「日本人(左)打者に共通するっぽいバッティング動作」について

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目次

「日本人(左)打者に共通するっぽいバッティング動作」について

前提となる話

①この記事に書いてあることが完全に正しいとは限りません

・ここに書いてあるのは「現時点での」「私個人の」考えです。時間の経過とともに考えは変わります。また、できるだけ正確な記述を心掛けたつもりですが、理論として完全に正しいという保証はどこにもありません。完全に正しい情報を求めて訪問された方には申し訳ないのですが、そういうことです。

・今後、加筆修正などを行うかもしれません。

 

・「共通するっぽい」というタイトルからも分かる通り、今回の記事では

自然科学の法則や物理の法則からみた打撃動作

人間の体の仕組みからみた打撃動作

という二つの観点からものを言っています。

・もちろん、打ち方に多少ロスがあっても、反応の良さや、圧倒的なハンドアイコーディネーション能力で一流の成績を残している人もいます。

 

②動作と感覚にはズレがあります。この記事では動作の話しかしません

・人間の「感覚」「意識」「イメージ」と、「実際に行われる動作」との間には決定的なズレが存在します。→参考:武井壮さんのパーフェクトボディコントロール理論(かしわばブログ)

・今回の記事で紹介・解説するのはあくまでも「日本人左打者の打撃動作がどうなっているか」という原理の話です。「どのような感覚で打てばいいか」にはノータッチで行きます。

 

・つまり、「バッティングの感覚的な話」はここでは触れないので、感覚の追究は個人でやってくださいということになります。

・ただし、打撃動作について理解しておけば、いろいろな面で役には立つと思います。要するに「ヘンなやり方」に時間を費やすリスクが軽減されます。

 

・なお、日本人打者と外国人打者の打撃原理は基本的には一緒ですが、スロー動画や連続写真で見るとけっこう違うように見えてしまうので、外国人の打撃動作については以後の記事で触れることにします。

 

③左打者と右打者との間には多少の違いがあります。ただし本質的には同じ原理です

・地面からの反力を利用することや、筋肉の反応の仕方、伸張反射の発生の仕方、エネルギーの効率よい伝達、運動連鎖(キネティックチェーン)が結果として現れること・・・など、基本的な動作自体は右打者だろうが左打者だろうが、外国人だろうが日本人だろうが変わりません。

 

・ただし、左打者と右打者とでは「脚の機能」がやや異なります。具体的にどういうことかというと・・・

この「人間の体の左右差」は最近アメリカでも注目されているようで、

 またPRI(Postural Restoration Institute)理論というMLBやNBAでも採り入れられている新種のトレーニング法に精通。指導者としての認定も受けている。この理論が左投手と右投手の違いに頭を悩ませていた菊池にとって、積年の課題を解決するものだった。

PRI理論とは、人間は左右非対称の身体であるというところに注目し、非対称であるから使われやすい筋肉と使われにくい筋肉が存在することを認識する。そのうえで、使いすぎている部分の抑制と使われていない部分の活性化を行う。

人間の体の中身は左右対称ではない。菊池雄星が始めた「左特有の投げ方」。

とのことです。

 

簡単にまとめると、

・左打者と右打者とでは、基本的な打撃動作は一緒だけど、ちょっとだけ違うところがある。それは人間が元来もっている足の機能の左右差に由来する(はず)

ということになります。

 

④「打撃の原理を理解」できたとしたら、思ったよりも10倍速く上達できる可能性があります

可能性としては、「打撃の原理を自分なりの言葉で正確に理解することができれば、自分が思ったよりも10倍高速で上達することができる可能性がある」といえます。

 

なぜ「10倍早く上達する可能性がある」のかというと、

1.明らかに間違ったアプローチに時間を費やすリスクが大きく減る(これだけでも野球進化速度が数倍になる)

2.現在やっているトレーニングや練習の意図を、根拠を持って説明できるようになる(数倍)

3.これから進むべき道や強化の方向性がわかるようになる(数倍)

からです。

1.では「通らなくてもいい寄り道」(寄る価値のある寄り道もあります)を避けることができます。

2.は「現状の向上・改善」ということです。

3.は「未来への推進力が増す」ということです。

併せて10倍です。

 

これに加えて言うなら(注意点です)、

A.「この記事に書いてあることが唯一絶対普遍的な打撃原理である」保証はありません。

B.人によっては、打撃動作について理解することによって一時的に頭が混乱する可能性もあります。

C.打撃理論に頼らなくても、感性だけで一流になれる場合もあります。

 

ただし、Bについては「一時的に混乱はするかもしれないが、その混乱さえ抜けてしまえば視界が開ける」と思っています。

C.については、わざわざ理論に頼らなくても感覚だけを頼りにして成功できる人もいるということです。

もちろん大多数の人には「感覚だけ」では厳しいでしょう。そういう人は、打撃の理屈を知っておくこと(考えておくこと)が大いに役立つはずです。

では本題に入ります。

 

本編:「日本人左打者に共通するっぽいバッティング動作」について

便宜上、以下のように分類します。

1.構え
2.軸足荷重期
3.並進運動
4.トップ形成
5.前脚接地・前脚荷重・軸脚抜重&スイング開始
6.アクセラレーション~インパクト期
7.フォロースルー

人によっては「分類しすぎ!」「小難しくor理屈っぽく考えすぎ!」と思われるかもしれませんが、バッティングというものを一度徹底的に理詰めで考えることには意味があると思っています。今までの日本の野球界はどちらかというと「理屈だけじゃダメ」という意見が強すぎて、本当に必要な理屈までもすっ飛ばしてしまっていたと感じています。

 

勉強や学問には、「細かいところまで徹底的に詰めて考える→大局的な見方を得ることができる」という道筋があります。

西洋の学問でいえば医学がまさにそれです。人体を徹底的に解剖して、各部に名称をつけて分類して、分析して、いろいろデータ処理などを加えたうえで、実際の現場に活用する。

野球の動作分析も西洋医学と同じで、机上の理屈だけではどうしようもないけれど、だからといって理屈を軽視していては手痛いしっぺ返しを食らいます(人体についての知識がまったくないお医者さんにかかりたい人がいるでしょうか?)。

 

現場に出る指導者の方には、

1.まずは机上で、徹底的に細かいところまで根掘り葉掘り分析し、研究し、考え抜くこと

と、

2.徹底的に現場主義を貫いて、実地で経験の積み重ねと試行錯誤を繰り返す

の両方が必要だと私は考えています。

 

今回の記事は1.のために書いているものですので、「あまりにも理屈に凝り固まりすぎている」と言われるくらいでちょうどよいのではないかと思います。

 

1.構え

・「構えは人それぞれ」と言われますが、ある程度の「こういう形だったらやりやすいんじゃない?」はあります。

ですから、この「1.構え」に書いてあることは「参考情報」程度にしてください。

 

・右打者と左打者の違いとして真っ先に挙げられるのは、

「日本人の場合、右打者は構えの時点では軸足膝がストレート~やや外割れ していることが多いのに対して、左打者は構えの時点では軸足膝がストレート~やや内折れ していることが多い」

ということです。

参考までに、右打者の構えも張っておきます。↑の左打者の構えと比較してみてください。

前述の通り、左脚と右脚とではクセの違いがあるためだと思われます。

 

具体的には、
「人間の体は臓器の位置の関係上、もともと右側に荷物を持っているようなクセがついている。

右側に荷物を持った場合、左足を外旋させて、右足を内旋させるとうまく立ちやすい。逆はやりづらい」

→「左脚:もともと外旋しやすい・押すように使いやすい」
→「右脚:もともと内旋しやすい・引くように使いやすい」

という傾向があります。

 

ただし、バッティングでは「立ちやすさ」よりも「足に出力させること」「素早く体を回転させること」が目的ですから、

足の使い方は、むしろ↑の傾向とは逆のほうがやりやすいと思います。

 

どういうことかというと・・・個人差はあれど、だいたい以下の表のような形になるのが良い打者の傾向であるということです。

もともとの傾向 右打者 左打者
「右脚:もともと内旋しやすい・引くように使いやすい」 右脚:構えの時点では「ストレート~やや外割れ」させると、右脚の力を出しやすい 右脚:構えの時点ではあまり気にしなくてもよい(内旋でもストレートでも外旋でも変わらない)が、踏み込みの仕方は「ストレート~やや外旋」させるとスムーズ(右脚がもともと内旋しやすいのを活かす)
「左脚:もともと外旋しやすい・押すように使いやすい」 左脚:構えの時点ではあまり気にしなくてよい(内旋でもストレートでも外旋でも変わらない)が、踏み込みの仕方は「ストレート~やや内旋」させるとスムーズ(左脚はどうしても外旋しやすいので抑えてやる) 左脚:構えの時点では「ストレート~やや内折り」させると、左脚の力を出しやすい

日本を代表する打者を集めた↑の二枚の写真と、この表に書いてあることを照らし合わせてみると、

「なるほど、そういう傾向は確かにあるな」と納得できるはずです。

 

もちろんこれはあくまでも傾向であって、人によってはしっくり来る/来ないがあると思いますし、微調整も必要です。

ただし、一応「人間の体の左右差に由来する左右の足のクセの違い」という根拠があって言っている&NPBの選手にそういう傾向がある

ので、一つの指針としては役に立つのではないかな、と思っています。

 

参考までに(サンプル数1なのが申し訳ないのですが)、森友哉選手の打撃フォームの変遷を貼っておきます。

一般的に、プロに入るとフォームの無駄はそぎ落とされる(改良せざるをえなくなる)のですが、森選手も↑の表通りの形にシフトチェンジしています。

単純な印象だけで語っても、普段から連続写真や打撃動画を見慣れている私からすると「高校時代よりも、2016/2017のほうが打ちそう」という感じが(私には)します。完全なる主観ですが…

 

★特に注意すべきこと

実は、連続写真やスロー動画を見て、「このときにここがこういう角度になっているからこうしろ」というのは、実はけっこう危ないやり方です(この記事の中でもやっていますが)。

というのも、たとえば先ほどの「NPBの左打者は左脚をストレート~やや内折れさせて構える傾向がある」という事実は3通りの解釈ができるからです。

解釈のパターン3通り 連続写真の上での形 実際の力のかけ方(物理・肉体の話) 重心の位置
パターン① 左脚はストレート~内折れ 左脚に「内旋の力」をかけて構えている 左脚に内旋の力がかかっているので、左脚には乗らない
パターン② 左脚はストレート~内折れ 左脚に「外旋の力」をかけて構えている 左脚に外旋の力がかかっているので、左脚に乗る
パターン③ 左脚はストレート~内折れ 構えの時点では内旋の力も外旋の力もかけていない 体の真ん中付近にある

※なお参考までに書いておくと、「外旋の力」をかけたほうに重心は移動する&「内旋の力」がかかったほうには重心は移動しない のが自然なようです(→参考:「左重心で運動能力は劇的に上がる!」)。

注意してもらいたいのは、重心が「外旋しているほう」ではなく、「外旋の力がかかっているほう」だということです。

形として「内旋」している場合でも、そこに外旋の力がかかっていればそちらに体の重心は移動するのが自然です。

 

つまり、「形をそのまま真似る」というのは有効なやり方ではあるんですが、そもそもなぜその形になるのかという本質や原理を知っておくことも必要です。

 

その好例として、下にパターン①と思われる中島選手、パターン②と思われるイチロー選手、パターン③と思われる金本選手を並べてみました。

三者とも見た目上での下半身の形は一緒(三者とも左足は内折れしている)ですが、下半身への力のかけ方が異なるように私には見えます。

(なぜ「思われる」なのかというと、私は本人の感覚がわからないからです。あくまでも推量ということです)

では、なぜ当事者でもないのに「おそらく内旋or外旋orニュートラルの力をかけているだろう」と推測できるのか?

それは、先ほども触れたように「外旋の力がかかっているほうに重心は寄り、内旋の力がかかっているほうには重心は寄らない」という判断基準があるからです。

「形」と「力のかかり方」 なぜ「左足への力のかかり方」を推測できるのか?
パターン①:中島選手 「形の上では左足は内折れだけど、おそらく左足に内旋の力をかけている グリップの位置や脊柱の角度からすると体の重心がやや投手側にあるから(左足に内旋の力がかかっているので左足には重心は乗らないのが自然)
パターン②:イチロー選手 「形の上では左足は内折れだけど、おそらく左足に外旋の力をかけている グリップの位置や脊柱の角度からすると体の重心がやや捕手側にあるから(左足に外旋の力がかかっているので左足に重心が寄るのが自然)
パターン③:金本選手 「形の上では左足は内折れだけど、おそらく構えの時点では左足に特に力をかけていない グリップの位置や脊柱の角度からすると体の重心がほぼ真ん中にあるから

 

つまり、構えの時点では「パターン①:中島選手→重心が投手側にある」「パターン②:イチロー選手→重心が捕手側にある」「パターン③:金本選手→重心が体の中心付近にある」と私は考えています。「軸足の膝を内折れさせている左打者(ストレートにしている打者でも同様です)」にはこのパターン①~③の3タイプが想定できるわけです。

パターン①~③のどれが良いのか?

では、パターン①~③のどれが望ましいのか?

私は、「パターン②と③が望ましく、パターン①はあまり望ましくないのではないか」と考えます。

つまり、「左打者の場合、構えの時点では重心が『体の中心~やや捕手側』にあるほうが、重心が投手寄りにあるよりもスマートに打てるのではないか」ということです。

 

なぜなら、この「構え」の後には「軸足荷重期」があるからです。

軸足荷重期とは文字通り

「軸足に重さを荷わせて力を発揮させることで、並進運動のエネルギーを得る」

「打撃動作中の地面反力の内訳は、軸足30%と前足70%である。軸足の30%を得るために軸足に荷重する」

というものですが、

パターン①:構えの時点で重心が前にあると、

「A.軸足に荷重するために、前にある重心を一度捕手側に引き戻す動きが入る」

もしくは

「B.重心が始終前にある状態でスイングすることになる=並進運動のためのエネルギーが確保されにくい」

と考えられるからです。

 

「A.軸足に荷重するために、前にある重心を一度捕手側に引き戻す動きが入る」例:西川選手
A.では重心の動きは「投手側→捕手側→投手側」になるのですが、NPBの一流打者たちの多くは「最初から体の中心or捕手側に置いておいてから、一度軸足に荷重してのち、投手側へ向かう」という形をとっています。

投手側から捕手側に戻すのは「反動をつければ豪快に打てそう」なイメージもありますが、構えから軸足荷重までの間に反動を付けたところで、並進運動のエネルギーには加算されません。むしろ、軸足が力んで並進運動のためのエネルギーをロスするリスクのほうが大きいと思われます。また、重心を投手側から捕手側に移す際に目線がブレるリスクもあります

 

わざわざ反動を付けなくても、並進運動のためのエネルギーを軸足から引き出すことは十分可能です。

現に、下の画像からもわかるように、最初に体の中心orやや捕手側に重心を置いておいて、前足を上げることによってパッと軸足に荷重し、並進運動を開始する選手が大半です。

つまり、パターン①のA:「投手側→捕手側→投手側へと重心が激しく移動する」という方法のメリットは特になく、デメリットが大きいのでは? と思われるのです。

 

「B.重心が始終前にある状態でスイングすることになる」例:中島選手

→軸足荷重をする意味は「並進運動のためのエネルギーを軸足からもらうこと」だと私は考えています。

中島選手の場合、見た感じ重心の動きはかなり投手寄りで

「投手側→やや投手側→投手側」

というくらいですから、一般的な「体の中心orやや捕手寄り→軸足荷重→投手側へ」に比べると軸足には十分荷重されておらず、

したがって並進運動のエネルギーは未採掘だと思われます。

日本人打者の生命線ともいえる「並進運動(体重移動)のエネルギーが不足している」というのは、長打力にかなり影響しているはずです。

 

ただ、もしも自分がプロ野球のコーチだったとしても、たとえば西川選手に「重心を最初から捕手よりにしておけ!」と強制したり、中島選手に「しっかり軸足に荷重しろ!左足に外旋の力をかけろ!」と指導すればいいかというと、そう簡単な話ではありません。

西川選手はかなり高い成績を現時点でも残されていますし、中島選手も「カット打法」を武器にして活躍されています(重心の移動距離が少ないということは目線のブレが少ないということでもあります)。野球選手の感覚というのはかなり繊細なものなので、他人があれこれ言うとかえって調子を崩す可能性のほうが高いのです。

 

せいぜいコーチがすべきなのは、「本人が困っている場合のみ『こういうやり方もあるよ』というのを根拠とともに提示する」くらいが限度だと私は考えています。

 


かなり込み入った話になってしまって申し訳ないのですが、「1.構え」では結局何を言いたいのかというと、

1.形の上での話をすると、「日本人の場合、左打者は構えの時点では軸足膝がストレート~やや内折れ していることが多い」(右打者は逆に軸足膝がストレート~やや外割れしていることが多い)。

2.「1.軸足膝がストレートからやや内折れしている」の内訳を見てみると、「パターン①:軸足にやや内旋の力をかけている(中島選手)」「パターン②:軸足にやや外旋の力をかけている(イチロー選手)」「パターン③:軸足に特に力をかけず、ニュートラルにしている」の3パターンがある。

3.人間の体の重心は、「外旋の力がかかっているほうに寄る」&「内旋の力がかかっているほうには寄らない」という性質がある。したがって、「パターン①:軸足に内旋の力がかかっているので、重心は投手寄りになる」「パターン②:軸足に外旋の力がかかっているので、重心は捕手寄りになる」「パターン③:軸足には特に力をかけていないので、重心は体の中心部にある」となる。

4.理屈上望ましいのは「パターン②と③」で、「パターン①」はあまりメリットがあるとは思えない。強いて言うなら重心の移動距離が少なくなることで目線のブレが少なくなるくらい? 現時点できわめて非力な打者には有効かもしれない。

5.なぜパターン①が望ましくないのかというと、「構えの時点で重心が投手寄りにある」ので、「A.わざわざ『投手側→捕手側→投手側』へと大きく重心を移動させる必要があり、必要以上に目線がブレたり軸足が力んだりする可能性が高い」または「B.重心が『投手側→やや投手側→投手側』となるため、軸足荷重による並進運動のエネルギー獲得度合いが甘くなって長打力が落ちる」のどちらかになるため。ただし、かならず矯正すべきものなのか?と言われると怪しい

6.パターン②と③は、NPBの一流打者の多くが採用している形。つまり「構えの時点では重心がやや捕手寄り(パターン②)or体の中心(パターン③)にある→軸足に荷重する→投手側へと並進運動していく」なので、5.のA.のようなブレも少ないし、5.のBのようなエネルギー不足も起こしにくい。打撃動作のときに地面からもらう反力の30%が軸足、70%が前足だということを考えると、「軸足荷重期にきっちりと30%をもらえるような構え」にしておくのが良いはず

 

この他にも「バットの握り方」とか「両腕は内旋させるのか?」とか「地面からの反力をもらいやすい足の形は何なのか?」とか細かいテーマはあるのですが、とりあえず今回の記事では

「自分にとってしっくり来る下半身の形は何なのか?」「重心はどのあたりだとしっくりくるか?」

あたりをまずは考えてもらえればと思います。

 

2.軸足荷重期

・「1.構え」の次には、「2.軸足荷重期」が来ます。ちなみにノーステップでも軸足には荷重します。

 

・「軸足荷重」とは、字の通り「軸足=捕手側の足に、重さを荷わせること」です。

・難しく考えたくない人のために簡単に書くと、「前足を普通に上げれば、勝手に軸足に荷重されます」

 

そもそも、なぜ「軸足に荷重する必要がある」のか?

★軸足に荷重する意味:「並進運動のためのエネルギー確保」が一番大きい★

なぜ軸足に荷重するのか?

それは、

1.位置エネルギーの確保

2.地面からの反力を確保

3.軸足の筋肉に出力させて(股関節伸展+外転)、さらにエネルギーを確保

することによって打撃動作のために必要なエネルギーを蓄えるため。

つまり、

「軸足荷重によって、『軸足荷重の次に起こる<並進運動>のためのエネルギー確保』を行う」

ためだと私は考えています。

 

簡単に説明すると・・・

1.足を上げることによって重心位置が高くなるので、位置エネルギーを確保できる。

バッティングでは、この位置エネルギーは運動エネルギーに転化されることになる(↓参考画像)。

ノーステップよりも一本足打法のほうが飛距離が出る理由は、この「位置エネルギーが確保できるかどうか」にある。

ノーステップは重心の上下変位が少ないので位置エネルギーは少なく、一本足は上下変位が大きいので位置エネルギーも大きくなる。

2.作用反作用の法則からすると、「軸足から地面に100の力を加える」と、同時に「軸足は地面から100の力を加え返される」ことになる。

軸足に荷重することによって、地面から荷重に対する反力がもらえる(もしもこの地面反力がなければ、人間は立っていることができない)。

この地面反力を、軸足荷重期の次にある「並進運動開始」のためのエネルギー源のひとつとする。

 

3.軸足荷重のときに「軸足の筋肉に出力させて」(主に股関節伸展と外転)、さらにエネルギーを確保する

→軸足荷重のとき、軸足には相当な力がかかります。

軸足は「捕手側に向かって少し加速度の付いた、自分のほぼ全体重」を支えなければならないのです。

 

この「軸足にかかる力」に対して、軸足が「踏みこたえて、押し返す」ことができれば、並進運動を開始することができます。

 

「踏みこたえて、押し返す」というのは「股関節を伸展させる力を発揮する」「股関節を外転する力を発揮する」ということになります。

詳しく説明すると、

垂直方向の話・・・軸足に荷重すれば、軸足にかなりの力がかかることになる。それに対して股関節を伸展させる力(トルク)を発揮する必要がある。さもないとその場に崩れ落ちる

水平方向の話・・・軸足に荷重しようとすれば、体の重心は「捕手側に向かって移動する」ことになる。それに対して股関節を外転させる力(トルク)を発揮する必要がある。さもないと捕手側にぶっ倒れることになる

「軸足荷重期に軸足の伸展力と外転力を発揮することで、並進運動が開始される」というのは、

「スクワットやデッドリフトが飛距離アップ・パワーアップにつながる」と言われるゆえんでもあります。

スクワットもデッドリフトも、基本的には両方とも「股関節伸展+股関節外転」のために必要な筋肉を稼働させるからです(特にフルスクワットが有効)。

なお、股関節を伸展+外転させる際に稼働する主な筋肉としては、大腿二頭筋・大臀筋が上げられます。

 

・・・以上の説明をふまえて、もう一度まとめてみます。


★軸足に荷重する意味:「並進運動のためのエネルギー確保」が一番大きい★

なぜ軸足に荷重するのか?

それは、

1.位置エネルギーの確保

2.地面からの反力を確保

3.軸足の筋肉に出力させて(股関節伸展+外転)、さらにエネルギーを確保

することによって打撃動作のために必要なエネルギーを蓄えるため。

つまり、

「軸足荷重によって、『軸足荷重の次に起こる<並進運動>のためのエネルギー確保』を行う」

ためだと私は考えています。

 

一言でまとめると、

「並進運動のためのエネルギー」=「位置エネルギー+地面反力+軸足の伸展力・外転力 という3つのエネルギーの合計」を確保するために、軸足に荷重する必要がある

ということになります。

 

ということは、実際にバッティングを改善しようとするのであれば、

「この3つのエネルギーをうまく確保するような動作を習得すれば良いのではないか?」

というアプローチが考えられますね。少なくとも、軸足をどう使えば良いかを考える指針にはなるはずです。

 

たとえば、王貞治さんのように完全に軸足一本だけで立つような場合は「位置エネルギー」がかなり多く確保できますが、そのぶん軸足の伸展力は弱くなると思われます。

逆に、松井秀喜選手のように足を上げる動作が比較的短時間で済む場合は、軸足の伸展力・外転力をうまく使える反面、位置エネルギーの利用は少量になるでしょう。

自分のタイミングのとりやすさや投手のタイプなどによっていろいろ試してみるのがいいでしょう。

 

 

(追記・・・バッティングのために必要な力のなかで「A.体重移動の力が占める割合」と「B.股関節伸展の力が占める割合」はトレードオフの関係にあると考えられます。一般的にはA.が強くなればB.が弱くなり、逆にA.が弱くなればB.でカバーする必要があります。

日本人とメジャーリーガーとで比較すれば、一般的に、

日本人:Aが大きくてBが小さい

メジャーリーガー:Aが小さくてBが大きい

という傾向があります。

一般的に「日本人打者は動きすぎだ」とか「メジャーリーガーはその場で回転して打つ」と言われますが、それはこのAとBのトレードオフ関係のためだと思われます。

このAとBの割合の違いがどこから生じるのかというと、欧米人が「骨盤前傾→股関節伸展の力が使いやすい」のに対して、東洋人は「骨盤後傾→股関節伸展の力が使いにくい」ためです。(画像は「★必見 ◎欧米人とアジア人の骨格の違いについて (それは骨盤の位置と筋肉の発達の違いにあった!)」より引用させていただきました)

 

なお、AとBがなぜトレードオフになるのかというと、骨盤前傾傾向が強ければ強いほど骨盤の回転面は「斜め」(ホームベース側に傾く)に近くなり、

逆に骨盤後傾傾向が強ければ強いほど骨盤の回転面は「水平」に近くなるからです。

実際に比べてみるとわかりますが、骨盤を前傾させてみると体重移動の距離をとりづらく、逆に後傾させてみると体重移動の距離をとりやすいはず)

 

3.並進運動

「並進運動」とは「投手方向に向かって、下半身が先行しながら、横向きを保ったまま身体が移動していく」ということです。

 

2.軸足荷重期のうちに「並進運動のためのエネルギー」を確保できれば、身体は投手方向へと加速度を増しながら移動しはじめます。

つまり、「2.軸足荷重」をすることによってスムーズな並進運動が開始されるわけです。


さて、バッティングを大きな枠で考えてみると、

「構え → 軸足荷重でエネルギー確保して並進運動開始 → 並進運動を回転運動へと転換する」

「位置エネルギーや筋出力によるエネルギーを、運動エネルギーに変換して上半身・バットへと伝えていく」

「<下肢の出力+大きな質量を持った物体が加速度付きで移動する際に生まれるエネルギー>を、バットの最大加速という形で結実させる」

といったとらえ方ができます(一面的ではありますが・・・)。

 

この「エネルギー伝達」という面からバッティングを考えてみると、並進運動をする際に大切なのは、

1.「並進運動の次に起こる回転運動のための運動エネルギーを確保しておく」

2.「反射的にスイングを起こしやすいポジション(=バランスのとれたトップ)を出現させるように動作する」

ことだと私は思っています。

 

並進運動の条件その1:運動エネルギーをうまく回転運動へと転換できること

1.「並進運動の次に起こる回転運動のための運動エネルギーを確保しておく」とは、文字の通りです。

数十キロの質量を持った物体が、投手方向へと加速度(=速度が増していくこと)を持ちながら移動していく。

「数十キロの質量を持った物体が加速度を持つ」わけですから、並進運動の際に保存されているエネルギーは相当なものだと想像が付きます。

ウェイトトレーニングをやったことのある方であれば、「秒速1メートルくらいの速さで移動している、70-80kg程度のバーベル」がいかに大きなエネルギーを持つことかわかると思います。

 

この並進運動によって運動エネルギーを保存しておけば、並進運動の次に起こる「回転運動」をうまく遂行するための条件が揃います。

逆に並進運動がうまく行われない場合、あるいはそもそも並進運動をうまくスタートさせることができなかった場合、

または並進運動から回転運動への切り替えがうまく行われない場合、スムーズな回転運動は望めません。

 

並進運動の条件その2:「反射的にスイングを起こしやすいポジション(=バランスのとれたトップ)を出現させる」

並進運動をうまく行うことができれば、いわゆる「トップ」が形成されます。

「トップをしっかり作れ」とか「トップの深い良いフォーム」などとよく表現されますが、

実際、トップとは何か? と明確に定義している人は少ないのが現状です。

一般的にはトップとは「バットが最大限に捕手側に引かれた状態」とか「振り出そうとする瞬間の形」などと言われます。

 

しかし、私はトップを自分なりに定義しているので、今回の記事では私独自の定義を使わせてください。

トップとは「一瞬で反射的にスイングを開始させることができる身体の状態・バランスそのもの」を指す、とします。

反射的に一瞬でバットが出てこないのならトップができているとは言いませんし、

バットを捕手方向にあまり引いていなかったとしても↑の条件さえ満たせばトップができているとみなします。

また、トップが出現するタイミングというのは、連続写真やスロー動画で見るとほぼ間違いなく「前足が接地する直前」です。

 

トップをこのように定義すると、「並進運動とトップとの関係性」が見えてきます。

 


 

並進運動の際、「下半身」と「体幹・上半身」には「作用・反作用の法則」がはたらきます。

 

作用:「下半身を中心に投手方向に体重移動していく」(=右打者なら、下半身に左回りの角運動量が生じる)

反作用:「体幹や上半身に、体重移動の反作用の力が生じる」(=右打者なら、下半身の左回りの角運動量の反作用で、体幹と上半身には右回りの角運動量が生じる

簡単に言うと、↓の画像のような感じです。

つまり、「下半身が投手方向へと移動しようとする」せいで、「体幹・上半身は捕手方向へと引かれる・捻られる」わけです。

 

これは意識的にそうしなくても、物理法則にしたがって、勝手にそういう動きになります。

つまり、「体幹や上半身というのは、意識的に引いたり捻ったりしなくても、勝手にひねる力が働く」ということです。

 

・・・となると、野球の指導ではよく「体をひねってタメを作る」とか「捻りを戻すエネルギーを使うために、体幹・上半身をひねっておくべきだ」という表現が使われますが、

・体幹や上半身は意識的にひねっていいものなのかどうか?

・体幹や上半身は下半身の体重移動の反作用で勝手に捕手側に引かれる・捻られるものなのに、わざわざ意識的にひねる必要はあるのか?

・そもそも、練習でがんばって「体幹や上半身をひねる意識」を習得したところで、試合でそれが出せるのか?

というあたりを考えてみると、この体幹のひねりという動作が、簡単に「ひねってタメる」という意識で済ませられるものなのかどうかは怪しくなってきます。

 

つまり、

「体幹や上半身が引かれたり捻られたりする感覚が結果的に残る」のは良いとしても、

だからといって「意識的に捻りを強調しよう!」と試みるのはどうなのか? という自然な疑問が出てきます。

また、並進運動について語るときに見逃せないのが

「並進運動の反作用は、体幹の筋肉を受動的に伸張させ、伸長反射を起こさせる」

ということです。

 

★「伸張反射」って?★

伸張反射とは、

「骨格筋が受動的に引き伸ばされると、その筋が収縮する現象。 この収縮は、筋肉の伸展によって生ずる張力を、その筋肉の中にある筋紡錘が感受しておこるものである。」

伸張反射 ≫ 特定非営利活動法人 日本ストレッチング協会より)

 

さらに、「短縮性筋活動だけによる発揮筋力 < 先行的に伸張性筋活動を伴う短縮性筋活動による発揮筋力ということがわかっています。

小難しいように見えますが、要は「筋肉は、いったん伸ばされてから縮むとき、一番大きな力を出せる」ということです。

 

これら二つの事実を組み合わせると、体幹の筋肉にうまく出力させ、エネルギー伝達を行わせるためには

1.「体幹の筋肉が受動的に引き伸ばされること」(=反作用の力で。体幹の筋肉に弛緩→伸張→短縮という反応をさせる)

2.「体幹の筋肉に意識的な介入を行わないこと」

が必要なのではないか、という推論が成り立ちます。

つまり、体重移動の反作用で体幹の筋肉(外腹斜筋・腰方形筋・腹直筋といった体幹回旋筋群)が良い具合に伸ばされるわけです。

いわゆる「体幹が割れている感覚」はこれを指すと思われます。

 

この「体幹の筋肉が、張り詰めた弓・引き伸ばされたバネのような状態になっている」というのが、良いトップの条件だと私は考えています。

弓を引いたら、あるいはバネを引いたら、あとは力の方向性を見定めるだけ。

 

 

また、「伸張反射は、筋肉が外部からの力によって受動的に引き延ばされるときに起こる」ということを考えると、

「意識的に体幹をひねってタメを作る」「構えの時点から体幹をひねる」といった意識を持つことの危険性もわかります。

 

なお体幹よりも上の筋肉=肩甲骨周辺の筋肉についてですが、こちらは「体幹の筋肉が短縮するときに一瞬取り残される」ことによって伸張反射を起こします。

 

「トップ」については次の項でも詳しく触れますが、ひとまずは以下のようにまとめることができます。

★並進運動とトップとの関係★

・並進運動は、体幹と上半身に反作用の力をはたらかせることによって、トップを作り出すための手助けをする

・体幹が反作用の力で捻られることによって、体幹の筋肉(外腹斜筋・腹直筋・腰方形筋)が伸長され、伸張反射が準備される

という形で、下半身から上半身へのエネルギー伝達を行うための用意が整う。

(<質量が高い&低速度で動く下半身>から、<質量が低い&高速度で動く>上半身へと運動エネルギーが伝達されていく)

 

 

また、この「3.並進運動」の内容をざっくりまとめるとこうなります。

★並進運動について★

1.「並進運動の次に起こる回転運動のための運動エネルギーを確保しておく」という意味がある

2.「反射的にスイングを起こしやすいポジション(=バランスのとれたトップ)を出現させるように動作する」ことができれば最高である

 

4.トップ形成

トップができるメカニズムについては「3.並進運動」で解説しました。

・下半身が投手方向へと移動する反作用で体幹と上半身が捕手方向に自然と捻られる

・その反作用の力によって捻られた体幹の筋肉が、ストライクゾーンの方向へとバットが出るように「伸張反射を起こす」用意を整える

(→肩・腕のパーツは、前足の接地・着地にともなう骨盤の回転運動と体幹の筋肉の短縮が起きてから、『一瞬遅れて取り残されるような形(捻転差)で』伸張反射を起こします)

結果、いわゆるトップが形成されるわけです。

 

このような動作が実現できれば(どういう意識や感覚でこれを実現するかは別の問題です)、

下半身によって生み出されたエネルギーが少ないロスで体幹・上半身を経由して腕・バットに伝えられていきます。

結果的には、「質量があって、比較的遅く動いて、大きく筋出力する下半身」から「質量が少なく、比較的高速で動いて、筋出力の度合いの低い上半身」へと順々に速度を増しながら動作が連鎖していきます(いわゆる運動連鎖:キネティックチェーンが発現します)。しなやかで力感が少なく、無駄な力みもない、合理的な打撃動作が実現されます。もちろんスイングスピード・飛距離ともにその人にとってのベストが出るような形です。

 

では、先ほど「一瞬で反射的にスイングを開始させることができる身体の状態・バランスそのもの」を指す、と定義した

「トップ」

についてもう少し詳しく見ていきましょう。

 

「理想的なトップの位置」は存在するのか?

よく「理想的なトップが作れている」「トップの形が悪い」という表現が使われますが、では

「理想的なトップの条件とは何だろう」

と考えられた方は案外少ないのではないかと思います。

 

私なりの考えですが、

1.バットが最短時間で振り出せること

2.下半身から伝わってきたエネルギーがロスなく伝えられること

が、理想的なトップの条件だと考えています。

 

1.がなければ差し込まれてミスショットが増えますし、高いレベルの投手になれば対応できなくなります。

時間のロスによって選球眼も悪くなりますので、チームの勝利のために必要な「得点」とかなり緊密な相関関係を持つ「出塁率」が下がります。

・・・かといって最短時間で振り出せれば万事OKなわけでもなく、ボールに加える力があまりにも少ないと今度は打球が飛ばなくなります。

現代野球で重要視されている「長打率」がチーム得点と高い相関を示していることからすると、1.に加えて「強い打球を打てること」「打球が速いこと」も必要でしょう。

強い打球を打つためにはボールになるたけ高いエネルギーを伝える必要がある(作用反作用の法則)ので、「2.下半身から伝わってきたエネルギーがロスなく伝えられること」が求められます。さらに、ロスのない振り出しは打撃の誤差を少なくする方向にはたらきます。これまた打撃の確実性を上げるので、出塁率の向上につながります。出塁率が高く、打球も飛ぶようになるという好循環が生まれます。

 

(余談ですが、1.と2.を両方とも満たすような動作が満足にできる打者は、現代野球で最重要視されていると言っていい「OPS=長打率+出塁率」が高くなります。

OPSが高いということは効率良く塁を奪えるということで、効率良く塁を奪えば得点が増加します。攻撃の最優先目的は『できるだけ多くの点を奪取すること』なので、

打撃動作の改善 → チームの勝率アップ、という因果関係が成立します)

では、私が理想的なトップの条件として挙げた

1.バットが最短時間で振り出せること

2.下半身から伝わってきたエネルギーがロスなく伝えられること

を実現するためには、具体的に何がどうなればいいのでしょうか?

 

理想的なトップの条件その1.バットの重心位置が回転軸と一致すること

バットが最短時間で振り出せるための条件の一つとして、私は

「バットの重心が、回転軸とほぼ一致すること」

を挙げます。

 

回転軸とはその名の通り、「その軸を中心にして回転運動が起こる一定直線のこと」です。

ここでいう回転軸とは「前足側の股関節周辺から、首の付け根(C7の脊柱)あたりまで」を指します。

 

 

 

(なお、なぜ「脊柱=回転軸」にならないのかというと、「打撃時の体幹・上半身の回転運動は前足側の骨盤・股関節を軸にして行われる」のに加えて、「回転運動の際、脊柱はややうねるように曲がる=直線的な軸とはなっていない」からです。

また、股関節よりも下のことは考えません。これは、下半身の回転軸と上半身の回転軸は一直線にはならないためです。下の画像参照)


 

また、「バットの重心」というのはだいたいマークあたりにあります。

(重心位置は、バットの長さや、トップバランスかカウンターバランスかによって多少前後します。

ちなみに、バットの重心のところで真っ二つにバットを切った場合、グリップ側とヘッド側とではヘッド側のほうが重くなります。

テコの原理によって、ヘッド側は「近くて重い」、グリップ側は「遠くて軽い」となることによってつり合いが取れています

重心とは「物体の各部に働いている重力の作用と等価な合力が作用するはずの点」で、

空気抵抗を考えなければ、バットが自由落下するときの回転中心となるのも重心です(バット投げでバットがクルクル回るのをイメージすればわかりやすい)。

 

・・・ということは、打撃動作のなかでバットをうまく「落下」させて重力加速度(9.8m/s^2)を活かしつつスイングするためには、バットの重心位置をうまいこと設定すればよいのではないか? その場所とはどこになるのか?

という発想が出てきます。


 

そこでひとつの目安として考えられるのが、

「バットの重心が、回転軸とほぼ一致すること」

という条件です。

 

さきほどの説明を踏まえて、「回転軸=赤線」「バットの重心=青丸」として作図してみました。

一流選手のほとんどが、「バットの重心が、回転軸とほぼ一致すること」という条件を満たしているのがわかります。

なお、一般的には

・ロングヒッターほどスイング時の回転軸の後傾が著しく

・ミドル・短距離ヒッターほどスイング時の回転軸は地面と垂直に近付く

という傾向があります。

長距離打者 短距離打者
バットの重心位置 先のほうにある 手元のほうにある
回転軸の傾き度合い 捕手側に大きく傾く ほぼ地面と垂直

 

では、なぜ「回転軸とバットの重心位置が一致していたほうが有利」なのでしょうか?

簡単に説明すると、以下の画像のようになります。
一番左端の物体は回転させづらく、逆に一番右端にある物体は簡単に回転させられるはずです。

バッティングに置き換えてみると、「赤い線=回転軸、青い丸=バットの重心」です。

一番左のように回転軸とバットの重心位置が一致していなければ、回転開始のために大きな力が必要となり、

逆に一番右のように回転軸とバットの重心位置が一致していれば、回転開始のために必要な力は少なくて済みます。

 

つまり、原則的には

・回転軸とバットの重心位置が一致している → 上半身が回転するとスムーズにバットが出る、よけいな力が要らない。時間的ロス・エネルギーロスが小さい

・回転軸とバットの重心位置が一致していない → ズレが大きければ大きいほど、振り出しの時の力が必要とされる。時間的ロス・エネルギーロスが大きい

という関係が成り立ちます。

投手の球速が増している現代野球では、前者の「回転軸とバットの重心位置が一致しているトップ」のほうが総合的にメリットが大きいと判断できます。

 

ただし、一概に「回転軸とバットの重心位置が一致していないフォーム=悪いフォーム」と決めつけることはできません。

なぜなら、

・「回転軸とバットの重心位置が一致していなくても打っている」人が少数ながらいる(もちろん、一致させればもっと良く打てる可能性もあります)

のに加えて、

1.バットの重心位置が回転軸よりも捕手側に寄っている場合、バットの軌道を投手のボールの軌道にうまく入れやすくなる。これは時間的ロス・エネルギーロスを補って余りあるメリットかもしれない

2.打者が体格的に優れている場合や、肩甲骨や胸郭周りの柔軟性にきわめて富んでいる場合は、回転軸とバットの重心位置が一致していなくても、比較的負担は軽くなる

3.単に投手の球速が比較的遅い場合、多少振り出しに時間がかかっても大丈夫

という事情があるからです。


 

イチロー選手のトップ:「バットの重心を回転軸と一致させずに振り出す」という高等技術

ここで、あえて「例外」であるイチロー選手の打撃動作に注目してみましょう。

ご覧のとおり、イチロー選手はトップの時点でかなりバットを捕手方向に寝かせています。

 

当然ながら、回転軸からバットの重心が離れているわけですので、振り出しに必要な力は大きくなるはずです。

理屈からいえば、わざわざこのように「よけいな力を必要とし」、「時間的ロスが生じやすい」打ち方をするメリットはないようにも思えます・・・が、実際はイチロー選手はMLBでも安打製造機として長期間にわたって安定した活躍を見せています。

ということは、何か「よけいな力を必要とする」「時間的ロスを生じやすい」というデメリットを減殺する要因があるはずです。

その要因とは何でしょうか?

 

私が思うに、それは

1.バットの重心位置が回転軸よりも捕手側に寄っているので、バットの軌道を投手のボールの軌道(10°前後)にうまく入れやすくなる。時間的ロスというデメリットを上回るメリットを得ている

2.肩甲骨や胸郭周りの柔軟性にきわめて富んでいるので、回転軸とバットの重心位置が一致していなくても、比較的負担が軽くなる。時間的ロスも少なくなる

という事情によるところが大きいと私は思います。

 

1.バットの重心位置が回転軸よりも捕手側に寄っているので、バットの軌道を投手のボールの軌道(10°前後)にうまく入れやすくなる

バットの重心位置が回転軸よりも捕手側に寄っている・・・ということは、上手にバットを引き出すことができさえすれば、

「ボールの軌道とバットの軌道を長い間一致させやすい」と考えられます。

 

引き手側の強さor柔らかさが必要ですが、うまく引き出すことができればミートポイントの幅がかなり広がります。

「回転軸とバット重心が不一致しているために多少のタイムロスが生じる」が、「ミートポイントが前後に広くなる」とトレードオフとなります。

 

ピッチャーが投げるボールというのは打者の手元ではだいたい「10°」前後の角度を持っています。

↓の画像は「身長170cmほどのスリークォーター投手が、日本の低いマウンドから」投げた場合を表したものですが、

MLBの場合は「身長180-200cmクラスの投手が、MLB仕様の高いマウンドから」投げてくるわけですから、下の画像よりももっと投球に角度があります。

この投球軌道にバットをうまく滑り込ませることができれば、

つまりボールの軌道とバットの軌道を限りなく平行に近付けることができれば、

普通にスイングするよりもミートするチャンスは多くなるはずです。

この「ボールの軌道と平行にバットを入れる」を体現しているのが、昭和の大打者である張本勲選手。

その独特の打法で広角にヒットを打ち分け、「スプレー打法」とも称されました。

↑打撃フォームはご覧の通り、イチロー選手と同様に「回転軸よりもバットの重心が捕手側にある」スイングです。

 

幼少期の火傷で引き手(小指と薬指)が不自由となり、それを補うためにプロ入り後、松木謙治郎コーチのもとで引き手を徹底的に鍛えました。

 

・・・というわけで、一般的な「回転軸とバットの重心位置がほぼ一致する」というトップの作り方からすると、イチロー選手や張本選手のトップはやや異質だと考えています。

★イチロー選手の打撃フォームに関する自分なりの考え★

・あえて回転軸よりもバットの重心を捕手側に置くことで、ボールの軌道とバットの軌道をほぼ完全に一致させやすくしている

・柔軟な肩甲骨・胸郭を活かしてうまくバットを引き出す

(・接地してからの前足の伸展力をあえて弱めることでバットコントロールの精度を上げている)

 

ただし、イチロー選手も2016年シーズンからは打撃動作に変更を加えました。

「以前よりも手を早く出すようにした」とインタビューに答えていることからわかるように、

「回転軸とバット重心の位置をほぼ一致させることによって、これまで生じていたタイムロスをカットした」のではないかと思います。

実際、対ストレート打率が向上しています。

加齢による反応速度の衰え? によってこれまでのようなタイムロスを許容しきれなくなったのかもしれません。

 

だいぶ話が遠回りしましたが、私が言いたいのは結局これに付きます。

理想的なトップの条件その1:「回転軸=前足の股関節から首の付け根(C7)」の延長線上にバットの重心(一般的にはマーク付近)があること。

→回転半径が小さくなるので、振り出しの際のタイムロスとエネルギーロスが減る

 

これに加えてもう一つ条件がありますので、簡単に説明します。

 

理想的なトップの条件その2.「回転軸とバットのグリップまでの距離と形」が最適化されていること

理想的なトップの条件その2.下半身から伝わってきたエネルギーがロスなく伝えられること

=「回転軸とバットのグリップまでの距離」が最適化されていること

理想的な条件その1を満たせば、「慣性モーメント=回転しづらさが減って、バットの振り出しがスムーズになる」というメリットを享受できます。

ただし、いくらスムーズに振り出せるとはいっても、下半身から伝わってきたエネルギーをうまく活用できなければ力の抜けたスイングになります。

 

そして、私はその「エネルギーをうまく伝える」ための条件として、

「回転軸とバットのグリップまでの距離」が最適化されていること

を挙げます。

 

「回転軸とバットのグリップまでの距離について。

下の画像を右と左で見比べてみてください。

実際に試してみるとわかりますが、

左側のように「回転軸からバットのグリップまでの距離を詰める」と、バットを振り出すことは非常に難しくなります。

逆に、右側のように距離をとると、バットに力を加えることは容易になるはずです。

 

この違いがなぜ生じるかというと、左側では「回転軸とバットのグリップまでの距離が近すぎる=モーメントアームが短すぎる」からです。

「モーメントアーム=回転軸と力の作用線の(垂直)距離」です。

具体的に言うと・・・

 

モーメントアームが短い=力の必要量は大きくなるが、回転速度は上がる(下の画像の左側)

モーメントアームが長い=力の必要量は小さくなるが、回転速度は落ちる(下の画像の右側)

というトレードオフ(あちらを立てればこちらが立たぬ)関係が成り立ちます。

 

要は、

・「回転軸からバットのグリップまでの距離が長い」=振り出すのは楽ちん(小さなトルクで済む)だが、回転速度は落ちやすい

・「回転軸からバットのグリップまでの距離が短い」=振り出すのに力が要る(大きなトルクが必要)だが、回転速度は上がりやすい

というわけです。

 

こういう事情があるからこそ、

日本人打者:一般的に引き手を目いっぱい伸ばしていることが多い。体格と筋力に優れていないため、生じるトルク(回転力)は小さい

→振り出しが楽なほうを選ぶ

外国人打者:一般的に引き手をそれほど伸ばしていないことが多い。体格と筋力に優れているため、生じるトルク(回転力)は大きい

→余力があるので、多少振り出しにくくなってもスイングスピードを上げるほうを選ぶ

という傾向の違いが生じているのだと思います。もちろん、速球に対応しやすいのは後者です。日本式はコンパクトに思えますが、実際はかなりオーバースイングになりやすいといえます。

 

個々人で筋力やバットの重さ長さなども異なって当然なので、

結局は「その人の体格や筋力・打撃スタイル・打撃の目的に合致した『モーメントアームの長さ=回転軸からバットのグリップまでの距離』を見つけ出すことが求められる」という結論になります。

 


 

トップについて長々と書いてきましたが、総括するとこのようになります。

★私が考える理想的なトップの条件総まとめ★

トップとは「一瞬で反射的にスイングを開始させることができる身体の状態・バランスそのもの」を指す(栗山が勝手に定義)

 

1.並進運動の反作用によって、体幹の筋肉(外腹斜筋・腹直筋・腰方形筋など)が引き伸ばされる=伸張反射を起こす用意ができていること

2.回転軸(前足股関節~首の付け根:C7まで)の延長線付近にバットの重心(ほぼマークの位置)が位置すること

3.回転軸からバットのグリップまでの距離=モーメントアームがその人にとって最適な長さであること(振り出しやすさと回転速度はトレードオフ関係)

 

※肩・腕のパーツは、「前足の接地・着地にともなう骨盤の回転運動と体幹の筋肉の短縮」が起きてから、『一瞬遅れて取り残されるような形(いわゆる捻転差)』で伸張反射を起こします

※トップが出現するのは一般的に「前足が接地する直前」だと考えられます

 

具体的にはどうすればよいのか

以上書いてきた通り、あくまでも「トップは結果的に作られるもの」なので、

トップの形を直接的にどうこうしようとするよりは、体重移動がうまくできているかどうか、身体のどこかが硬かったり弱かったりするせいでロスが生じていないか、などをチェックするほうが良いと思います。

 

ただし、技術的な話をあえてすると、トップの時点では

「引き手の手首を、親指側・手の甲側にややコックさせる」

「引き手側の腕が内旋&回内する=ひねって跳ね上がるように動作する」と、

比較的うまくいきやすいかもしれません。

 

コックさせるのは引き手の手首を安定させてタイムロス&エネルギーロスをなくすためで、

引き手側の腕を内旋&回内させるのは、

①回転運動が上半身に伝わる瞬間に、強大な筋肉である広背筋を効率良くストレッチ(内転方向)する。その返す刀で「広背筋による水平外転方向への力発揮=バットの引き出し」を促させる。引き手の上腕を内旋させることによって広背筋の筋長が増し、伸張させやすくなる。

②上腕二頭筋の緊張を緩める(→上腕二頭筋は橈骨に停止するので、上腕を内旋させると筋長が短くなって緩む)

③上腕筋を活動させて肘関節の安定度を増し、エネルギー伝達をスムーズにする

④引き手をややコックさせることによって、バットの重心位置が回転軸と一致しやすくなる(もちろん倒れすぎには注意)

という目的があります。

 

一つの形として参考にしてみてください。

 

5.前脚接地・前脚荷重・軸脚抜重&スイング開始期

1.~4.までがスイングの「準備段階」です。

この「5.前脚接地・前脚荷重・軸脚抜重&スイング開始期」から、いよいよバットをスイングし始めます。

 

…意外と認知されていないことですが、トップが形成されてからスイングが開始される段階になると、もうすでに軸足からは体重が抜けています(抜重といいます)。

軸足から抜けた体重がどこに行くかというと、前足のほうにかかっています

つまり、軸足から前足に体重が移されているわけです。

 

連続写真で見ると確かに、「軸足に体重を残したまま軸足を強く使って回転させている」ように見えてしまうのですが、

実際のところ、回転運動を効率よく行うためには軸足からの抜重が不可欠です。

このあたりの事情については「軸足回転打法は存在しない?」という記事を書きましたので、そちらを参照してください。

 

なぜ「スイング」は開始されるのか?

そもそも、

「なぜスイングというものは開始されるのか」

を考えてみたことはありますか?

 

私がこれまで調べた限りでは、スイングが開始される要因は以下のようになっています(ほかにもあると思いますが…)。

★スイングが開始される物理的・身体的要因(右打者ver)★

1.下半身の移動速度(角運動量)が0になるので、下半身の移動によって生じていた反作用の力(体幹と上半身を右回りに回転させようとする)が消える。このため、左方向への回転運動が開始されやすい状態になる

2.加速度のついた並進運動がストップすることによって、慣性の法則にしたがって右半身が回転を起こしながら放り出される → 左半身は地面反力などによって「ほぼ固定されている」といえる。固定されている左半身は動かせないので、そこを支点にして右半身が回転するイメージ

3.体重の乗った前足が着地することにより前足が伸展の力(伸展トルク)を発揮し、地面反力が骨盤に伝達される。これによって骨盤が回転運動を始める。前足の臀筋やハムストリングスといった股関節伸展筋が強力に作動する。

4.並進運動によって引き伸ばされていた体幹の筋肉が伸張反射を起こすタイミングを得て、短縮し始める。それまでは右回りの反作用の力によって抑えられていたが、反作用の力が消えるので短縮を抑えるものがなくなる

5.「軸足荷重期から前足接地にかけて重心位置が下がっていく」ことによって生じていた「垂直方向の反作用の力(上向き)」が前足着地と同時に消えるので、バットを上向きに持ち上げる力がなくなり、バットが重力にしたがって落下運動を始めやすくなる

主な要因はこの5つだと思います。

 

この5つの要因が(もしかすると数え漏れがあるかもしれないですが、とりあえず5つとします)ほぼ同時に作用することによって、

たかだか秒速1メートルほどにすぎなかった並進運動から、時速150km/h近くの高速スイングが生み出されるわけです。

 

・・・では、具体的にこれをバッティングに生かす方法は? というのを考えなければならないのですが、

有効に思える対処策を簡単に並べておくと、

①前足の股関節伸展力+エキセントリックの筋力を強化する(フルスクワットや片足スクワットやデッドリフト等)

②打つときの力みをどうにかして取り除くこと(打撃というもののイメージを変えることも含まれる)

③体幹の筋肉の弾力性(柔らかさと筋力)の向上

④回転運動をスムーズに行うためのドリルを繰り返す(Twitterの野球クラスタを漁りましょう)

⑤1.~5.をまずは頭で理解して、スイングのイメージを作っていく

⑥前足がうまく地面反力をもらえるような着地の仕方を考える

 

・・・まだまだやりようはいくらでもあるはずですが、とりあえず今回の記事では「⑥」を考えてみます。

 

前足の接地・着地の仕方を考える

前足の接地・着地というのは「スイングのトリガー」としてかなり重要な役割を果たします。

実際にやってみるとわかりますが、前足を着地しないとスイングは開始できません。

 

前足が着地して、前足にかかっている体重と地面反力とのバランスをとるために前足が伸展の力を発揮する(伸展の力がなければそのまま倒れこんでしまうはずです)。

このとき、地面反力が骨盤に作用する形で「骨盤の回転運動」が開始されます。

また同時に、並進運動がストッピングされるため慣性の法則にしたがって右半身(右打者の場合)が打撃方向に向かって放り出されます。

 

こういうわけで、「前足の接地・着地」というのはスイングのなかで非常に重要な位置を占めています。

ということは、

「前足の接地・着地の仕方が悪いと、スイングが鈍くなったりスイングのタイミングが狂ったりする」

という可能性が考えられます。

 

あえて「不合理な前足の着き方」を考えてみる:2パターン

ここで、あえて「非合理的な前足の接地・着地の仕方」を考えてみましょう。

 

まず、着地の目的をざっくり言えば

A.「前足の着地のときにもらう地面反力が骨盤に作用することによって、骨盤が回転する」

B.「並進運動がいい具合にストップするからこそ回転運動へのチェンジが簡単になる」

のですから、これを妨害するような着地の方法を考えてみれば良いはずです。

 

というわけで、

A’.「地面反力が骨盤にダイレクトに伝わらない着地の仕方」

B’.「並進運動から回転運動への変換を邪魔するような着地の仕方」

このような前足の着地・接地の仕方を考えてみます。

 

まず、A’.を実現?するためには、「地面反力が骨盤にダイレクトに作用しないで、<骨盤以外の別の場所>で消費されるような着地の仕方」が必要です。

<骨盤以外の別の場所>として考えられるのは「足の裏の関節」「足首の関節」「膝関節」です。

この3つのうち「膝関節」については、理想的な着地をしようが不合理な着地をしようがどのみち曲がることになりますから、除外します。

なお「足の裏の関節」については以下のツイートを参照してみてください。

足の裏には案外多くの関節があることに驚かれると思います。

ということは、A’.のためには、「足の裏の関節」と「足首の関節」が思いっきりグニャリと曲がるような着地の仕方ができればいい(?)わけです。

グニャリと曲がるということはそこを真っすぐにするためにエネルギーが消費されるわけですから。

さて、そのためにはどういう着地が良いでしょうか?

 

・・・実は、A’.をやるためには「つま先で体重を受け止める=つま先で着地する(≠接地)するようにすればよい」のです。

こうすれば、足の裏の関節+足首の関節がきっちりと? 折れ曲がり、地面からの反力を吸収してくれます。

 

ということは、

「つま先でしっかりと(?)着地すれば、地面からの反力が足の裏の関節と足首の関節で浪費されるため、スイングが鈍くなり、スイング開始のタイミングが狂う」

のではないでしょうか。

(注意してもらいたいのは「接地と着地は違う」ということで、「接地=地面に触れること」「着地=地面に触れて、かつ体重が乗ること」を意味します)


 

また、B’.「並進運動から回転運動への変換を邪魔するような着地の仕方」をするにはどうすればよいでしょうか?

 

並進運動から回転運動へと切り替わる・・・ということはつまり、「運動の向き(ベクトル)が切り替わる」ということです。

並進運動(バッターボックスのラインに平行)から、回転運動(右打者の場合、三塁側ベンチに向かって回転)へと、ほぼ90°という角度の切り替えが生じるわけです。

 

ということは、「回転運動への転換をジャマする」には、運動力の向きとは逆方向に不必要な力を加えてやればよい」のではないでしょうか?

わかりにくいと思うので、画像で確認してみてください。

画像に書いていますが、回転運動への転換をジャマするような着地方法は主に2つあって、

1.着地の瞬間に足を捕手方向に一瞬だけ引き戻す

2.前足のカベを作ると称して、ステップ足のつま先を無理に閉じこむ

というのが考えられます。

 

1.については下の画像がわかりやすい例です。

こういう形になりやすいのは、「前足が接地しようとする瞬間に、まだ体重が後ろ脚のほうに残っている人」です。

体重が前足に移っていればスムーズに着地できるはずですが、体重が後ろ脚に残りすぎているため、バランスをとろうとして足を引き戻すわけです。

この動きが出るということは、捕手方向に向かって力が発揮されているということですから、並進運動の勢いが減殺されるはめになります。

 

2.の「つま先を無理に閉じこむ」というのは、日本の打撃指導で「前のカベを作りなさい」という指導が多いためによくみられる状態です。

↓のような写真を見て、「プロの打者は前足にしっかりとカベを作っているから、前足のつま先は閉じなさい」と指導される方が多いのだと思われます。

しかし実際は、

①前足のつま先がどの程度閉じるのかは、その選手の股関節クローズ動作の柔軟性・X脚O脚といった個体特性によってかなり変わる

②前足のカベというのはあくまでも結果的にできるもの(→回転運動のときに大腿筋膜張筋が伸張して腸脛靭帯が引かれることによって、前足の膝が緩やかに締まる)

という説が濃厚です。

 

わざわざ意識的に「前足のつま先を閉じこむ」ようにしてしまうと、せっかく三塁側(右打者の場合)へと回転運動が起きようとしているのに、

その逆方向へと力を逆流させるわけですから、三塁側への回転運動の勢いが相殺されることになります。

回転運動の勢いが衰えるので、これはそのままスイングスピードの低下に直結します。

 

・・・というわけで、この項についての簡単なまとめをしておきます。

★不合理と思われる着地の仕方★

A’.「地面反力が骨盤にダイレクトに伝わらない着地の仕方」

→つま先で着地する、つま先で体重を受け止める。足首の関節と足の裏の関節がグニャリと曲がる

…「つま先がついてからかかとが着地するまでの間によってストレートと変化球に対応する」という名目で正当化されることが多い

 

B’.「並進運動から回転運動への変換を邪魔するような着地の仕方」

→1.着地の瞬間に、足を捕手方向に一瞬だけ引き戻す。並進運動の勢いが減殺される

→2.前足のカベを作ると称して、つま先を無理に閉じ込む。力が逆流する

 

・・・というわけで、今まで日本球界の打撃指導でよく言われてきたことが(結果的には)否定されてしまいました。

物理的に&身体的にムリのある動作が「イメージ的に良さそうだから」「それっぽいから」というだけの理由で正当化されてきたわけです。

明らかに不合理な指導のせいで、これまで日本の野球選手たちがどれだけ多くの潜在的損失を被ってきたのでしょうか?

 

余談:「泳いでも長打になる」カラクリ

なお、よく「つま先がついてからかかとがつくまでの≪間≫があれば、変化球に対応できる」と表現しますが、以上の事情を考えてみると不合理に思えます。

 

正確には

「つま先で<着地>することによってスイングの開始タイミングが遅れる&ヘッドスピードが落ちるので、球速の遅いボールには比較的合わせやすくなる&ストレートを小手先でカットしやすくなる」

というのが真相ではないでしょうか?

「長打力を捨てて単打に徹したい」のなら、これも一つの手かもしれません。

 

しかし、多くの打者にとっての欲望としては「変化球だろうがストレートだろうが強い当たりをしたい、長打を打ちたい」でしょう。

 

では、どうすれば、長打力を犠牲にすることなしに、ストレートと変化球にうまく対応できるのか?(少し本筋からは話がそれますが・・・・)

 

「変化球に対応するための一瞬の間をどこで稼ぐのか」に対する私なりの答えは、

「捻転差を一瞬だけ引き伸ばせば、多少泳ぐけれども、うまく拾って長打にできる」

というものです。

 

「捻転差」については先ほども触れましたが、

肩・腕のパーツは、前足の接地・着地にともなう骨盤の回転運動と体幹の筋肉の短縮が起きてから、『一瞬遅れて取り残されるような形(捻転差)』で、伸張反射を起こします

というものです。

 

この「捻転差がストレートの場合よりも一瞬だけ長く起こる」という動作ができれば、

変化球によって多少泳がされても、長打を打つことは容易なはずです。

 

もちろん、「泳いでも長打になる」には、きちんとしたカラクリがあります。

★なぜ、捻転差を一瞬だけ引き伸ばせば「泳いでも長打になる」と考えられるのか?★

・変化球が来る

→捻転差が作られる時間が少しだけ長くなる

→バットがやや遅れつつ、少し下方向に潜ってから出てくる

→変化球はストレートよりも「上から下」に来る。

→変化球の「上から下に落ちてくる軌道」が、「捻転差が引き伸ばされた結果、少し下方向に潜ってから出てくるバットの軌道」と一致する

→ボールとバットの軌道が一致するので、「中心衝突」が起きる。

→効率よくボールに力(撃力)が加えられることになる。かなりミートポイントが前方になるので押し手の力はほとんど作用しない(場合によっては片手でインパクトするため、偶力はほぼ0)が、それでも飛ぶ。

 

・ボールが持っているエネルギーも少ないので、それを迎え撃つバットが持っているエネルギーも少なくて良い(→ストレートはエネルギーが大きいので、しっかり打ち返さないと押し負ける)

・中心衝突が起きると力積も大きくなる。力積=「力の大きさ」と「力が働く時間」を掛けあわせたもの。

 

高校野球でよく目にする「筋力も体格も優れているんだけど、変化球が来るとクルクルするバッター」をよく見てみると、

「捻転差のできかたが甘い」「バッチリつま先着地している」というケースが大半です。

 

「泳いでも長打になる打者」というのはバッテリーからすると相当やっかいなはずなので、

今回の記事で紹介する内容をもとにして「前足の着地の仕方」を考えてみてはどうでしょうか?

 

合理的な着地の仕方は主に2通りある

話がだいぶ脇道に逸れました。

では、前足はどうやって接地・着地するのが合理的なのでしょうか?

 

私は「2タイプあるんじゃないかな」と思っています。

★前足の合理的な着き方2タイプ★

タイプ1.つま先側で軽く接地→かかとで着地→かかとを支点にして回転運動を行う(厳密にはかかとのインエッジ→かかと中心部で着地、かも?)

タイプ2.ほぼフラットで着地し、かかとを支点にして回転運動を行う

 

まず、「回転運動はかかとを支点にして行う」というのはほぼ確定です。

これは2タイプとも共通。

足の構造上、つま先を支点にして回転運動を行うことは不可能でしょう。

つま先で回転しようとすると、たぶん足のどこかしらがちぎれると思います。

 

というわけで、「かかとを支点にして回転運動を行う」までをどうするか、という話になります。

タイプ1.つま先側で軽く接地→かかとで着地→かかとを支点にして回転運動を行う(厳密にはかかとのインエッジ→かかと中心部で着地、かも?)

タイプ2.ほぼフラットで着地し、かかとを支点にして回転運動を行う

という分類を頭に入れたうえで、下の画像を見てください。

一応分類しておくと、上から4つめの画像(バリー・ボンズ選手)以外は、全員タイプ1に分類されます。

なぜタイプ1が多くなるのかというと、単にタイプ2のほうが難しいからです。

 

タイプ2のようなフラット着地をするには、着地の直前に「股関節の内旋」をやや弱める必要があります。

一般的には、並進運動の勢いを受け止めるために、股関節は「着地の直前には内旋しておく→外旋→内旋」というステップで動きます。

この「着地直前の股関節内旋」を弱めて、その分だけ足をフラットに着地させるのがタイプ2です。

 

実際に試してみるとわかりますが、足をフラットに着くには股関節の内旋を緩めた状態のほうがやりやすいはずです。

逆に、股関節を内旋させた状態で着地に入ると自然とつま先が先に接地します。つまりタイプ1です。

つま先で接地→かかとで着地する、というプロセスを踏むタイプ1のほうが、着地してから回転運動が開始されるまでに一瞬「安心感」があるのではないでしょうか。

 

タイプ2だと、足が着いた瞬間に回転運動が開始されます。

そのため、いわゆる「足を着いてからの一瞬の間」がなく、かなり急発進する感じになります。

スイングそのものには支障ありませんが、慣れない人には「うおっ」となるのでしょう。

 

どちらを選ぶかは個人の自由です・・・が、私見を述べさせてもらうと、

骨盤の前傾が激しい人のほうがタイプ2に向いているような気がします。

逆に骨盤が後傾している人はタイプ1のほうが向いていると思います。

骨盤が後傾している状態の人がタイプ2のようにフラット着地をやろうとすると、やや伸び上がるような感じになります。実際に骨盤を前傾させたり後傾させたりしてみると違いがわかりやすいはずです。

 

要するに、タイプ1→骨盤後傾気味の人に向いている、タイプ2→骨盤前傾気味の人に向いている のではないか? ということです。

もちろん、これはあくまでも傾向の話ですから、個々人でしっくり来るほうを選んでいただきたいと思います。

 

ただ、一つだけ注意していただきたいのは、タイプ1では「つま先が先に<接地>する→かかとで<着地>する」という用語の使い方です。

「接地=地面に触れること」

「着地=体重を受け止めること」

ですから、つま先が地面に接地している≠つま先着地 ではありません。

連続写真ばかり見ているとこういうところを見過ごしてしまいがちになります。

 

さて、「接地・着地の仕方」を総まとめしてみましょう。


★接地・着地の仕方 総まとめ★

1.不合理と思われる着地の仕方

A’.「地面反力が骨盤にダイレクトに伝わらない着地の仕方」

→つま先で着地する、つま先で体重を受け止める。足首の関節と足の裏の関節がグニャリと曲がる

…「つま先がついてからかかとが着地するまでの間によってストレートと変化球に対応する」という名目で正当化されることが多い

B’.「並進運動から回転運動への変換を邪魔するような着地の仕方」

→1.着地の瞬間に、足を捕手方向に一瞬だけ引き戻す。並進運動の勢いが減殺される

→2.前足のカベを作ると称して、つま先を無理に閉じ込む。力が逆流する

 

2.★前足の合理的な着き方2タイプ

タイプ1.つま先側で軽く接地→かかとで着地→かかとを支点にして回転運動を行う(厳密にはかかとのインエッジ→かかと中心部で着地、かも?)

タイプ2.ほぼフラットで着地し、かかとを支点にして回転運動を行う

 

というわけで、着地の仕方には十分注意し、試行錯誤を重ねておきましょう。

 

軸足と前足の動き

今までは前足の話をしてきましたが、では「軸足」はスイング開始時にはどうなっているでしょうか。

一般的には「軸足が回転して、腰が回転する」という順序で考えられることが多いのですが、実は違います。

連続写真やスロー動画だと強調されているように見える「軸足の内旋・内転」というのは、

回転運動を開始させる要因というわけではなく、むしろ「回転運動を補助するための動作」です。

つまり、「軸足が内旋・内転することによって骨盤が回転する」のではなく、「骨盤の回転運動を補助・制御するために軸足の内旋・内転が起きる」ということです。

一応軸足の筋肉は作動します(軸足の抜重にともなって、ハムストリングの内側部:半腱様筋・半膜様筋や、内転筋群:薄筋・短内転筋・長内転筋・大内転筋・小内転筋・恥骨筋などが伸張反射を起こす)が、それはあくまでも結果的に起こる動作でしかありません。

 

日本の野球界では「軸足でしっかりと押し込むことによって飛距離を伸ばすのだ」的な指導が行われますが、

スイングを開始して以降も軸足に体重を残すというのは物理的にも身体的にも理に適っていない動作です。

「軸足で押し込む」という感覚が出ること自体は否定しませんが、実際に軸足で押し込もうという意識を持つとロスの多い動作を招きます。(→詳しい事情は「軸足回転打法は存在しない?」をご覧ください)

 

前述したとおり、体の回転運動というのは回転半径が小さければ小さいほど素早く行うことができます。

内転筋群やハムストリングの伸張反射が起きることによって軸足が前足に引き付けられ、

軸足はこの動きによって「回転半径が小さくなる+骨盤の動きをコントロールする」という二重の役割を果たすわけです。

 

しかも、スイング開始以降は軸足に体重は残っていないわけですから(「軸足回転打法は存在しない?」参照)、

わざわざ軸足を後ろに残すべき理由は特にないのです。回転半径を大きくしてしまう以外に特にメリットがあるとは思えません。


 

さて、以上で「前足接地・前足荷重・軸足抜重&スイング開始期」についてはだいたい解説しました。

 

最後に、総括として

「本当の意味でのコンパクトなスイング=長打も率も残せるスイング」

の条件を考えてみましょう。

 

日本ではなぜか「コンパクトなスイング=短く持って最短距離で逆方向」のような考えが根強いですが、実際は違うと思います。

「短く持って最短距離で逆方向・・・」というのは単に「縮こまっているだけのスイング」です。

 

本当の意味でのコンパクトなスイングとは、「率も残せて、長打も打てる」スイング、

つまり「あらゆる面において可能な限り最適化されたスイング」のことを指すのではないでしょうか?

 

その「本当の意味でコンパクトなスイング」を習得するためのひとつのヒントとして、

この記事の中で書いてきたことが役に立つのではないかと思います。

★本当の意味での「コンパクトなスイング」ができる条件★

4.トップ形成期
・理想的なトップの条件その1.バットの重心位置が回転軸と一致する
・理想的なトップの条件その2.「回転軸とバットのグリップまでの距離と形」が最適化されている

が満たされていること

 

5.前脚接地・前脚荷重・軸脚抜重&スイング開始期

・スイングを開始させる5つの要因がきちんと揃うこと(→1.反作用の力が消える、2.慣性の法則、3.地面反力の骨盤への作用、4.体幹の伸張反射、5.垂直方向の反作用が消えることによるバットの落下)

・合理的な接地・着地の方法を身に付けていること(タイプ1or2)

・軸足がうまく前足に引きつけられて、骨盤の回転がシャープに行われること

 

 

6.アクセラレーション~インパクト期

・アクセラレーション~インパクト期については、「意識すべきことはあまりないが、チェックしておくべきポイントはある」という感じです。

 

・まずは、「なぜスイングが起きるのか?」を復習してみましょう。

1.下半身の移動速度(角運動量)が0になるので、下半身の移動によって生じていた反作用の力(体幹と上半身を右回りに回転させようとする)が消える。このため、左方向への回転運動が開始されやすい状態になる

2.加速度のついた並進運動がストップすることによって、慣性の法則にしたがって右半身が放り出されやすくなる → 左半身は地面反力などによって「ほぼ固定されている」といえる。固定されている左半身は動かせないので、そこを支点にして右半身が回転するイメージ

3.体重の乗った前足が着地することにより前足が伸展の力(伸展トルク)を発揮し、地面反力が骨盤に伝達される。これによって骨盤が回転運動を始める。前足の臀筋やハムストリングスといった股関節伸展筋が強力に作動する。

4.並進運動によって引き伸ばされていた体幹の筋肉が伸張反射を起こすタイミングを得て、短縮し始める。それまでは右回りの反作用の力によって抑えられていたが、反作用の力が消えるので短縮を抑えるものがなくなる

5.「軸足荷重期から前足接地にかけて重心位置が下がっていく」ことによって生じていた「垂直方向の反作用の力(上向き)」が前足着地と同時に消えるので、バットを上向きに持ち上げる力がなくなり、バットが重力にしたがって落下運動を始めやすくなる

スイングの開始というのはこのような要因があって起こるわけです。

なお、これにプラスして「エルボーアップの勢いがスイングに加算される」場合もあります。

 

それでは、これにプラスして、スイング開始後、もう少し後のことまで見てみましょう。

★4.で体幹の筋肉が回転を始める

→肩・腕のパーツは、「前足の接地・着地にともなう骨盤の回転運動と体幹の筋肉の短縮」が起きてから、慣性の法則によって『一瞬遅れて取り残されるような形(いわゆる捻転差)』で強制伸張を起こす。

どこの筋肉が強制伸張するかというと、主に広背筋。広背筋が捻転差発生によって強制的に引き伸ばされ、伸張反射を起こして「引き手の腕を投手方向へと引き出す」動きをする。

つまり、捻転差(骨盤と肩ラインの角度差)ができる→広背筋が強制伸張→伸張反射で引き手が引き出される

というのが、バットを引く手の一つのはたらきです。

 

これで、「スイングに作用する力」は、「1~5と、広背筋の伸張反射と、エルボーアップによる運動量(勢い)」の加算で、計7つになりました。

 

この7つの要因が、互いに協力しあったり、交互に入れ替わるように役割交代しあったりすることによって、あの「スイング」が実現されているわけです。

これらの関わり合いを文章で記述するのはさすがに複雑すぎるので、ここではしません。

「頭の中でシミュレーションする」のが手っ取り早いはずです。

 


 

ちなみに、スイング軌道のひとつの理想としては

「ボールとバットの軌道が完全に一致すること」

があります。

ボールとバットの軌道が完全に一致すると、

・ミートポイントが格段に広くなる

・ボールとバットが中心衝突を起こすので、打球の速度と飛距離が格段に伸びる

というメリットを享受できます。参考までに、投手の手から放たれたストレートは打者の手元ではだいたい10°前後の角度を持っています。手元に分度器があればわかりますが、けっこうアッパー気味の軌道になります。

ボールとバットの軌道が完全に一致すると、こんな効果もあります。

・「打球速度が上がる&トップスピン」のゴロが行くので内野手がはじきやすい(ただし、そもそも「ゴロを転がせば何かが起こる」というのは完全なる迷信)

・打球の角度が上がるので、長打が増える → 長打は得点に直結する。チームとしての得点力もアップする

 

・・・というわけで、迷ったら

「ボールとバットの軌道を完全に一致させるようにスイングを作っていく」

という方向性で行けばいいでしょう。日本の古い伝統であるダウンスイングとは真逆のアプローチになります。

 


 

・・・また、もしも、自分でスイングの良し悪しを映像などでチェックするとき用に、チェックポイントを一つ挙げるとしたら、

「インパクトの瞬間の形」と「フォロースルー」

を確認することをおすすめします。フォロースルーは後ほど触れるので、まずはインパクトの話を。

 

★インパクトの瞬間を映像でチェックするときのポイント★

1.インパクトの瞬間、押し手側の手首が「手の甲側」に曲がっていないか?

→ロスのない形で振れていれば、押し手の手首はインパクトの瞬間に「ストレートorやや手の平側に曲がっている」はず

2.インパクトの瞬間、骨盤は投手方向にきちんと正対しているか(ヘソが投手の方を向いているか)?

→ヘソが一塁側を向いていたりセカンド方向を向いていたりするのは、下半身の回転が不十分だから

3.軸足はベタ足になっていないか?

→軸足にまだ体重が残っているとベタ足になる

このあたりをチェックしておけば、的外れなことをする心配は減るはず。

 

「アクセラレーション~インパクト期」については以上です。

 

7.フォロースルー

さて、いよいよフォロースルーです。

★フォロースルーについての自分の考え★

・フォロースルーはあくまでもスイングの結果である。それまでのプロセスが良ければフォロースルーもいい形になる

・ただし、「フォロースルーが良い形になるようにスイングを調整していく=逆算的なアプローチをする」という技もある

・フォロースルーの形としては「大きい・高い」ことが望ましい。基本的に、うまくパワーを解放できたときは片手になりやすい。

 

ひとつの理想形としては、

・バンザイフィニッシュ

・バットフリップ(打ち終わると同時にバットを置く)

・片手フォロー

の3点セットが揃うこと―ーが挙げられます。

必ずこの形でなければならない、というわけではないのですが、

とりあえず、迷ったらこの形を目指せばいいと思います。

 

「フォロースルーを大きくしたところで打球の飛び方は変わらない」と切り捨てるのではなく、

「良いフォロースルーがとれるようにスイングを作っていこう」というアプローチも考えてみましょう。

 

補足:回転面の一致

先ほども述べた「ボールとバットの軌道を一致させるようにスイング面を作る」にも通じることですが、

きちんと力の伝達がスムーズにできていれば、フォロースルーの初期段階においては

「肩の回転面とバットの向かう方向が一緒になる」

「両腕は伸びきる」

はずです。

↓投手方向から見ても、だいたい肩の回転面とバットのラインが一致する(このときは腰のラインもほぼ一致)。

自分のフォロースルーをチェックするのであれば、このあたりを見てみると判断しやすいはずです。

 

おわりに

結果として非常に長い記事になってしまいました。野球界に多いであろう活字嫌いの方には申し訳ないです。

 

ただ、

・「バッティングの動作に関することはこれを見ればすべて書いてある」というものを作りたい

・感覚的な表現・抽象的な表現をいったん排して、しっかりと言葉を定義したうえで厳密に論じたい

・体系的・網羅的にバッティング動作について論じたものが、いまの日本の野球界にはほとんどない

・バッティングに関する知見の軽さが、日本の野球レベル向上のためのあしかせになっている気がする

・野球は机上だけではできないけれど、たまには徹底的に頭でっかちになって考えてみるのも良いと思う

という事情と思いがあり、あえて長めに書きました。

 

また、普段からお世話になっているTwitter界隈の野球有識者の方々の有益なつぶやきがなければ、このような打撃論を組み立てることはできませんでした。個人的には、日本で今一番野球のメカニクスについて深い知見を持っているのはここの人々だと思います。本当にありがとうございました。

 

よく言われることですが、野球に「終着点」はありません。

この記事も同様で、永遠に未完成です。

未完成なので、鵜呑みにされても困ります。あくまでも考える材料として使ってくださればと思います。

 

今後の課題としては、理想のスイング軌道がどのようなものか解明する、フィジカルと打撃の関係を徹底的に洗い直す、マインドと打撃の関係など・・・やることはいくらでもあります。

 

今後、場合によって加筆・修正・アップデートを繰り返しながら「打撃動作のバイブル」のようなものを作り上げていくことができればいいな、と思っています。

 

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