って気持ち良くスイングする」

ことだ。

ノックバットなのにそんなに短いの? と思われるだろうが、きちんと理由がある。

 

実際に振ってみるとわかるが、「短くて軽いバットを気持ちよく振る」には

「身体を大きく使う」

ことが必要だ。

 

特に、短くて軽いバットは、「体幹の筋肉を大きく動かす」「肩甲骨を大きく使う」「股関節の筋肉を大きく使う」クセを付けるのに役立つ。

短いバットは、手先だけでこねくり回しても全然気持ち良くない。

肩甲骨や体幹周辺・股関節周辺の筋肉にストレッチをかけてやらないと、短くて軽いバットを気持ち良く振ることはできない。

※なお、なぜ軽いものが良いのかというと、1.単純に重いバットよりも振り抜き感が良い 2.体への負担が小さい 3.質量が小さいため身体の使い方がダイレクトにバットの動きに反映される からである。

 

野球界では「重くて長いバットを振る=スイング力?が付く」と考えられていることが多いが、私は気軽に賛同はできない。

 

実際に比べてみるとわかりやすいだろう。

たとえば肩甲骨の動きに着目して、

「重いバットを振るのと短くて軽いバットを気持ち良く振るのとでは、どちらがより肩甲骨を大きく使ってスイングできているだろう?」

と比べてみるとよい。

 

「短くて軽いバットを振るときのほうが、肩甲骨を大きく動かしやすい」

のみならず、

「体幹の筋肉や下半身の筋肉を大きく使える」ことがわかりやすいと思う。

 

短くて軽いバットを気持ちよく振ることは、「重いバットを手先でこねくり回すスイング」の対極に位置する。

「スイングするときに使う筋肉を総動員で大きくストレッチさせて、それらの伸ばされた筋肉が勢い良く順番に縮んだ結果、バットが加速される」

のである。「筋力でスイングする」のではなく、筋肉自体が持つ弾性エネルギー(伸ばされたときに蓄えられるエネルギー)をフル活用するのだ。

 

「重くて長いバット」は、イメージ的には振れば振るほど力が付きそうではある(実際、長くて重いバットを数多く振らせる練習をやっているという話はよく耳にする)が、あまりおすすめしない。

後述するような「正しい方法」を知らないと、単なる手打ちになることが多い。

 

腕の筋肉にあまり大きな出力はさせたくない

重いバット・重くて長いバットを扱うときには、扱いづらいだけに、ともすると腕の筋肉に大きな出力をさせがちである。

しかし、そもそも人間の体は、「中心部は大きな出力で小さく動かし、末端部は小さな出力で大きく動かす」ようにできている。

つまり、末端である腕の筋肉にあまり大きな出力はさせたくない。

 

「運動エネルギーの伝達効率が良いフォームが、良いフォームである」と考えると、

「運動エネルギー=1/2 × 質量 × 速度(の二乗)」なので、確かに

・「質量の大きな身体の中心部=速度は小さくて良い」

・「質量の小さい身体の末端部=速度は大きい必要がある」

となる。このようにすれば運動エネルギーの伝達はスムーズに行われる。

 

バッティングのスイングも同様で、

中心部(股関節)にはできるだけたくさん力を発揮してもらいたい、速度は小さくて良い

末端部(腕・肘・手首)はさほど大きな力を出させず、その代わり速度を稼ぐ

→両股関節の「大きな出力」によって生産された運動エネルギーを、体幹を通して上肢に伝達し、上肢では「小さな出力・大きな速度」という形で伝達していく

というのが理想だろうと私は考えている。もちろん、肩から先の筋肉が不要だと言っているわけではない。

 

そうなると、

「重くて長いバット=加速しづらいバットを加速させるためには、末端部である腕の筋肉に大きな出力をさせがちである」

と考えることができる。逆に、

「短くて軽いバット=加速しやすいバットを気持ち良く振る(加速させる)ためには、腕の筋肉に大きな出力はいらない代わりに、身体の中心部の筋肉を<大きく>動かす必要がある」

と考えることもできる。

 

アップにもなる

「プリズナートレーニング」では、ウォーミングアップとして「負荷の軽い動作をもってアップとする」という方法が紹介されていた。

たとえば、腕立て伏せのアップは、より負荷の軽い「壁に向かっての腕立て伏せ」で行う。

いきなり負荷の高いメニューを行うとケガのリスクがあるので、まずは負荷の軽いメニューをやって、その動きに必要な筋肉を温めておくというわけだ。

 

これを野球に当てはめると、試合用の85cm900gのバットを振る前に、

短くて軽い70-84cm・350-550g程度のバットを振ってみるのが良い、という発想になる。

 

特に、バッティングで多いケガである

「投手側の腹斜筋の肉離れ」

「投手側のハムストリングスの肉離れ」

などは、ノックバットを使った軽負荷の素振りである程度予防できるだろうと考えている。

 

参考までに、スイングするとき、投手側の腹斜筋・ハムストリングスにはかなり強い出力が求められる。

よく使われる表現だが、「右打者の場合、左股関節を固定するようにして(支点にして)スイングが行われる」。

したがって、

投手側の腹斜筋(右打者の場合、左の腹斜筋)は「捕手側にあった胸郭・上半身を、投手側へとグッと引き寄せていく」役割を果たし、

投手側のハムストリングスは「投手側の膝を伸ばして前足に伸展力を発揮させ、その反作用の地面反力を骨盤へと伝達し、骨盤を回転させ切る(ハムストリングスは複関節筋なので、骨盤が固定されている場合は膝を伸展させる)」役割を果たす。

 

要するに、バッティングでは投手側の腹斜筋とハムストリングスに相当強い負荷がかかるので、

本格的にバットを強く振る前の準備体操として「短くて軽いバットを気持ち良く振る」ことでそれらの筋肉を温めておくというアプローチも有効だろう、というわけだ。

 

「一般的なウォームアップ」も間違いなく必要だが、それだけでは不足があるだろう。

昔から「野球で使う筋肉は野球で鍛える」という発想があるが、

「バッティングで使う筋肉は軽負荷のバッティング動作で温める」のが賢いやり方だと思う。

なにせ、「バッティングで使う筋肉は、バッティングの動作をすれば全部使われる」のだから。

 

長くて重いバットの使い道

ただ、長くて思いバットにまったく使い道がないわけでもない。

 

重くて長いバットの使い道といえば、

「重くて長いバットを軽く扱えるように訓練すること」

だろう。

 

具体的に言うと、「腕の筋肉をなるべく疲れさせないようにして、重くて長いバットを振る」のである。

先ほど「重いバットは腕の筋肉に大きな出力を要求する」と書いたが、それはただ漫然と振った場合の話で、

腕の筋肉をなるべく疲れさせないように、長くて重いバットを振る」のであれば、打撃力向上に寄与すると思う。

 

もっと詳しくいうと、

A.「バットを身体から離さないで扱う」

B.「腕の筋肉でバットを加速させるのではなく、大きな筋肉(投手側の広背筋・内腹斜筋・ハムストリングスなど)に大きな出力をさせることで、バットを加速させる」

C.「質量の小さい<腕>でバットを扱おうとするのではなく、質量の大きい<身体>の回転をできる限り素早く力強く行うことによって、バットを加速させる」

のである。

 

昔の選手はよく重たいバットを使っていた。

元南海の門田選手が代表例である。

門田選手はある番組で「重たいバット(門田選手の場合1030g)を扱おうと思ったら、身体にピッタリとくっつけて扱わないと振れない(A.に該当)」と語っている。

「ピタッとくっつけて構えて、そこから弓を大きく引いた状態を作って振る(B.とC.に該当)」、

「今のバッターはみんなバットを身体から離しすぎる」とも。

 

実際、今のメジャーリーガー達はみんなバットを身体の近くで扱っている。

バットを身体から離して扱うと「再現性の低下」「対応力の低下」というリスクが発生するからだ。

 

また、私の記憶だと、「落合博満 バッティングの理屈」のなかに、

「門田選手は、打撃投手に近い距離で思い切り投げてもらって、それを重たいバットで打ち返すことを、ウェイトトレーニングのように捉えていた」

と書いてあった。プライオメトリクス的な発想である。

手首や身体各部への負担を考えると気軽におすすめはできないが、発想としては面白いと思う。

 

また、ハーパー選手のこの有名な動画では、1360g・90cmくらいのバットを使っていたはずだ。

 

このように、既に身体に十分な筋肉量が備わっている打者なら、

「重いバットを軽く扱えるように訓練する」

→1.加速しづらいバットを加速させるためには効率の良い身体の使い方が必要なので、身体の使い方の効率をさらに上げるための役に立つ

…A.「バットを身体から離さないで扱う」

…B.「腕の筋肉でバットを加速させるのではなく、大きな筋肉(投手側の広背筋・内腹斜筋・ハムストリングスなど)に大きな出力をさせることで、バットを加速させる」

…C.「質量の小さい<腕>でバットを扱おうとするのではなく、質量の大きい<身体>の回転をできる限り素早く力強く行うことによって、バットを加速させる」

 

→2.試合のバットが相対的に軽くなるので、心理的に余裕を持って打席に入れる

といったメリットがあると思う。

野球の現場では2.の効果だけを求める人が多いが、1.を踏まえておかないと手打ちを助長するだけだろう。身体の筋肉量が少ない打者(重たいバットを支えるだけで手いっぱいになるような打者)も、同様である。

 

片手用バットもおすすめ

もう一つ補足で、「肩甲骨から先の使い方を覚える」ために、「60-65cmくらいの片手用バット」も推奨できる。

片手用バットを片手でスイングすると、手の使い方・腕の使い方・肘の使い方・肩甲骨の使い方がダイレクトにスイング軌道に反映される。

そもそも、

「バットの動きは両手首の動きに縛られている」

「手首の動きは肘の動きに縛られている」

「肘の動きは肩甲骨の動きに縛られている

のである。

 

片手バットを振ってみるとわかるが、おかしな腕の使い方をするとまず打てない。

両手で振る場合だと、片方の手の使い方がおかしくてももう片方でカバーできる。ごまかせてしまう。

しかし片手バットだとそうはいかない。腕の使い方がそのままバットの動きに直結する。

 

だから、たとえば「手首をこねてしまう」「捕手側の肘がうまく畳めない」といったような「肩から先の動きをどうにかしたい」悩みを解決したいのであれば、片手バットが理に適っている。

 

特に、

・左半身が不器用なタイプの右打者 → 片手バットで左手の使い方を練習する

・左半身が不器用なタイプの左打者 → 片手バットで左手の使い方を練習する

という活用方法は有用である。

 

まとめ

結局、

1.「短くて軽いバットを気持ち良く振る」→身体の中心部を大きく動かしてスイングするクセをつける。肩甲骨・体幹の筋肉をフルに使うクセをつける。ウォーミングアップとしても活用できる

2.「軽くて長いバットを振る」→捻転差が勝手にできる。バットがすぐ出てしまうのを改善できる(十分にエネルギーを蓄えた状態で振り出しを迎える)

3.「長くて重いバットを、↑の1.2.を踏まえて振る」→身体の効率の良い使い方をさらにブラッシュアップする・心理的優位を狙う

4.「片手用のバットを片手でスイングする」→肩甲骨から先の動きを覚える・改善することができる

を目的に応じて使い分けると良い。なお、短くて重いバットについては特にメリットがないと思われるので紹介しなかった。

 

これらの多様なバットを、目的を明確化したうえで計画的に振り続けてもらいたい。

いろいろなバットを振るのは楽しいものである。

いつもいつも同じバットを振り続けるよりも、上達速度は上がるはずだ。

 

なお、個人的にはSSKの84cm・82cmのノックバットと、asicsの片手用バットを使っている。

 

では、また次回。

 

 

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