インサイドアウトのスイング軌道を身に付けるための「バット投げ練習」

   

インサイドアウトのスイング軌道を身に付けるための「バット投げ練習」

バット投げ → 日本人打者(=引き手主導・ウェートシフト)がインサイドアウトを身に付けるために最適な練習

「バットを投げる練習」の元祖は、おそらく元南海などで活躍された伝説の打撃コーチ・高畠導宏氏です。高畠氏の教え子である田口壮選手などが取り組んでいたことが有名です。

 

★「バットを投げる練習」の2つの目的

①.自分がどういうスイングをしているのかがわかる。その人のスイングの仕方が、バットの飛び方にモロに出る。以下に述べるような診断表に照らし合わせると、自分がどういうタイプのスイングなのかがわかる。ドアなのかインサイドアウトなのか波打っているのか、右手が強いのか引手が強いのか、スイングが強いのか弱いのか? がすべてわかる

 

②.↓の4つ「理想的な飛ばし方」になるようなバットの振り方が、そのまま日本人打者にとって理想的な「インサイドアウトの強いスイング」になる。インサイドアウトの強いスイングができれば、長打力と確実性を両方とも手に入れることができる、という考え方

 

1.「センター方向(か、やや右中間)よりに真っすぐ飛ばす」

2.「人の頭を余裕で超えるくらいの(最高到達点が高さ2~4メートルくらいの)ライナーで飛ばす」

(3.「バットが空中であまり回転しないように飛ばす」)

(4.「なるべく遠くに飛ばす」)

 

まずは1.と2.を優先する。慣れてきたら3.と4.をやる。最終的にはこの4つを同時に満たすようなスイングを目指す。日本人打者にとって1~4が理想的である理由は↓で解説

 

★回数

・30~50本くらい投げると時間的にも効果的にも丁度良い気がする。徹底的にやるなら100回くらい飛ばしても構わない

・打撃練習の前に行っておくと、身体が「インサイドアウトの強いスイング」を覚えた状態で打撃練習に入ることができる? → 正の転移

 

★自分がどういうスイングをしているのかがすぐにわかる診断表

※↓は右打者の場合。左打者はすべて逆に考える

●ヨコ方向編

A:(右打者の場合)センターより左方向(左中間~ファウルゾーン)に飛ぶ人:ドアスイング。打球方向は主に引っ張り。

なぜセンターより左方向に飛ぶかというと、バットの軌道が「外回り」になっているから。バットを外から内に引っ張り込むから、そのままレフト方向~ファールゾーンに飛んでいく。

 

B:(右打者の場合)センター方向に真っすぐ飛んでいく人:きれいなインサイドアウト。その人にとっての「理想的なトップの位置」から「真っすぐに」バットを振り出せている。打球方向は主にセンター中心で広角に打てる。下半身から伝わってきた力が素直にバットに伝わっている。

 

C:(右打者の場合)右中間方向に飛んでいく人:インサイドアウトはできている可能性が高い・・・が、①もしかするとやや窮屈かもしれない。Cタイプの人は、やや力の解放が甘く、打球速度や飛距離はBの人に比べると落ちる。打球方向はセンターから逆方向がメインで、引っ張りは苦手なことが多い。

 

もしくは、「いったんドアで入ってから、バットを体の方に引っ張り込む」タイプかも。この場合、「バットがライナーできれいに飛んでいくかどうか」が一つの判断基準となる。セカンド方向に、極端に低いライナーしか行かない場合はこれかも

●タテ編

D:(右打者の場合)フワッとした軌道(だいたい35°以上)で飛んでいく人→やや右半身の押し込みが強いorアッパースイング。

フワッとした軌道になるのはなぜかというと、「右半身の押し込み」が強いから。

肝心なのは「右半身の押し込みが強いと、バットはフワッと放物線を描く」ということ。フワッとした軌道というのは右半身の押し込みが強い証拠。

 

Dタイプの人は「左半身をきちんと使ってスイングできているかどうか」をチェックするといい。フワッとした軌道の人が左半身も使えるようになると、バットがライナーでものすごい距離を飛んでいくようになるし、打球の伸びが全然代わってくる。(ちなみに、フワッと飛ぶタイプの人は、引き手側の手首をケガしやすいので注意)

 

E:2-3mくらいの高さのライナーできれいに飛んでいる→うまく身体の回転ができているからこそきれいなライナーになる。左半身でうまく引けている&右半身の押し込みが上手い。バッティングが回転運動であることを考えると、左と右はバランスよく(均等にという意味ではないので注意。体重移動&引き手メインで打つ日本人打者の場合は、まず引いてバットを引き出し、それから右半身で押し込む)使うべき。これがナチュラルにできれば、「確実性」と「飛距離」を両立できる。

 

F:バットがすっぽ抜けるようにして低い軌道で飛ぶ→Dタイプの人の真逆。つまり右半身の押し込みが弱く、左半身の引きがあまりにも強すぎる。打球が上がらないことが多い。

 

右半身の押し込みが強ければバットはフワッと飛ぶし、弱ければライナーよりも低い軌道になる。右半身の押し込みと左半身でバットを引き出す力のバランスがとれていればライナーで真っすぐ飛んでいく。

 

・・・つまり、

バットが「センターより左orセンター方向orセンターより右」のどの方向で飛んでいくかは、

その人がどの程度ドアスイングかorインサイドアウトか、という程度を表す。

 

バットが「フライorライナーorゴロ」のどの軌道で飛んでいくかは「左半身の引く力と右半身の押し込みのバランス」に影響される。どちらかが強すぎるとバットはフライorゴロになる。バランス良く使えていればライナーになる。

バッティングが回転運動であるということを考えると、バランスよく(→左半身でトップからバットを引き出し、インパクト前後に右半身で押し込む)使えているほうが好都合。

 

なお、

・バットの飛距離は「スイング自体の強さ」を表す。強く振れれば飛ぶし、弱いスイングだと飛ばない。

・バットの回転数は「多い→インパクト時に手首をこねている」「少ない→インパクト時に手首をこねていない」の目安になる。基本的にはドアスイングだと手首の返りが早くなるのでバットの回転数が増える

 

→このバット投げ練習で「センター方向に真っすぐ」「ライナーで」「遠くに(理想は塁間くらい)」「あまり回転せず」バットが飛んでいくようなスイングを習得すれば、確実性と長打力を併せ持つスイングができるようになる。

 

①このバット投げ自体でそういうインサイドアウトのスイング感覚を掴んでもよい。

②自分がそういうスイングができているか、をチェックできる。

という使い方もできる

 

補足:インサイドアウトについてもう少し

★以上の話は、あくまでも傾向の話。絶対ではない。

 

★もちろん、インサイドアウトでなくても結果を残している打者は一定数存在する。ただし、良い打者の多くがインサイドアウトでのスイング(落合の言う「大きくて素早いスイング」)を身に付けているのもまた事実

 

・人によってバットの飛ぶ向きが全然変わるのはなぜ?

→「バットをセンター方向にライナーで投げようとする意識」のもとでバットを放り投げると、その人が普段どのようにバットに対して力を加えているかがモロに出るから。ドアスイングの人は「外から内に」バットが出てくる、そしてバットを投げるときもその軌道のままレフト~背中側に飛ぶ。

 

・実際、その人のフリーバッティングの連続写真を見るだけでバットの飛ぶ方向はほぼ確実に予測できる。

 

・前提となる話:日本人の打者は「センター返しのインサイドアウト」を基本として考える。ここではドアスイングも引っ張り込みも理想的ではないとみなす。

 というのは、インサイドアウトという軌道には「少ない筋力で、素早く強く振り出すことができる」という圧倒的なメリットがあるから。インサイドアウトなら回転半径が小さく、慣性モーメントも小さい。

 投手の球速がさほどでもなかった昭和~平成中期までならまだしも、ピッチャーの球速がガシガシ上がっている現代野球で、日本人打者がわざわざインサイドアウトじゃないスイングを取り入れるメリットはあまりないように感じる。

 

 もちろん、巨人にいた呂明賜なんかは思いっ切りドアスイングでHRを打っていた(ただし当時の打撃コーチにフォーム矯正されてスランプに)。

また、400HR越えを達成した小久保裕紀は意識的にややアッパーにすることによって、右半身で強くボールを押し込んでいる。つまりアッパーとインサイドアウトを併用している(ちなみにこの打ち方は腰に相当の負担がかかる)。

・メジャーリーガーについて。メジャーリーガーの多くは西洋人・黒人で、彼らは日本人と骨盤の付き方が明らかに異なる(骨盤前傾+肩甲骨が後ろに引かれる=肩甲帯伸展)。そして、骨盤が前傾しているので、下半身で地面をダイレクトに押しやすい。

 逆に日本人は骨盤が後傾(滑っている)しがちなので、下半身で地面を押す力が比較的弱い。その分体重移動の幅を大きくしてエネルギーを稼ぐ必要がある。

→というわけで、「骨格の違い」から「動作の違い」が生じる。具体的に言うと、メジャーリーガー(西洋人・黒人)は地面を押す力をそのまま押し手に伝えて打つ(いわゆるトップハンドトルク打法)。逆に日本人は体重移動の力を引き手に伝えて打つ(いわゆるウェートシフト打法)。ここを理解しないままメジャーリーガーっぽく打とうとするのは無理がある。

 

 また、「メジャーリーガーは思いっ切りアッパーかドアスイングじゃないか!インサイドアウトが理想なんて嘘だ!」みたいなことを言う人がいたけど、それはちょっと違うと思う。なぜなら、メジャーリーグでいうところのインサイドアウトと、日本でいうインサイドアウトはやや違うから。

 

①日本人にとってのインサイドアウト:引き手(ボトムハンド)主導で、深いトップの位置からバットを身体の近くを通して振り出す。押し手はインパクトの時まで極力使わない。

つまり、日本人にとってのインサイドアウトとは「深いトップから、引き手主導&押し手極力不使用で身体の近くを通して振る」ということ。押し手が強すぎるor引き手がうまく使えないとドアスイングになる。

↑↓

②欧米人・黒人のインサイドアウト:押し手主導なので、そもそもトップという概念が希薄。押し手主導で、構えたところからストレートにインパクト(コンタクト)しに行く。したがって、彼らにとってのインサイドアウトとは「構えたところから、押し手主導&引き手極力不使用でコンタクトを迎える」ということ。イメージとしては「押し手で上手く押し込める」のがインサイドアウト。彼らの場合、引き手を強く引いて使ってしまうとドアスイングになる。

 

①の例:引き手主導

②の例:押し手主導

実際、メジャーの実況でよく「perfect inside-out swing」と言う。日本でもインサイドアウトという言葉は使うが、↑でわかるようにその意味するところは真逆!

 

 なお、メジャーリーガーに打撃のコツを聞いてみると「とにかくバットのヘッドを先に出す」みたいなことを言う人が多い。これも↑の理由による。ヘッドを先に出すには押し手主導で振る必要がある。で、これを日本人が鵜呑みにすると、せっかく引き手主導で振ろうとしているのが押し手で相殺されてしまうことになる。

 

→ちなみに、①と②の区別には、

「トップの時点で、押し手側の肘がバットよりも内側にある→①引き手主導」

「トップの時点で、押し手側の肘がバットの外にある→②押し手主導」

というのが、いちおうの目安として考えられる

 

 

・スイング軌道が波打つタイプの人はやや複雑になる。

たとえば、「バットをまずドアスイングの軌道で入れてから引っ張り込む」タイプの人は、セカンド方向に低いライナーで飛んでいく。

このタイプの人は「バットをセンターへ向かって真っすぐライナーで飛ばす」ことは難しいので、ここで見分ける。

 

まとめ:スイング軌道の大切さ

日本人打者にとって、「バットがインサイドアウトで出てくるかどうか」は死活問題。

インサイドアウト ドアスイング
回転半径・慣性モーメント 小さい・少ない 大きい・多い
振ろうと思ってからバットが出るまでの時間 短い 一瞬遅れる
ミスショット率 低い(時間のロスが少ないため) 高い(時間のロスが多いため)
スイングのために必要な筋力の発揮 あまり力まず振れる 力みがち
対応力 ストレートでも変化球でも一定の対応力がある。ある程度球速のある投手にも対応しやすい 少しレベルの高い投手になるととたんに打てなくなる。あるいは、フリーバッティングではものすごい打球を飛ばすのに試合になるとその当たりが出ない

 

体重移動&引き手主導で打つ日本人打者の場合は、インサイドアウトのスイング軌道さえ習得できていれば、あとは体重移動のリズムに合わせて振り出す技術や、軸足の垂直軸の崩し方・左半身の使い方の感覚・右半身でインパクト前後に押し込む感覚を身に付けていくだけでかなり良い打撃動作ができるようになる(はず)

 

結論:インサイドアウトは、体重移動&引き手主導で打つ日本人打者にとっては必須。そのインサイドアウトができているかどうかは、バット(グリップエンドを切ったものが望ましい。グリップエンドがあると引っかかるので)↓を投げる練習をしてみて、「バットがきれいにセンター方向へ、人の頭を余裕で超える程度のライナー(3~4m)で飛んでいくかどうか」をひとつの判断基準とする。

それに加えて、

・インサイドアウトができるかどうかは、「体幹の柔軟性」「肩甲骨周りの柔軟性」「腕部の柔軟性」といった身体的要因と、技術的要因の二つによる。

→肉体的な要因を放置したまま技術指導だけでなんとかなるケースはほとんどない。インサイドアウトで振り出せない肉体的要因(硬さ)を取り除いたうえで技術指導を行うべき

 

・・・というのが私なりの結論です。

 

「動きを邪魔している筋肉の硬さを取り除いたうえで練習する」というのは、初動負荷トレーニングの総本部であるワールドウィング鳥取のキャンプでもやっていることです。あまり詳しくは書けませんが、だいたい一日2-3回の初動負荷トレーニングを行って「動きやすい身体」にしておいたうえで、動作の専門家であるコーチの方々と一緒に動作を追求していく・・・というプログラムなので、かなり短期間で動作改善を行うことができます。

 

初動負荷トレーニングは専用のマシンが必要ではありますが、いちおうフリーウェイトでもやることはできますし、初動負荷ストレッチなるものも提唱者の小山氏の著書のなかで紹介されています。

初動負荷ストレッチの具体的なやり方については、「初動負荷理論による野球トレーニング革命」を参照してください。著作権の関係上ここには書けないので・・・

 

いずれにせよ、野球の動作改善のためには「肉体的要因」と「技術的要因」の両方から攻めていくことが必要です。ドアスイングの打者に「もっとインサイドアウトで振れ!!」と熱烈指導したところであまり効果はありません。

結局は、肉体的要因を改善するためには、指導者の側が勉強しておかなければならない、という話になります。グラウンドでふんぞりかえっているだけが指導者の役割ではない、ということですね。

 - 野球