読書法ばかり読んでいる、勉強法ばかり学んでいるあなたのために――『読書の技法』(佐藤優)

      2016/08/31

読書法の本ばかり読むくせに、大して読書をしない人。

勉強法の本ばかり読むくせに、大して勉強ができない人。

自己啓発本ばかり読むくせに、大して変化しない人。

結果が出ないまま盲目的に虚しい努力を積み重ねている人というのは、この日本には存外たくさんいるようです。

 

今回は、そんな人々に贈る本。

 

「短時間で」「一瞬で」「一発で」、そういうフレーズばかり踊っている「勉強法・読書法」市場のなかで、『読書の技法』という一際シンプルなタイトルは嫌でも目を引きます。

副題は、「誰でも本物の知識が身につく 熟読術・速読術超入門」

読み終えた感想ですが、『表題に偽りなし』。

この本に書いてある方法に忠実に従いながらじっくり勉強をしていけば、必ず「何らかの分野」の確固とした知識が得られる。

 

著者は、元外務省主任分析官(要するに切り込み隊長のようなもの)で、『外務省のラスプーチン』と呼ばれた超エリート。その実績に裏打ちされているだけあって、まさに「本格派」「実力派」との呼び名がふさわしい勉強法がこの本の中にはギッシリ。

ただし、「本物の知識」を身につけるための読書法だから、当然、「本物の努力」が必要とされることだけは覚悟してかからねばなりません。生半可な覚悟では、「本当にモノになる知識を得る」という高く厚い壁の前で泣きを見る羽目になるでしょう。

では、その読書法とは、一体どんなものか。大づかみにするために、まずは『読書の技法』の目次を見てみましょう。

 

<第1部> 本はどう読むか
第1章  多読の技法
第2章  熟読の技法
第3章  速読の技法
第4章  読書ノートの作り方

<第2部>  何を読めばいいか
第5章  教科書と学習参考書を使いこなす
第6章  小説や漫画の読み方

<第3部>  本はいつ、どこで読むか
第7章  時間を圧縮する技法

 

目次に沿って、この本のだいたいの内容を簡単にまとめていきます。

 


 

第一部がこの本の心臓ですね。

「多読」「熟読」「速読」の方法論+「読書ノート作成法」。

 

「多読・速読」のためには、前提として「基礎知識」がガッチリと血肉となっていることが必要。新しい分野を学ぶときにはどうしても労力が必要となりますから、速読などできません。しても無駄でしょう。その代わり、自分が「基礎知識」を既に十分に持っているような分野の本を読むのであれば、多読も速読もできます。

つまり筆者は、まずは「熟読」によって基礎知識を身に着けてから、「多読・速読」の道へと分け入っていきなさいと述べています。

考えてみれば当然のことではあります。

 

さて、ではどう「熟読」するか。

「三回読め」。

簡単に言えば、筆者の熟読法はこれに尽きます。

 

まずは信頼できる「基本書」を絞り込んだうえで、その基本書を、

第一回目は線を引きながらじっくり通読 / 第二回目はノートに重要個所の抜き書き / そして最後に再度通読する・・・これで計三回読むことになります。

実に理にかなったやり方です。この方法であれば、確実に記憶に定着できる。

 

また、すべての本を熟読するわけではありません。一冊を五分で読む「超速読」によって、「これは熟読用だな」「これは三十分でやる速読用だな」などと判断するのですが(詳しくは本書のなかで説明されています)、

「三十分かけてやる、普通の速読」の方法も述べられています。

その方法は、要点だけに絞っていえば、

1.定規を当てながら、1ページ15秒で読む

2.重要部分はシャーペンでしるしをつけ、ポストイットを貼る

3.読んだ内容は、おおざっぱに、頭の中でインデックスをつけて(つまり目次のように整理する)おく

この三点です。

 

以上のように、第一部では、確実に知識をモノにするための「速読・多読・熟読」の方法論がぎっしり述べられてます。この方法でやり通すためには相当の労力が必要とされることは言うまでもありませんが、筆者の言うとおり、「現実の物事を説明できるようにならなければ、本当に知識が身についたとは言えない」のです。

 


 

続いて第二部。「どう読むか」を述べた第一部から一歩すすんで、今度は「何を読むか」が焦点となります。

「何を読むか」についての筆者の意見は、端的にいえば、

 

「高校までの内容(数学・世界史など)をまずはきっちりと身に着けるべきであって、そこをおろそかにして大学の内容に進もうとするのは愚である」

「まずは知識の欠損部分を特定する。知識が不足している部分は、教科書と学習参考書を用いて補強してやればよい」

 

ということ。これも考えてみれば当然です。自分のできないことを把握して、どうすればできるようになるか考えて、そして実際に勉強によって「できる」ようにしていく。あたりまえのことではありますが、逃げている人が多い。

よく「高校の勉強なんて、社会に出たら役に立たないよ」といいますが、それは高校までの内容を実生活につながるレベルまで消化しきれていないからだ、と筆者はバッサリ切り捨てます。今の世界で生き抜き、成功していくためには、世界史や英語・数学・国語など、どれも必須である、と。

 

最後の第三部では「本はいつ、どこで読むか」。本から最大限の知識を引き出すための生活術がわかります。

勉強のモチベーションアップに使えそうな内容です。

 

できる人というのが具体的にどの程度の時間を勉強に割いているのか、どのようにして読書のための時間を確保しているのかがわかります。

ちなみに筆者の一日の読書時間は、平均で六時間。最低でも四時間はとる、とのこと。

一般ピープルから見ればバケモンです。まあ知識人の中でも化け物クラスの人なんですが。

ただ筆者の「四時間睡眠」だけはおすすめしません。睡眠をどのくらいとるのがいいかというのは、体質によるとしか言えませんから。

 

結論。

「いまの時代はネットで調べればなんでも出てくるから、知識なんていらない」という人がよくいますけれども、この本を読めばそれが間違いであることに気付くと思います。

ググれば万事解決、なんていう考え方は自分の頭で考える労力をまったくとらない人間の思考法であって、それは「ニトリとドンキホーテに行けばなんでも置いてあるから、家の中はすっからかんでいい」というのと同じくらい間抜けな考え方です。知識は、自分が「使える」ものでなければならない。そのためには、どうしても勉強という苦労が必要になります。

 

今回は柄にもなく、大分堅苦しい書評になってしまいました。次回からはきっちりふざけ倒します。

時代の第一線で活躍する人が採る勉強法を学ぶことができる。とても良い本で、おすすめ。

 

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