目次
まず「置きロングティー」から始めよう!
なぜ「方法論信者」と皮肉られるくらい「置きロングティー」を推すのか
置きロングティーとは?
その名の通り、
「スタンドティーに置いたボールを、できるだけ遠くに飛ばす」
という練習です。単純明快ですね。

ゴルフの打ちっぱなしのような感じで、とても楽しい練習です。
ただ楽しいだけでなく、この記事で述べるように、いろいろな効果が伴う練習でもあります。
ちなみに、「ティーはボールを置く台のことなので、置きロングティーという呼び方はおかしい」という突っ込みが入ることもあります。
日本では「置きロングティー」と呼んでも伝わるのでそれでいいじゃないかとも思いますが、確かに言われてみると違和感がある呼び名だな…とは思います。しかし、まずロングティーとの区別が付きませんし(置きロングティーなら誤解なく伝わる)、言語は意思伝達の手段であり意味が正確に伝わりさえすれば細かい単語レベルを気にする必要はないんじゃないかな…と思うので、置きロングティーと呼ぶことにしています。
①「結果が出にくいスイング」を脱し、「結果が出やすいスイング」に変える
私が考える「良いスイング」の条件の一つは、
「ボールの軌道とバットの軌道が一致するようなスイング」
(特に、インパクト付近でバットの芯の軌道がボールの来る線と一致していること)
です。いわゆるウェイトシフト打法だろうがローテーショナル打法だろうが、外国人だろうが日本人だろうが、引手が強かろうが押手が強かろうが、ここは共通です。
便宜上「軌道に入れるスイング」と私は呼んでいますが、このようなスイングが身に付くと、ミート率が上がる、身体が小さくても飛ばせる、打球速度が上がる、平均飛距離が伸びる、打球の回転が好ましいものになる、スイングが人体の構造上効率の良いものになる、ヘッドスピードが上がる、振り出してからインパクトまでの時間が短くなりやすい…といった様々なメリットが伴います。
そして、この「軌道に入れるスイング」を身に付けるためのとっかかりとして、置きロングティーは最適だと私は考えます。
なぜなら、
1.日本では「バットの軌道(芯)をボールの軌道に入れるスイング」が教えられることはなぜか少なく、代わりに「トップから最短距離でインパクトに向けてバットを振り下ろすスイング」が教えられることが多い。そのようなスイングをしていると、バットの軌道とボールの軌道との一致度合いがかなり低くなる
2.置きロングティーは、そのような「伝統的日本式」のスイングでは飛ばない。上から下にバットを振り下ろせばボールに対しては上から下へたたきつけるような力がかかり、弱弱しいゴロor力のないポップフライが増える。置きロングティーで飛距離を出すには「インパクト時にバットが下から上」の軌道を描かなければならない。そうしないと打球速度と打球角度は両立できない。置きロングティーをすることによって結果的に「軌道に入れるスイング」ができやすくなる
からです。
よく言われる「ダウンスイングでボールにバックスピンをかけて飛ばす」のは間違いで(おそらく単なる感覚上の話)、
「地面に対してややアッパースイングになるところでインパクトを迎え、そこでたまたまボールの下を打ったらバックスピンがかかって飛ぶ」のが本当のところです。ちなみに、軌道に入れるスイングでボールの上を打つと「カンガルーゴロ」と呼ばれるトップスピンの猛烈なゴロ(打球の減速度合いが小さく、バウンドの予測が狂いやすい)が発生します。
日本式だと、「最下点でインパクトを迎えてしまう」ことが多いんですよね。これに対して「軌道に入れるスイング」だと、「最下点を通過した直後にインパクト」を迎えることになります。
もちろん、置きロングティーが万能だというわけではありません。
先ほど「「軌道に入れるスイング」を身に付けるためのとっかかりとして、置きロングティーは最適です」とわざわざ「とっかかり」を緑色で示しましたが、置きロングティーばかりやっていると実戦からかけ離れたスイングになることもあります。
具体的に言うと以下の点です。
1.肩をひねりすぎても置きロングティーだと打ててしまう
2.重心移動大きすぎても置きロングティーだと打ててしまう
3.かえってカチ上げすぎになることもある
この三点にだけ注意すれば、置きロングティーは「軌道に入っていないスイング=いわゆる伝統的日本式のスイング、結果が伴いにくいスイング」を脱し、「軌道に入れるスイング=結果が伴いやすいスイング」を身に付けるための最高のきっかけになることでしょう。
もちろん、「バッティングの仕組みを頭で理解してイメージトレーニングすること」なども忘れずに。
②リミッター解除
置きロングティーは「軌道に入らないスイングを脱し、軌道に入れるスイングを習得する」というメリットが一番大きいですが、
「フルスイングの感覚を覚えることができる」という効用もあります。
そもそも、伝統的日本式のスイングだと身体に力が入らない(入れたくても入らない)ことが多いです。変なところにばかり力が入って、必要な、入れるべきところに力が入らない…と表現すればわかりやすいでしょうか。身体の力を使いたくても使えないスイングだということです。
また、小さい頃からの指導の影響で「大振り=悪」「100%の力で振る=悪」という刷り込みを受けてきた野球選手も多いので、その呪縛から自らを解き放つためにも置きロングティーは使えます。心理的なリミッターを外せるわけです。
要するに、
1.置きロングティーで、「フルスイングできるスイング軌道」「身体の力を目いっぱい活かせるスイング軌道」「人体の構造上不自然ではないスイング軌道」を覚える(①で紹介した、軌道に入れるスイングを覚える)
2.その上で、実際にそのスイングで100%の出力を発揮する
という手順を踏みます。
★要するに…
この2つの手順を踏めば「現段階で自分が出せる最高飛距離」を出すことができます。
対応力とか再現性とかいった細かいことを気にするのはその後です。
まずは思いっきり振らないと始まりません。
まず自分の100%を理解して、そこから「再現性・対応力を上げるために80%の出力にしてみ」たり、
「100%でもあまり飛ばないならフィジカル強化が必要だと痛感した」りするわけです。
最初に自分のマックス=100%を知ってから、そこから「引き算(80%に出力を落とす)して確実性を上げる」「100%そのものを引き上げる」といった方向へ進みましょう。
私が「置きロングティーから始めなさい」と口を酸っぱくして言うのはそれが大きな理由です。
置きロングティーは決して万能ではないけれども、「基準を知る」ためにはマストな練習法です。
③「置きロングティーをやるとバッティングの基準が設定できる」についてもう少し詳しく…
ちなみに、置きロングティーを繰り返していると自然に
「自分が一番飛距離を出せるポイント」
がつかめてきます。
そこで、自然な発想として、
「置きロングティーで一番飛ばせるポイントがホームベースの真ん中あたりに来るように、打席内の立ち位置を調整すれば良いんじゃないかな?」
と考えることができます。
理由はいくつかあります。
一番飛ばせるポイントをど真ん中あたりに置くメリット
1.ストライクゾーンと「飛ばしやすいゾーン」が大きく被るようになる。ピッチャーのボールを打った時の打球速度が上がりやすくなる→ヒット率・長打率の上昇が見込める
2.「インコース=ポイントを前にしてボトムハンドの肘を抜く」「アウトコース=ポイントをやや捕手寄りにしてボトムハンドの肘を伸ばす」「真ん中=そのまま打つ」という形で対処できる
メジャーリーガーのホームラン集などを観ているとわかりますが、基本的には誰でも
「ベースに近すぎず遠すぎず」
の位置に立っています。
もちろん個々人のバットの長さ・打法・リーチの長さ・身長などによってどの程度ベースに近くなるかは変わりますが、
「置きロングティーで一番飛ばせるポイントをど真ん中あたりに置く」という基準を設定することによって、
打席内での立ち位置にあれこれ悩まなくて済むようになります。
④スイングが鈍く・おかしくなってきたときの原点回帰に使える
このほかにも、スイングが鈍くなってきたな、振れてないな…と思ったら、置きロングティーをやって「思いっきりスイングする感覚」を取り戻すという使い方もできます。
また、スイングがおかしくなってきたときの原点回帰にも使えます。
おかしなスイングで置きロングティーをやれば打球の回転などが変わりますし、飛距離も出にくくなります。
あるいは、「何も考えないで振れる」という点で置きロングティーに価値を見出すのもアリだと思います。
置きロングティーは「あれこれ考えずにボールを思いっきり遠くに飛ばせるように振る」ことができる練習ですから。
おわりに:
なお、広い場所がない方は「プラスチックボール・セーフティボール」(Amazon)を打つという手もあります。これなら飛距離も出ませんので安全です。

また、置きティーが無い…という方には「ネトロンティー」(Amazon)がおすすめです。2Lペットボトルに砂や水を入れて、内径30mmのネトロンをフタ部分に差し込みますとジャストサイズです。一本160円くらいで買えますのでチーム単位にもおすすめ。3000円出せば置きティーを30-40本くらい生産できます。
では、また明日。