「オレの知り合いにすごい奴がいて~」の心理学

      2016/08/31

「人間はひとりじゃ生きていけない」というようなことを小学校の合唱曲か何かで歌わされた記憶があります。ビートゥギャザーとか、Believeとかそんな感じの、いかにも小学校の音楽教師が好きそうな曲を。
今回は、そんな群集心理に関係する心理法則をご紹介します。

自分の知り合いを持ち上げようとする、内集団バイアス

内集団バイアスとは

人間は群れを作って生活する動物です。アリストテレスという輩が「人間はポリス的(=社会的)動物である」と言ったのは有名です。

そして、その「群れ」の単位になるのは、「縁故」です。

縁故というのは、たとえば血縁が代表的ですが、何の形にせよ「自分とつながりがあること」を指します。

「自分と縁故のある人を、すごいものと思いたくなる」人間の傾向は、縁故主義、ネポティズム、内集団バイアス、身内びいき、内集団偏向など、さまざまな呼び名があります。

まあざっくり言うと、「自分と同じ集団に属する(と思っている)人を、すごいと思いたくなる心理」のことです。

 

武勇伝=内集団バイアス

ちょっとここで例を挙げてみましょう。

かわいいところでいえば、

「高校の同級生で○○君ってのがいて、マジパネェんだよ。校舎のなかでバイク乗ってるし、こないだなんかヤクザと喧嘩して勝ったんだよ」

とか、

「同級生でこんなに頭のいいやつがいて、いまそいつは東大の理3に行ってるんだけど、見たものは一発で全部覚えるし、中2のときには数学3Cやってて高校のときには大学でやるような数学をやってたし、全国模試で、全国○位になったこともあるんだよ、本当にすごかったなあ」

とか、こんな感じの「自分の自慢ではないけど、自分と同じ集団にいる・いた人の自慢」です。

 

あるでしょう。こういう自慢、一度は聞いたことが。

 

内集団バイアスと栄光浴

栄光浴とは?

内集団バイアスは「栄光浴」と深い関係があります。

栄光浴とは、自分じゃないけど自分に関係のある人のまとう栄光を、自分にも照らし当てる行為です。

自分のまわりの人を持ち上げた(=内集団バイアス)上で、その持ち上げられた人の名誉をお裾分けしてもらう(=栄光浴)というシステムなんですね。よくできています。

 

いわゆる「ネットの反応」、特にスポーツの大会に対するネットの民の反応はこれの典型です。

手のひら返しと栄光浴

作家のさくら剛氏が、こんなことを書いていました。

 

たとえばサッカーの日本代表は、勝ち続けているうちは「我が国の代表チーム」とか「おれたちの日本代表」といった感じで言われます。しかしいったん負けてしまうと、そこから後は「あいつらは負けた」「彼らは勝てなかった」という扱いです。

 

結果を出せなかった途端、「われわれ」から「あいつら」へと変わるわけですね。

これは「内集団バイアス=ネポティズム」の逆です。
栄光浴ができなくなれば、人々はあっという間に手のひらを返します。

栄光浴場

日本では、世間様に顔向けができないようなことをした人を家族という集団のなかから追放することを「勘当」や「縁を切る」と言いますが、これも「内集団バイアス」の裏返しです。

 

栄光浴のできる公衆浴場が利用不能になれば、その集団の存在価値は失われ、支持も同時に失われます。

まあ道理には適ってますね。利用価値のないものを利用し続ける意味はありませんから。

 

 

これを顕著に表したのが、「マスコミは、チームの調子のいい時にはいやというほどつきまとってくるが、負けたり調子が悪くなったりした途端に来なくなる」という現象です。

内集団バイアスと栄光浴の関係を観るのにはちょうどいいですから、ひとつ例をあげましょう。

甲子園で優勝と準優勝を両方とも経験した智弁和歌山高校の高嶋監督は、決勝戦を明日にひかえた選手たちに、こんなことを言っていました。

「いいか、おまえら。優勝と準優勝が同じようなものだと思うなよ。優勝すれば天国だ。宿舎にたくさんマスコミが来るし、地元に帰れば我々は英雄だ。しかし準優勝は違う。準優勝は、宿舎に戻っても誰も取材に来ない。一人も来ない。地元の歓迎もさびしいものだ」

 

・・・人々が「内集団バイアスで持ち上げておいて、栄光浴に使って、ダメになったら無視か叩くかする」のがよくわかる例ですね。

厳しいようではありますが、これが現実の世界の掟です。

 

まとめ

以上、「身内びいき」についての人間心理についてこまごまと見てきました。

内集団バイアスは、あらゆる人間関係の現象を説明するのに有効で、非常に利便性の高い原理です。

よく知り、よく心得て、上手にふるまうための糧にしましょう。

 

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